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なぜデザイナーの私がオンライン大学院でコンピューターサイエンスを学ぶのか?〜ペンシルバニア大学オンライン留学体験記〜

こんにちは、デザイナーのくぼみ(@kubomi____)です。先日、ペンシルバニア大学の修士課程に合格しました。2022年1月から社会人学生として、コンピューターサイエンスを勉強していく予定です。

この記事では、なぜデザイナーの私がコンピューターサイエンスを学ぼうと思ったのか?海外の大学院にオンライン留学するってどういうこと?といったことについてお話します。オンライン留学やコンピューターサイエンス修士課程に興味のある方の参考になれば幸いです。

自己紹介

デザイナーのくぼみです。私のバックグラウンドについて簡単に紹介します。大学では情報デザインを専攻し、デザインの考え方とともに情報技術やプログラミングの基礎を学びました。卒業後は、インターフェースデザインを専門とするデザイン会社に入り、デザイナーとしていろいろな製品やサービスのUI/UXデザインに関わってきました。またデザイナーとして働くかたわら、議論を絵や図で視覚化するグラフィックレコーディングの活動もしています。

なぜデザイナーの私がコンピューターサイエンスを学びたいのか?

上記のように、大学ではデザイン×情報について学び、社会人になってからはデザインを主軸にしてやってきました。このまま私はデザインを極めてやっていこうと思っていた頃もありました。しかし、様々な製品やサービスづくりへの関わりを通して、またOOUIの考え方に触れたりして、デザインとテクノロジーは切っても切り離せない関係にあることや、いいものづくりにはデザインとエンジニアリングの両方を理解することが大切だと改めて実感するようになりました。また、私の職場にはデザイン×エンジニアリングの両方に精通したデザイン・エンジニア的な同僚も多く活躍していて、横断的・包括的なものづくりへの憧れがありました。

そんな背景から、ソフトウェア・エンジニアリング、ひいてはコンピューターサイエンスの分野について、広く体系的に学びたいという思いが強まります。このあたりの考えについては、以下の@tosiiuさんの記事にとても共感します。

進学を決めたきっかけは?

とはいえ1年前の時点では、まさか自分が大学院に進学することになろうとは、全く想像していませんでした。きっかけは、外出自粛期間で自分に向き合う時間が増えたことです。自分の人生のことや、自分がやりたいことを考えるうちに、「そろそろなにか新しいことに挑戦するタイミングかな」と、これからの選択肢を考え始めました。

そんなときに、オンラインで海外の大学のコンピューターサイエンス修士号を取れる道があることを知ります。世界中のどこからでも一流大学の教育が受けられるという画期的なコンセプトに衝撃を受け、「オンライン留学」という形でコンピューターサイエンスを学ぶ選択肢に惹かれました。

そこから、コンピューターサイエンス関連の学位が取れる海外オンライン大学・大学院についてリサーチを行いました。多くの大学が見つかりましたが、その中でも、コンピューターサイエンスの学士号を持っていない人でも出願できるペンシルバニア大学のMCIT(Master’s of Computer and Information Technology)という修士プログラムに特に興味を持ちました。Courseraで公開されているペンシルバニア大学の授業を試しにいくつか受講してみて、オンライン授業の体験がどんなものか、果たして英語で授業についていけるのか、といったところを確認し、自分に合っていそうだと思えたので出願を決意します。

▼Courseraの授業を受けてみたときのnoteはこちら

ペンシルバニア大学MCITってどんなプログラム?

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ペンシルバニア大学のMCITプログラムは、コンピュータサイエンスのバックグラウンドを持たない人を対象としているコンピュータサイエンスの修士プログラムです。カリキュラムのイメージとしては、学部レベルのコアカリキュラムと大学院レベルの選択授業を、2〜3年で集中的に学べるようなカリキュラムだと私は理解しています。プログラミングを少し勉強したことはあるが、コンピューターサイエンスの学士レベルの知識はない私には、ぴったりのプログラムだなと感じています。

ペンシルバニア大学MCITプログラムの特徴🎓
学位: Online Master of Computer and Information Technology
対象: コンピューターサイエンスのバックグラウンドを持たない人
入学要件: 3〜4年制大学の学部卒
期間: 16-40ヶ月
卒業に必要な単位: 10コース
言語: 英語
環境: 100%オンラインで完結

オンライン授業ってどんな感じ?

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ペンシルバニア大学では、Courseraというオンライン教育プラットフォーム上で授業が受けられます。授業は週ごとにモジュールで構成されていて、通勤時間などのちょっとした空き時間にも受講することができます。授業にはビデオ講義、資料、クイズ、課題提出、ディスカッションフォーラム、オフィスアワーが含まれています。オンラインだからといって一方通行ではなく、他の学生やTA、講師と関わり合いながら学習できます。学生同士のコミュニケーションの場としてSlackコミュニティーもサポートされていて、雑談や進路の相談もできるようです。

オンライン留学でもできること🧑‍💻(ペンシルバニア大学の場合)
・TAや講師への質問、オフィスアワー
・他生徒とのディスカッション
・プロジェクト課題
・他生徒とのネットワーキング(Slackやローカルミートアップ)
・大学が提供するキャリアサポート

オンライン留学のメリットとデメリットは?

授業や課題がすべてオンラインで完結するオンライン留学は、現地留学とはかなり違った体験になります。私が思うメリットとデメリットをあげてみました。(これは入学前の所感なので、実際に入学してみた感想もまた記事にしたいと思います。)

オンライン留学のメリット👍
・オンキャンパスと比較して学費が安い
世界中のどこからでも受講できるので、移住やビザの手続きが必要ない
自分の好きな時間に受講できるので、仕事や子育てと両立しやすい、今の仕事や環境を変えずに進学できる
・講義を見返せる&字幕が出るので、英語非ネイティブでもついていきやすい
オンライン留学のデメリット👎
・在学生や教授たちとのネットワーキングが難しい(不可能ではない)
・講義、課題、試験で構成される授業がメインで、研究ができる大学は少ない
・ビザは発行されないので、海外移住は考慮されていない

もちろんキャンパスでの人との出会いや現地での暮らしといった体験は、現地留学でしか得られないかけがえのないものです。しかし、現地留学を実現するためには、言語の壁や移住の壁、お金や仕事や家族の問題、といった様々なハードルを超えなければなりません。オンライン留学の素晴らしいところは、今の仕事や生活を大きく変えることなく、学問を学ぶ環境を手に入れられるところだと思います。「留学には興味あるけど現実的じゃないな」と諦めていた人の、新しい選択肢になっていくのではないかなと私は考えています。

出願に必要なものは?

ペンシルバニア大学に限らず多くのオンライン大学院は、筆記試験や面接はなく、出願に必要なものは書類だけです。書類さえ用意できれば誰でも出願することができます。出願に必要なものは多くの大学で共通していたので、参考になればと思います。

出願に必要なもの📄(ペンシルバニア大学MCITの場合)
・Personal Statement(志望動機などを説明するエッセイ)
・Resume(履歴書)
・推薦状(大学の先生や職場の上司など2〜3名からの推薦状)
・TOEFLスコア
・成績証明書、卒業証明書
・GPAスコア(卒業した大学の成績スコア)
・GMATまたはGREのスコア(アメリカの共通試験。なくてもOK)
詳細は大学HP

書類だけとはいえ、準備にはかなりの時間と労力を要しました。慣れない英語で書くPersonal Statementは特に時間がかかり、何度も構成から書き直し、ネイティブの知人に英語チェックしてもらうなどして校正をしました。ここだけの話ですが、AI翻訳サービスのDeepLにもとてもお世話になりました。(ほんと神!)

TOEFLのスコアアップにもかなり苦労しました。他の大学は80〜90点以上という基準が多い中、ペンシルバニア大学は100点以上推奨とかなりの高水準。久しぶりに英語を真剣に勉強し、4回目の受験にしてようやく基準の100点を超えることができました。最近は会場に行かずとも自宅受験ができるので、外出自粛期間では特に助かりました。

決意→出願→入学までのタイムライン

進学を決意してから実際に入学するまで、およそ1年を要しました。やったことを時系列でまとめてみました。これから出願する人の参考になれば嬉しいです。

2021年1月〜
志望校のリサーチ
勤務先の上司に進学の意思を伝え、休職の相談

2021年3月〜
出願書類の準備
TOEFL受験(1回目)
ペンシルバニア大学が公開するCourseraコースの修了

2021年4月〜
休職開始、出願準備に専念
TOEFL受験(2回目)

2021年5月
ペンシルバニア大学2021年秋入学プログラムに出願 → 不合格

2021年7月〜
出願書類のブラッシュアップ
TOEFL受験(3・4回目)
ペンシルバニア大学が公開するCourseraコースの修了

2021年8月
ペンシルバニア大学2022年春入学プログラムに出願 → 合格
ジョージア工科大学2022年春入学プログラムに出願 → 合格

2021年9月〜
ペンシルバニア大学入学手続き

2021年12月〜
履修登録

2022年1月〜
春学期授業スタート

上記でわかるように、ペンシルバニア大学には2度出願しています。1度目は不合格でした。世界中の出願者たちと戦うことの厳しさを目の当たりにして絶望的な気持ちになりましたが、ペンシルバニア大学には春入学と秋入学の年2回の入学タイミングがあるので、望みを託して次の出願にリベンジすることにしました。再出願に向けてエッセイや履歴書をブラッシュアップしたり、TOEFLのスコアアップを目指して英語の勉強をしたりしました。

また2度目の出願時には、ペンシルバニア大学1校だけでは不安だったので、ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)のコンピューターサイエンス修士課程(Online Master of Science in Computer Science、略してOMSCS)にも同時に出願しました。

結果的には、ペンシルバニア大学、ジョージア工科大学の2校に合格することができました。正直どちらも厳しいかなと思っていたので、通知を受け取ったときは言葉にならないほど嬉しかったです。どちらに行くか悩みましたが、コンピューターサイエンスについて学部レベルから学べるペンシルバニア大学のほうが自分のレベルに合っていると判断し、こちらへ進学することを決めました。

これから

決意から1年。いよいよ今月から春学期の授業がスタートします!まずは授業にしっかりついていけるように、頑張って取り組みたいと思います。

今後もオンライン留学の体験記をnoteに残していきたいと思います。書いてほしいテーマや質問があればぜひコメントやTwitter(@kubomi____)で教えてください。また、もし同じように日本からオンライン留学を考えている同士の方がいたら、ぜひつながりたいです。

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