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再現してみた 第1086話・1.22

「で次は、どの話かしら」木島優花の問いに「その前に、おいしいもの食べよう。近くに口コミの評判の良い店があるんだよ」と、返事をする太田健太。ふたりはデートの最中だ。
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「ここからなんだよな」男は筆をおき腕を組むと大きく深呼吸。男は締め切りに迫られていた。締め切りと言っても仕事ではなくある公募だ。「デート」をテーマとする公募がありそれに挑戦しようとしていた。
「デートならばおいしいものを食べるのは良い。だが何を食べるかが問題だ」男はデートと言えば食事と思って筆を執ったが、いったい何が良いのかわからない。いきなり壁にぶつかり悩みだす。

「食事ひとつとってもだ。双方の親密度によって変わるだろう」男は、いろいろ考えてみる。初デートの相手の時、付き合いだしてしばらくたった場合、いよいよ結婚が目前に迫りつつあり、どちらかがプロポーズを目指しているときもあだろう。そして夫婦になってからの場合だ。

 男はは遠くに視線を置く。視線の先には窓がありそこから人が歩いているのが見える。男は窓を見た。目の前は大通りに面していて歩道がある。歩道は駅から大きな公園に続ているため、通りを歩く人が多い。だから男はその通りで次に歩いていく男女の年齢層からあれこれ想像しようと考えた。

「なかなか歩いてこないな」いつも何気なく見ていたら、結構歩いている人を見ることが多い窓の外なのに、待つと不思議と歩く人がいない。別にワザとしている訳でもないのだろうけれど、1分経っても歩いてこないのだ。ようやく来たと思ったら前かごにスーパーの袋を乗せた自転車の婦人が通り過ぎて行った。
「あれは違う、次は」と思ってみる。次も人影が見えたがすぐに断念した。人の前には小さくて白いものが歩いている。その白いものは首からリールにつながれており、恐らく近所に住んでいるであろう、ゴマ塩頭の男性が後ろに続いた。いずれもデートとは無縁そう。

「うまくいかないな。でも必ず」次は男女が歩いている。だがデートなのかどうかわからない。スーツ姿の男性と女性だが、女性もスーツ姿である。もしかしたら仕事での移動かもしれない。「うーむ」男は時計を見た。時刻は午後12時10分「ランチタイムか、ま、社内恋愛ならランチデートありうるかな」男は想像した。としても何を食べに行くのだろう。近くの安いのが売りの定食屋か、それとも女性が好きそうなカフェかもしれない。「意外にも男の趣味でラーメン屋かもしれんぞ」などと考えていると、突然お腹のあたりからから何かがうごめくような音が数秒間聞こえる。「そっか、朝から何も食ってないんだ」

 男は自分も空腹だと気付き、立ち上がるとカップ麺を作った。「ま、カップ麺はあり得ないな」と思いつつ、カップ麺にお湯を入れる。やがてラーメンが出来上がると、男は聞き手に箸をもち、顔の方から近づけるようにしてラーメンをすすった。
「食後、そうだ、ケーキを買ってきんだ」
男は立ち上がって冷蔵庫に入っているケーキを取り出す。定番中の定番、イチゴが頭に乗っているショートケーキだ。「だったらコーヒーも飲もうかな」と男はインスタントコーヒーも持ってきた。キャップを開けてお湯を注ぐ。このとき「はっ」と、ひらめいた。「そうだ、これだ。王道だがカフェにしよう。ケーキがおいしくて、コーヒーが飲める店だ」
 男はケーキとコーヒーをそのままに、さっそく筆を手にすると黙々と書き始める。

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「こんな感じなんだ。どう」いまケーキのおいしいカフェの中にいた。健太はタブレットに書かれている文章を優花に見せた。「なるほど、さっき見せてもらったのよりこっちがいいわ」健太が見せた文章は、ある男がデートと言うテーマの公募作品をどう書こうか悩んでいる状況を再現したものだ。

「だろう、これなら意表をついた審査員が『あっ』と言わせらる気がするんだけどな」
「デートそのものではなくどんなデートを作ろうか悩んでいる男の話ね。発想面白いからいけるかもよ」優花はそう言ってほほ笑むと、イチゴの乗ったショートケーキを口に運ぶ。その横で健太はコーヒーをすすった。「あれ、薄いな。まさかインスタント?」「アメリカンだからよ」と突っ込む優花。

 今、健太は「デート」言うテーマで書く文章の公募作品について優花に相談している。いくつかの候補のうち絞り込んだ作品を優花に選んでもらった。健太にすれば、デートをテーマにするから、実際にリアルでデートをする相手が、一番わかるからだと思ったのだ。

「もし、優秀賞を撮ったら賞金20万だ当たったらどうする」「うーん、どこか旅行でも行こうか?例えば海外とか」まだ応募もしていないのに、優秀賞を取った後の事を早くも計画しているふたりは、仲良く本当のデートを楽しむのだった。


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