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伝えたかったこと

愛犬ピーすけが天国へ旅立って
ちょうど1ヶ月になるその日は、
地元の小学校で、
絵本の読み聞かせボランティアを
することになっていました。


当日まで、
何を読もうか
ずっと悩んでいました。

朝の読み聞かせ。
やっぱり、
明るい気分になる絵本がいいかな。

そう思いながらも、
私の頭の中には、
全く真逆の絵本が浮かんできて
その絵本が
頭から離れませんでした。

『だいじょうぶだよ、ゾウさん』

それは、ネズミとゾウの友情の物語。

大切な人との別れ、
死、
生きるとは

かなり重いテーマだけれど、
深い悲しみの中に、
どこか温かい希望のようなものを
感じるこのお話が、
私はとても好きでした。

きっと、
この時の私は、

ピーすけが遺したものは、
悲しみだけではなかった

と言うことを、
どうしても
誰かに伝えたかったのだと思います。


ぎりぎりまで、
もう1冊の楽しい絵本と
どちらにするか迷いました。

そして、
最終的に、
『だいじょうぶだよ、ぞうさん』
を選んだのでした。


静かな教室。

子どもたちの眼差しに、
飲み込まれてしまいそうでした。
心臓がバクバクしました。
集中しているのか、
興味がないのか
とにかく教室は静まりかえっていて、
あまりの静けさに
息をすることもためらわれるほどでした。

やっぱり選択ミスだったかな…
もう読み聞かせは始まっているというのに、
少しだけ後悔している自分がいました。

でも、
私が選んだのだから。

意を決して読み進めました。
最愛のピーすけのことを
思いながら。

途中、涙が出そうになりました。
でも、そこはぐっとこらえ、
優しく、
そして温かく
最後は、
力強く、希望を込めて、
読み聞かせを終えました。

と同時に、終了のチャイムがなりました。

廊下で、
他のクラスで読み聞かせた仲間たちと
合流しました。

「すごく、うけたよ!」
仲間たちの笑顔から、
他のみんなは、
子どもたちが喜ぶ
楽しい絵本を選んだのだと
分かりました。

こんな重いテーマの絵本を選んだのは
私だけでした。

何だか、
子どもたちに
申し訳ないことをしたような
気持ちになりました。


それから、
1ヶ月ほどして、
私たちボランティアグループ宛に
子どもたちから手紙が届きました。

日頃の読み聞かせへの感謝の手紙でした。

驚いたことに
あの絵本に関する感想が
いくつもありました。

『あのネズミのようなやさしい友だちを
いっぱい作りたいと思いました』

『悲しくても、あきらめなかったネズミは
すごいなと思いました』

そして、その中に、
こんなメッセージがあったのです。


あのお話は、一生忘れません。


胸があつくなりました。

私の思いが届いた…

そのことが、
嬉しくてたまりませんでした。

たった一人でもいい。
誰かの心に響くものがあったのなら。

あの絵本を選んで良かった…

やっと、
心から、そう思えました。


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