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動物海苔巻き 第943話・8.25

「え、いったいどうなっているの?」ある白い動物は意識が戻ると、首から下が、何か黒いものに巻き付けられていることに気づく。
「お、俺もだよ」隣を見ると黄色い動物も同じ状況になっている。そのさらに横にいるのは黒い動物。意識を失っているのかまだ気づいていないようだ。どうやら同じ町に住む動物の仲間たちが同じように拘束されていることがわかった。
「な、なぜ僕たちがこんな目に」白は記憶をたどろうとするが、まったく思い出せない。そもそもここはどこで、なぜ拘束されているかがわからないのだ。
「誰かの恨みを買ったのか?」黄はつぶやく、「恨み......誰にだろう」白は動く首をかしげながら考えるが心当たりがない。

「多分記憶の一部が消されているんだ」黄は唸るように一言。「記憶が消されているから、僕たちを恨んだ相手がわからないのか、それは弱ったなあ」白は思わず目を閉じる。
「と、とりあえず、ここから逃げるしかない。おい、黒!起きろ、逃げるぞ」と黄が黒を呼ぶ。だが白と黄とは反対方向で眠っている黒には聞こえないのか、表情は変わらない。

「うん、これは?」「おい、白、どうした!」「これだけど、どうも僕はこの拘束しているものがだね。食べ物のような気がするんだ」
「はあ、おい、白、正気か、食べ物ってなんだ。つまりそれなら俺たちは食べ物にされているってことか!」
 苛立つ黄、声が大きかったためか、ようやく黒の目が覚める。「お、おい、何、どうなっているのさ?」

「お、黒か、聞こえるか?俺たちは、もしかしたら食べ物になっているかもしれない」「へえ、食べ物。何をとぼけた、こっちは」黒がしゃべっている途中で、その声を封じるような音が鳴る。それは黒のお腹から聞こえる音だ。「おまえ、腹減っているのか?」黄の問いに「うん。たぶん」黒はそこまで言うと、ようやく自らの体が拘束されていることに気づく」「う、動かない」

「そうか僕たちは腹が減っているんだな。だからこれが食べ物だと思ったのか。だよな。どこの裏組織が拘束する相手に食べ物を使うものか」
 白はあくまで冷静だ。それもそのはず、いつもつるんでいる3体の中で最も頭が良いのは白だから。

「もうがみゃん出来ない!」突然、黒がわめくような声を出す。すると無理やり起き上がろうとする。だが首から腰の下まで黒いものに拘束されているため、少ししか起き上がれない。「だ、ダメ、だれか、ほどいてくれ」
 食い下がるようにわめく黒、だが白も黄も拘束されており、何もできないのだ。
「うん、これは......もしや」白が黄とは反対方向のものを眺める。「白、どうした?」「いや、この隣のものって、もしかしたら」白はそこまで言うと、黒のように動き出す。白は頭が良いから黒のようにただもがくだけではなく、ある目的を持っていた。それは黄とは反対方向の物体に対して口をつけるという行為。

「うん、やっぱりだ」白はそういいながら口を動かしている。「白、なにをしている。うん?何か食っているのか」「ああ、隣にあるのはおにぎりだ。うん、ご飯に塩味が良い塩梅で効いているぞ」
 そういうと白はまた隣のごはんにかぶりつく」「え、おにぎり!やったあ」黒は白の言葉を聞いていた。やはり黄とは反対方向に置いている物。それは大きなおにぎりにしか見えない。黒も体を動かしてそれにかぶりつく。「うん、おいちい!」そのあと無心になっておにぎりをむさぼる。よほど腹が減っていたのだろうか?

「おい、なんだよ。俺だけ仲間外れだ!」ここで苛立つのは真ん中の黄だ。左右に白と黒がいるからおにぎりにありつけない。さっきまでは真ん中にいて多少なりとも安ど感があったのに、急に不幸な気分になってきた。
「ち、ちょっと俺にもおにぎりを」「無理だよ、僕は口しか動かせないのに」と言って白は、またおにぎりをうまそうに食べる。同様に黒も黙って口を動かし「むしゃむしゃ」という、食べるときに口から出る音しか聞こえない。

「くそ!なんだよ。これじゃあまるで罰ゲームじゃないか!」ついに黄の怒りは頂点に達した。そのときだ、黄の怒りが相当強い力になったのか、拘束されていた前足が突然動く。そして首の上から出てきた。
「お、なんと出てきたぞ、よし、こいつを」黄は拘束している黒い巻物に前足をかけると思いっきり力で引っ張った。「あ、やったあ」黄の作戦は成功した。黒い拘束物は見事に敗れ、ついに自由の身となる。
「なに、そうか、よし僕も」黄が自由になったのを見て白も頑張ろうと力を出す。こうして前足を首の前から出すと同様に黒い拘束物を破り去る。「黒、いつまで食べてんだ」黄は黒の拘束物を解いてやった。

「よし俺も食うぞ!」黄は白が食べていたおにぎりの隣のおにぎりを見つけると、無我夢中でかぶりつく。逆に白と黒はお腹が落ち着いたようだ。「この黒い拘束物はゴムか?」白は自らの前足でぶち破った黒い拘束物を見る。「もしや食べられるかも」臭いで察知したのか、それに口をつける白。「やっぱりだ。おい、この黒いの海苔だぞ!」白の声に黄と黒が振り返る。「へえ、あ、本当だ」次に黒が拘束物を食べた。
「なんだって、海苔で拘束されていたのか、まるで海苔巻きだ」黄もおにぎりを食べた後、拘束物のにおいをかぐ。

「よし、腹も満たせた。逃げるぞ」我に返った白の一声に、黄も黒も真顔に戻ると、一斉に脱出した。なにか皿のようなものに拘束されて並べられていたらしい。だがこうして3体の動物は無事に脱出に成功する。
 いったい何が理由で拘束され、そしてどこにいるのかわからない。だけど逃げるしかないとばかりに、3体は力を合わせて走りだす。

「あれって、おにぎりを置いていた皿だったのかもしれないな」逃げながら黄が一言。「やっぱり何者かに食べられるところだった。とにかく逃げよう」先頭を走る白は、黄に答えながら安全そうなところを探す。
「まって、待って!」そして黒は、2体の後から置いて行かれないように無心に追いかけるのだった。


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