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という句が、学会の大きなスクリーン上に表示されている。 自分の身に訪れる死は自覚するまで遠いものとして認識していたのだが、過ぎ去ってしまえば、あっけないのが人生。 そうだ、人生はあっけないのだ。 ついこの前、働き始めたと思ってた。 ついこの前、子供が生まれたと思った。 もう齢43歳になる。 大人になってから、あっという間に時間が過ぎた。年が明けたと思ったら、すでに年の暮れが迫っていた。やれクリスマスだ、年賀状だ、おせちだ、みたいな話題を自身が意識しなくとも耳にする
そのおうちは高いお山の上にあって、車幅ギリギリの細いくねくねとした道を登っていくと辿り着く。 道はところどころ地面のアスファルトがでこぼこしていて、草が生え、走っているとかたかたと私の車が揺さぶられる。少しでも運転を誤ると、ブロック塀の壁にすったり、タイヤが道から脱落しそうでこわいので、私は慎重にスピードを落として車を進める。最後の道は両脇に古く使われなくなった工場と平屋のトタンの屋根のおうちに挟まれて、その道の行き止まりまで行くと目的のおうちがある。 目の前には竹林が広
ことばのない世界。 想像したことがあるだろうか。 私は、今、当たり前のようにパソコンあるいはスマホを使用してここに文章を記しているが、実はある人たちにとっては、当たり前のことではなかったりする。 私たちは、ことばとことばを交わすことで、日々の意思疎通を行っている。 けれども、この世には、ことばを発することができなくなってしまう病気がいくつかある。 脳卒中、脳腫瘍等の影響で出現する高次脳機能障害の一つ。失語症。 あるいは進行性球麻痺や筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症
「このアップデートには重要なバグ修正とセキュリティアップデートが含まれ、すべてのユーザーに推奨されます」 「最新のiosにアップデートしてください」 iPhoneの画面から、私はまたアップデートを要求されている。 えええ、めんどくさ!と思いながら、私は夜寝ているうちにそれが終わるように時間設定をした。 このように、私たちは日々、さまざまなアップデートをデバイスから求められている。 最新のバージョンになって使いやすくなった。新しい機能が使えるようになった。効率よく早く
私はどちらかというと病弱な子でした。 以前、そんな話を書いたこともあります。 なので、幼い頃は健康優良児の人と比べると、それなりに病院通いを体験しているのかもしれません。 その体験を経て、今、自分が医療福祉職として働いている時に自然と気をつけていることがあるかもしれないなと思ったのです。 そう思ったきっかけは「SNS医療のカタチTV2023」の視聴イベントに参加したことでした。 (このイベントの公開収録に参加した内容は後日、noteに書こうと思っております。夫と久し
「まずは座る事なんです」 「しっかり座らないと、しっかり立つ事はできません」 「だからこうやって座る練習をしましょうね」 私は、介護ベッドに座っていて、同じく隣に座っている男性に声をかける。 2人は視線は合わさず窓から見える庭をみつめていた。 庭は小さいながらも、木工の白いテーブルと4つの椅子がおいてある。芝生が敷かれていて、つやつやした緑の垣根が見える。 私は想像する。この人は昔はこの庭で奥さんとお茶をしたり、道路をはさんで向かい側に見える桜の木をゆったりと眺めて
先日、書いた記事。 読んでくださった皆様、ありがとう。 スキをおしてくださった方、ありがとう。 そしてコメントを寄せてくださった方、ありがとう。 実はこの記事は書こうか書かまいか悩みました。 今まで、そういう記事は何度かありました。 一番懸念していたのは「これを読んだ人を心配させてしまうかもしれない」ということでした。 置かれている状況に悩んでいたのは事実ですが 私自身はけっこう平気というか、日常的にあることなので、心配しなくても大丈夫よ〜と自分では思っていて
ぼーっと火を見つめる。 寒い毎日が続く。 吐く息が白くなり 空気がピンと張りつめている。 仕事が終わって自宅に帰り、夕飯の支度を終えて、家族が食事をしたあとに、薪ストーブを見つめている。 夫は帰って来るなり、庭から木を運んできて、ストーブの中にくべる。火をつけて、空気を調節して、少しずつ火の形が大きくなる。 火をおこすには、この空気の量が大切になってくる。 どれくらいの空気をストーブの中に入れ込むのか。調節する箇所があって、空気をしぼったり広げたりする。 酸素が足
「なんか、お話しましょうか」 と言われたのが先々週。 私は訪問リハのお仕事で、夏前くらいから行かせてもらうようになった男性にこのように言われたのだ。 ファーストコンタクトは彼からの注意で幕を開けた。「君ね、いちいち確認しなくていいよ。」と血圧などのバイタルサインを確認している時におっしゃられ『あまり話しかけてほしくない方なのかな』と私のなかで強く印象に残ってしまった。 それ以来、彼がいつも韓流のドラマを熱心に見ていることもあり、私からは訪問中は極力話しかけないようにし
今日は私の若い頃のとっても恥ずかしい失敗の話を書いてみようと思う。 先日、ある利用者さんとお話していて、お互いに若い頃の話になった。 その方は若い頃に介護士をしていたので、今行っているデイサービスの介護士さんに対して、大変感謝はしているのだけれども、時々「その言い方は違うんじゃない?」ともやもやとした気持ちを抱くこともある.....と正直に話された。 たぶんそれは彼女が介護士というものを経験しているからこそ、思ってしまう気持ちであるのかもしれない。 この方は大変穏やか
今日は「楽しく過ごすことが人生の豊かさにつながること」について少し書いてみようかなと思います。 ※いつも記事や絵を楽しませてもらっているぷんぷんさんのサムネイル画像、早速使わせてもらいました。にこにこ顔、かわいいですね。 なぜ、この事について書こうと思ったかというと、私が懇意にさせて頂いている花丸恵さんの記事が大変おもしろく、作中で気になる記載があったからです。 そこで私が思ったことは 丸恵さんが感じていたこの時間は フローの時間 であったのかもしれない....という
今日は利用者さんと一緒にあんでるせん手芸をしている時に「春はあけぼの」の話になった。 枕草子だ。 春はあけぼの(がよい)。じょじょに白くなっていく、山ぎわ【山に接している空】が少し明るくなって、紫がかかった雲が細くたなびいている(その景色がよいのだ) 私は想像してみた。 じょじょに白くなっていく。 山ぎわが少し明るくなっていく。 紫がかった雲が細くたなびいている いいと言われている景色を。 私はこれらの景色を想像することはできるが、その景色は 非常におぼろげで
今日はこの曲で。 あれは さかのぼること、一年以上前。 私は高齢者の施設で働いていた。 「機能訓練室」と書かれた古い時代を感じさせる看板の奥には、平行棒や歩行器などが置いてあり、その部屋の奥にはデイケアルームが広がっていた。 私たちリハビリテーションスタッフとデイケアの利用者さん、デイの職員たちは同じ部屋で、仕切りのないワンルームで一日の大半を過ごしていた。 私は毎日、デイケアルームの奥から聞こえてくる音楽に対して複雑な思いを重ねていた。 デイケアルームの奥には
はたらく。 はたらくについて考える。 私らしいはたらき方ってなんだろう。 自分の中ではたらく時に大事にしているものとか、ルールみたいなものが「私らしさ」につながるのだろうか。 私らしさって何だろう。 この年になっても自分の事がよくわからない。 そんなに自分の事がわかっていないと生きていけないものなんだろうか。 私は道端のダンゴムシに問う。 ダンゴムシは丸くなる。 少なくとも私とダンゴムシはかなり違う生き物だってことはわかる。 ころころ。 私はなるべく丁寧