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息子に伝えたかったこと

息子は、
流行りのものより、
どちらかというと
昔のものが好きだ。

家も純和風の
伝統的な日本家屋に
憧れているし、
家具や雑貨も
おしゃれな
今時のデザインよりも
一昔前の
昭和の雰囲気が漂うものの方が
好きだったりする。

好きな歌も、
私たちの時代に
流行ったものが多い。

もちろん
今時の歌も、
聞くには聞くが、
本人曰く
今の歌は
なぜか飽きてしまうとのこと。

そんな息子が
好きな歌手の1人に
槇原敬之さんがいる。

マッキーも
どちらかと言えば
私たち世代が
夢中になった歌手だ。
私たちも
マッキーは好きだが、
有名な曲を知っている
その程度だ。 

気が付けば、
私たちより
息子の方が   
マッキーに詳しくなっていた。

そんなマッキー好きの息子から
教えてもらった素敵な曲がある。

「お母さん、
この曲、いい曲だから聴いてみて」
それは2年前、
息子が6年生の時だった。

『僕が一番欲しかったもの』

マッキーファンには
申し訳ないが
私はこの曲のことを
全く知らなかった。

息子に言われて、
すぐに聴いてみた。


大好きなピアノで始まる
懐かしいような切ないような
メロディーに、 
私は一瞬で引き込まれた。

美しいピアノの音色と
マッキーの優しい歌声が
温かい世界を作り出し
聴いているだけで、
幸せな気持ちになった。

1番と2番の歌詞は、
ほとんど同じだった。
要約すると、
こんな感じだ。

素敵なものを拾った
喜んでいたら
自分以上に
それを必要としている人がいた
惜しいような気もしたけれど
それをあげることにした

この先探していけば
もっと素敵なものが
見つかるだろう

その人は何度もありがとうと
しそうに笑った

そのあともまた
素敵なものを拾った
…と2番へと続く。

これだけでも、
十分、
胸にこみ上げるものがあった。

2番の後、
以下の歌詞が続く。
 

結局僕はそんな事を何度も繰り返し
最後には何も見つけられないまま
ここまで来た道を振り返って見たら

クライマックスに向けて
メロディーは、
優しさと温かさ、
そして、力強さを増していく。

そして、ラスト…。
気が付けば、私は号泣していた。

僕のあげたものでたくさんの人が
幸せそうに笑っていて
それを見たときの気持ちが僕の
探していたものだと分かった

今までで一番素敵なものを
僕はとうとう拾う事が出来た


誰かの幸せを願いながら生きる
それが人生で最高の喜びだと
私は思う。

泣きながら、息子に言った。

「お母さんが伝えたいことは
全部この歌の中に詰まってる。
だから…
もう、これ以上伝えることは何もないよ…」



私が大切だと思うことを
息子も同じように大切に感じていた。
もう、それだけで十分だった。

私は、この日
握りしめていた手を離した。

息子は、
思春期にさしかかっていた。
もう、
私たちとは違う思い、違う考えが
生まれていた。

もちろん、
まだ不安定ではあるけれど、
きっと、もう大丈夫
そう思った。

何かあったら
帰れる場所が、
あるのだから。

そして、
私たちは、
それぞれの道を歩き始めた。

そう。
私は、
『母』から、
『私』に戻ることにしたのだ。


この日を境に
息子のことで悩むことは
ほとんどなくなった。


『僕が一番欲しかったもの』


この曲を聞く度に
あの日のことを思い出し
胸がいっぱいになる。

これは、
私が息子に伝えたかったこと
いや、 
もしかしたら、

私が、息子から教えられたこと

なのかもしれない。






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