ペンシルバニア大学MCIT修士課程の春学期を終えて〜オンライン留学体験記〜
こんにちは、くぼみです。
2022年1月からペンシルバニア大学のMCITプログラムでコンピューターサイエンスを学んでいます。そして先月、なんとか1学期目を終えました!この記事では、私の1学期を振り返りながら、オンライン留学がどのような学習体験なのかについてご紹介したいと思います。
オンライン留学に興味がある人や、これからペンシルバニア大学のMCITプログラムに出願する人の参考になれば幸いです。
ちなみにペンシルバニア大学のMCITプログラム とは、コンピュータサイエンスを学ぶ修士プログラムで、完全オンラインで学位を取ることができます。
プログラムの概要や、私の出願〜入学の経緯については、こちらの記事をご覧ください。
オンラインでどうのようなサポートが受けられたか?
オンラインは、手厚いサポートはあまり期待できないのかなと思っていましたが、想像以上に手厚いサポートが受けられ、正直とても驚きました。
聴講必須の講義はすべて録画
まず、講義はすべて録画されているので、時差を気にせず自分の好きな時間に見ることができます。字幕やスライドもダウンロードできます。
任意参加のライブセッション
それとは別に、コースごとに、Zoomでのライブセッション(任意参加)があります。主に以下の3種類です。
教授に直接質問できるオフィスアワー(週2回)
TAによる補講(週2回)
個別に質問できるプライベートオフィスアワー
これらのライブセッションに参加することで、教授に質問ができたり、他の学生と同期的に学ぶことができます。録画講義のような非同期の学習と、このようなリアルタイムの同期的な学習を組み合わせることで、モチベーションを高く保ちながら学習できたなと感じています。
CourseraやUdemyなどのMOOCではこういったライブセッションが受けられないので、大学院ならではの差分だなと思いました。任意参加ではありますが、できるかぎり参加するようにしていました。
(ただし、アメリカ時間が中心なので、多くのセッションが日本時間の夜〜朝に開催されます。私は、参加できそうな時間帯(朝or夜)のものだけ参加するようにしていました。)
質問はオンライン掲示板で
Piazzaという外部ツールで、講義や課題に関する質問を投稿できます。質問を書き込むと教授かTAから回答がもらえるオンライン掲示板です。
早いときで10分以内に回答が来て驚きました。疑問がすぐに解決される体験がとても良かったです。私は時差的にすべてのライブセッションに参加できないこともあり、わからないことは積極的に掲示板で質問していました。
コミュニティで交流はできたか?
オンライン学習の難点として、他学生との交流の難しさや孤独とどう向き合うかという点が挙げられます。もちろん現地留学と比較することはできませんが、交流できる機会はいろいろとあるので、積極的に活用すれば人とのつながりが作れると感じました。
Slack
学生同士の交流は、主にSlackで行われます。授業ごとのチャンネルがあるので、同じ授業を受けている学生同士で交流できます。また、#mcit_japan, #mcit_londonなど、国や地域ごとにもチャンネルがあるので、同じ地域の学生と交流もでき、時々ローカルミートアップが開催されたりもするようです。#mcit_japanチャンネルもあります!
オンラインの交流イベント
MCITでは、学生同士が交流するためのCoffee ChatというオンラインのZoomイベントが定期的に開催されています。
何度かこのイベントに参加し、他の学生とつながることができました。世界中の学生と知り合えるのは嬉しいですし、やはり友達ができるとモチベーションが高まるので、個人的に好きなイベントです。
メンター制度
他にも、在学生同士のメンター制度があったので申し込みました。先輩学生がメンターになってくれて、進路や勉強の相談ができました。
もっと興味がある方は、コミュニティーの体験についての在学生インタビューも参考になると思います。
英語でついていけたか?
不安要素のひとつである、果たして英語でついていけるのか問題!ですが、今の所なんとかついていけています。というより、ついていけないと困るので、必死になって勉強する→徐々に慣れるという方が正しいかもしれません。
非ネイティブでもフォローアップしやすいのはオンライン学習の魅力
非ネイティブでもフォローアップしやすいという点は、オンライン留学ならではの魅力だと思います。理由は以下です。
講義は録画なので、何度でも聞き直せる、再生速度も調整できる
講義の字幕をダウンロードできる。(DeepLで日本語訳することも可!)
コミュニケーションがテキストベースなので、ついていきやすいし発言もしやすい
コンピューターサイエンスは英語で学ぶ価値がある
エンジニアは英語ができるととても強みになるので、コンピューターサイエンスを英語で学ぶことはとても大きな価値があると感じています。
時間管理が肝!
仕事や子育てなどをしながら学位を取れることや、好きな時間に勉強できることは、オンライン学習の魅力です。その反面、オンライン学習を成功させられるかどうかは、自分で時間管理をできるかどうかにかかっているということを、強く実感しました。
1授業あたり週に15時間
大学側は、ひとつの授業につき週に15時間は確保することを推奨しています。私も実際に勉強時間を計測してみたところ、たしかに平均15時間ほどの時間がかかっていました。講義や課題の難易度によって、8時間で済む週もあれば、20〜25時間ほど必要な週もありました。
1学期に取る授業の数は1〜2コマが推奨
大学側は、最初の学期は、様子を見るためにも、フルタイム学生なら2コマ、パートタイム学生なら1コマまでに抑えることを推奨しています。
私は現在、フルタイム学生として参加しており、春学期は2つの授業を履修しました。2つだけだし余裕だろうと思っていたのですが、実際は思った以上に大変で、2つの授業で精一杯…という印象でした。
持続的に学び続けられる時間管理力が大切
もちろん個人差は大きく、仕事をしながら授業2つをこなす学生もいれば、3年ほどかけて授業を各学期1つずつ取って卒業する学生もいます。いずれにしても、いかに自分に合った学習ペースを見つけ、継続的に学び続けられるかが大切だなと思います。
ちなみに、出願で提出するエッセイにも、「1授業あたり週平均15時間の勉強を、どのように自分の生活に組み込むつもりですか?」という質問項目があり、重視されていることがわかります。
私の場合は、1週間のうち4〜6日を勉強にあてるようにしています。持続的な学習サイクルを作るために、1週間を1サイクル予定を立てたり振り返りをしていました。が、課題や試験勉強、学外の予定が重なったりして、後半は課題の期限に追われる生活でした。来学期こそは時間に余裕を持って進めたいです…!
履修した授業の振り返り
というわけで、ここまではオンライン学習の体験全体についての振り返りでした。ここからは、私が今期履修した2つの授業の振り返りです。ひとつめはプログラミングの授業、ふたつめは数学の授業です。
Introduction to Software Development
コース内容
ソフトウェア開発入門。
前半(1〜5週)は、Pythonを用いて、データ構造、条件分岐、ループ、変数、関数などのプログラミングの基本的な概念を学びます。
後半(6〜14週)は、Javaを用いたオブジェクト指向プログラミングの入門です。クラス、継承、ファイルの読み書き、正規表現などを学びます。
Courseraの短期コースにも同様の講義が公開されています。
課題
全部で課題は9つ。中盤まではほぼ毎週課題があり、後半は隔週ですが難度も上がります。
与えられた指示書に沿ってプログラムを完成させ、コードを提出します。内容は、ゲーム制作、ファイルの読み書き、データ解析など、多様でとてもおもしろいです。
Codioと呼ばれる外部ツールを用いてコードを提出し、自動採点と手動採点を組み合わせて採点されます。
最後の2つの課題は、グループ課題です。1人で取り組んでもいいし、2人で協力して取り組んでもOK。
試験
自宅受験の試験が2回。1回目はPython、2回目はJavaでの試験です。
試験の開始から提出までに4日〜6日が与えられ、学生は各自で時間を見つけて試験に取り組みます。といっても何日もかかるような試験課題ではなく、私の場合は各4〜10時間程度で終わりました。
Open book形式(授業の資料閲覧OK、公式ドキュメント検索OK)
英語
プログラミング自体が英語ベースなので、リスニングや語彙ではあまり困りませんでしたが、何枚にもわたる課題のドキュメントのリーディングが大変でした。
プログラミングの事前知識がある人、英語のドキュメントを読むことに抵抗がない人は向いていると思います。
感想
全体を通して、課題がとても楽しかったです(特にゲームの制作)。このコースは、講義よりも、むしろ課題から学ぶことがとても多かったです。
講義で学んだ知識が、課題を通して初めて、自分で使えるようになるという感覚です。「わかる」で終わらずに「できる」状態にするためのアクティブラーニングが徹底されている授業設計で、とても関心しました。
最後のグループ課題2つはとてもタフな課題でした。私は各15〜20時間ほどかかりましたが、同級生をさそってペアで取り組めたことは、共同開発の経験としてとても勉強になりました。ちなみに、時差が少ない相手を選ぶと吉です。
Mathematical Foundations of Computer Science
授業内容
コンピューターサイエンスにおいて重要な離散数学を学びます。
大きく3つのトピック(組み合わせ、確率、グラフ理論)を学びます。
課題
コンスタントに毎週課題があります。
問題数は各課題に5問程度。Latexで回答を記述しPDFで提出。
Gradescopeという外部ツールを使って提出。TAによる手動採点。
講義を見てもすぐには解けないレベルの問題が多く、私の場合は講義以外の教材も使って調べたり勉強したりする必要がありました。
試験
自宅受験の試験は3回。(組み合わせ、確率、グラフ理論)
Honorlockという外部の試験監督サービスを用いて、自宅で制限時間3.5時間の試験を受けます。
課題同様、Latexで回答を記述しPDFでGradescopeへ提出。手動採点。
Closed book形式(講義資料などは一切持ち込み禁止。もちろんグーグル検索も禁止)
試験の難易度は、課題よりも易しい。
毎週たくさんの新しいトピックを習うので、3回の試験で試験範囲が分割されていたのが救いでした。
英語
数学用語をほとんど知らなかったので、まず語彙でとても苦労しました。また、問題の解答を英語で記述する必要があるため、ライティングもとても苦労しました。一日で飛躍することはありませんが、終盤になる頃にはかなり慣れてきました。
感想
高校数学で習った知識と新しい知識が結びつく瞬間が多く面白かったです。特にグラフ理論は初めて学んだので、とても興味深かったです。ただ、全体を通してとても難しかった印象です…!
第一の壁は英語の壁でした。数学用語や表記法がとにかくたくさん出てきます。そして数学は、そもそも問題文を正確に読解できないことには、回答もできません。始めは知らない単語だらけだったので、英単語ひとつひとつを調べまくるところからのスタートでした。
続いて第二の壁は、数学的証明の壁でした。課題や試験の多くは証明問題です。数学的証明では独自のフレーズを使うので(しかも英語なので馴染みがない)、始めのうちは自分では全く証明が書けませんでした…。とにかく解答例をよく読んでよく使われるフレーズを真似する、自分で練習してみる、を繰り返し、だんだんと証明が書けるようになりました。
講義だけでは十分に理解できないこともあったので、講義以外の教材にかなり助けられました。特に役立ったのは、参考書籍『Mathematics: A Discrete Introduction』と、TrevTutorという数学解説Youtubeチャンネル(←みんな見てた。超おすすめです)。
以上が、個別の授業の感想です。
おまけ:タスク管理や授業ノートにはNotionが最高
もともと仕事のタスク管理などにNotionを愛用していたのですが、学生になってからは大学の情報管理や授業ノートにNotionが大活躍しています。
大学生活×Notionの活用法ということでツイートしたところ反響があったので、これはまた今度、別のnoteでまとめて紹介したいと思います!
というわけで
長々と書きましたが、とても楽しく勉強しています!!今後もnoteで体験記を書いていきたいです。オンライン留学を検討している人の参考に少しでもなれば幸いです。質問があればコメントやTwitterでお気軽に聞いてください。
↓オンライン留学体験記をマガジンにまとめています。他の記事もぜひ。
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