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神戸通訳ツアーで神戸学/震災/通訳/SDGsを学ぶ

神戸通訳ツアー2023!

2023年1月14日。この日は大学の授業の一環で、学外通訳演習という形で神戸通訳ツアーを開催しました!生憎の雨でしたが、学生は愚痴一つこぼすことなく、私についてきてくれました。

このツアーについては、過去の一般参加者がオンライン記事にしてくださったものがありますので、こちらをご参考ください。

神戸通訳ツアーには2パターンがあります。
1) 私が一人で全てガイドを担当する場合
2) 私と学生がガイドを分担し、学生もガイドする場合

今回は大学の授業ですので、私が一人で北野異人館、南京町、メリケンパークの3か所をガイドし、学生が通訳しました。この記事では主にメリケンパークでの通訳ツアーについて書いています。

メリケンパークで阪神大震災に思いを馳せる

最後のメリケンパークでは、神戸ポートタワー(今は生憎改修工事中ですが・・・)と神戸港を見ながら、阪神大震災について思いを馳せます。毎回通訳場所に選ぶのは「神戸港震災メモリアルパーク」。

ここでの通訳については、今回はこれまでのツアー方法と異なり、動画の力を借りるという工夫をしてみました。これまでは阪神大震災の写真集を片手にガイドしていたのですが、学生は通訳メモに集中しているので、実はこちらの写真をあまりみていないという「見せてるけど見ていない問題」がありました。

そこで購入したのが、この本。『スマホで見る阪神大震災  災害映像がつむぐ未来への教訓』(木戸崇之・朝日放送テレビ著)です。この本には実に350以上もの動画へのQRコードが載っており、スマホでかざすとどこでも震災の動画を見ることができます。

『スマホで見る阪神大震災  災害映像がつむぐ未来への教訓』(木戸崇之・朝日放送テレビ著)

現地+動画=擬似体験

学生には通訳前にスマホを出してもらい、震災メモリアルパークで一斉に5つの動画を音量最大で同時再生しました。1) 放送局における震災の瞬間を捉えた動画、2) 救援物資が足りなくて怒号を浴びせる住民、3) 仮設住宅の当選結果に人が集まっている動画、4) 火災が延焼している動画、そして5) 車が何台も神戸港の海に沈んでいる動画。5つの動画から同時に聞こえてくる音が現場の混乱感を引き出します。

スマホで震災動画を見せ合う学生。今でも倒れかけたまま残る街灯が後方に。

参考までに、1)の動画がこちらです。

動画を見る場所も工夫しました。神戸港震災メモリアルパークでは今でも当時の損害を残している区画があります。上の写真を見ていただくと分かる通り、街灯が今でも傾いたまま残されており、学生を連れてくると毎回驚きます。ここで動画を再生することで、あたかも1995年にタイムスリップしたかのような擬似空間を作り出そうというのが狙いです。

動画視聴が終わった後、私のガイドが始まります。映像を見た後ですから、具体的なイメージを持ってガイドを聞けます。阪神大震災と東日本大震災の災害状況の違い(火災・家屋倒壊と津波による被害)、淡路市民による救助活動にみる共助精神、建築基準と倒壊家屋数の関係、震災前後における神戸港の貿易取扱量推移など、ガイドする内容は多岐に渡ります。

三宮駅からスタートして約3時間後、震災パートのガイド通訳を終えると、ツアーは終了です。学生はお互いを拍手で労い、安堵した様子でした。その後はBE KOBEのモニュメントで記念撮影をしました。

BE KOBEで記念撮影1(学生より掲載許可をもらっています)
BE KOBEで記念撮影2 (学生より掲載許可をもらっています)

神戸通訳ツアーで大切にしている3つの信条

この神戸通訳ツアーには今、私は三つの信条があります。

1) 震災体験を悲しみの押し付けにしない

『スマホで見る〜』にも書いてあったのですが、震災経験者が神戸市民の半数を下回る現在、震災の経験を語ることがややもすると「違った時代の人の経験」と受け止められることもあるかと思います。そしてそれが経験者の語りをより美化することになり、「悲しみの押し付け」になってしまってはいないかと。それはダメなんじゃないかと。

震災でこんな経験をした、という話はしていいと思います。ですがそれを教育という文脈でやるならば、必ず未来への教訓がなければいけない。過去と未来を繋ぐ思考を促さないといけないと思います。震災経験者の一人として、そしてツアーで語るものとして、そこは自分でも語り方を変えていかなければ、未来の世代には受け入れてもらえないと思っています。そのやり方の一つとして、ツアーというエンターテイメント性を持たせつつ、あくまで教育という側面を両立させるEdutainment (Education + Entertainment) 的方法を採用しています。

2) 通訳するからこそ、記憶に残る

経験があるのでわかりますが、ある分野の通訳を一回でもすると、その記憶は長く残ります。原発話を聞くだけでなく、それを別言語でどう表現しようか必死に考えて表現するという、通訳の性質を利用することで、学生の記憶に残るようにしたいです。

3) 全てにSDGs思考を

SDGsの本を読めば読むほど、全ての活動が何らかの形でSDGsに関わっていると確信します。防災はSDG 11.5の「災害が直接もたらす経済的な損害を大きく減らす」というターゲットに通ずるものがあります。だからこそ、震災体験を過去の悲しみの押し付けに留めることなく、2030年以降の未来を持続可能にするために何が必要か?という未来をSDGs思考で作っていく一助になればと(大口叩いてますが)思っています。

また通訳ツアーの開催方法も、よりサステイナブルな方法で出来ないかと思考を巡らせています。例えば現在はCity Loopという観光バスに乗って観光地を回っていますが、Kobelinという神戸コミュニティサイクルを利用することでCO2排出を減らしつつ楽しめる形態も考えています。

https://www.kobelin.jp/

打ち上げ

その他、途中の南京町ではガイド通訳後に小籠包を学生にご馳走しました。また最後は学生のお誘いで元町のスペインバル Charlie で打ち上げ。2時間語り倒しました。こういう時間を学生と過ごせることに、心底幸せを感じます。そして週末の外出をOKしてくれた家族に感謝です。

学生が選んでくれたスペインバル Charlie。料理も美味くスタッフ対応もGood! 


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