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コーヒーにするか日本酒にするか 第980話・10.1

「今日は寝たなあ。でもなんでクルミを食べながらミルク飲んでたんだ?」 おかしな夢から目覚め、時計を見ると間もなく午前中が過ぎようとしている。今日は休み。だから思う存分眠った。ところで翌日も休み。しかしこの2日間予定がない。恐らくこの2日間は家で過ごすことになるだろう。
「さてと」ベッドから起き上がる。ところが起き上がった瞬間、お腹から音がした。
「腹減ったのか。何食べよう」と思ってキッチンに行く。しかしどうしたものか、悩む。間もなくお昼だから、朝食というよりもブランチのようなイメージ。いやもう今日は二食ということで、昼ごはんと言えるのかもしれない。いずれにせよ何喰うか迷ってしまった。

「軽く食べるか、重く食べるか」ここで腕を組んで悩む。普段の仕事では「決断力が早い」と言われているのに、決断力が無いのは食べるものを決めるとき。仕事の昼食はコンビニで買うこともあれば外食をすることもあるものの、そのときは必ずと言って迷う。
 まだコンビニは業務の性格上、出遅れることが多いので、入ったころには品数が減っていて選択肢が絞られる。だが外食はそうはいかない。ごくまれに人気店に入れば、「売り切れ」というのもあるのかもしれないが、基本的に並ぶのが好きではないので、そんなに人気のなさそうな店に行く。

 ちなみに食べ物に関しては、そんなにおいしさを追求しないタイプ。そういうときに、メニューの数が多いと迷ってしまう。仕事とは無関係なのに場合によっては仕事より悩む昼食。だが今、休日のはずなのにその時と同じような状況下にある。

「何か飲もうか?」気分転換にまずはドリンクを飲んでから決めようと考えた。そのときに視線にほぼ同時にふたつのドリンクが入り込んでくる。ひとつはコーヒーだ。コーヒーは豆を砕くほどのこだわりはないが、一応フィルターに粉を乗せてハンドドリップをする。少し手間がかかるがコーヒーが好きなので、そのくらいの苦労は惜しまない。

 もうひとつは日本酒だ。これが平日であればこんな明るい時間から選択することはありえないだろう。「だが今日は休日かあ」と、頭をよぎった。午後も特に予定がないから昼寝することも許される。つまり日本酒も今から飲む選択肢に入っているということだ。
 ちなみに日本酒も多少のこだわりがある。大吟醸という高い酒までのこだわりはないが、純米酒とかそういうものにこだわる。安い酒でも良いのだが、ちょこっとこだわるのがコーヒーと共通点か。

「昼酒か、悪くはないな。だが......」もしかして真剣に昼から日本酒ということを考え出した。もう一度、「今日は休み」だということが頭をよぎる。出かける予定がないから車を運転することはない。というより車持っていないが......。
 それでも日本酒を飲むことに躊躇する。もっとアルコール度数の低いビールならどうだろう。だがビールはあまり飲まない。ビールの持つ利尿作用がとにかく苦手。あと炭酸も好きではなかった。それはコーヒーと同じような色をしながら、全く別物であるコーラに対しても同じ感情を持つ。

「やっぱりコーヒーだろな」そう思い、お湯を沸かそうとする。ここでなんとなくコーヒーを入れるまでの行程が面倒な気がした。
「今日は休み」3回目に頭に浮かんだ。休みはできるだけ体を動かしたくない。特に今日はお昼前まで寝ていたほど疲れていた。だから体を動かさない方が良いのではないかと考える。頭の中に天使と悪魔がいるのか、コーヒーを入れることをためらう。そのまま視線は日本酒に向かうのだ。

「たまには飲んじゃえ」ついに気持ちは日本酒に固まった。こうなると日本酒に会う肴というのが食べ物の候補になる。これがコーヒーならトーストとかそういうものだったのだろう。

「あった。これでいいか」冷蔵庫をあさると日本酒と合わせるとおいしそうなものがあった。どこかの名産の佃煮とか、かまぼこなど。これらは切ったり盛り付けたりするだけで食べられる。極力予定な動作をしたくない日にはまたとない肴たち。
「よし決まった!」

 時刻はちょうど正午を回ったところ。もちろん外は明るい。もう10月なのに天気が良いためか強い日差しが窓越しから入る。だが部屋の中では、すでにコップに日本酒を入れて、適当な肴をつまみながら飲んでいた。
「いいねえ、昼酒。そうだよ休みで何もやることなければ、これでいいのだ」と自分自身を納得させながら、コップに酒を注いだ。

 それから2時間くらい。すでに酔っていたが、周りに誰もいないから愚痴をこぼすこともなく静かなときが流れた。酔っているためか目の前がぼやけている。さすがに空間がゆがむほどは酔っていない。
「昼寝しようかなあ」こうして酔った体を少しふらつかせながら、ベッドに戻る。

 ちなみにこの後起きたのは暗くなってから。酔いはさめたが「時間が溶けちゃった!」と、コーヒーをすすりながら、昼間から日本酒を飲んだことを後悔してしまうのだった。

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シリーズ 日々掌編短編小説 980/1000

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