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【就活】私が出版社にエントリーするのをやめた理由

先日就活が無事終わった。大学生になってからしばらく目指していた出版社は、ひとつも受けずに就活が終わった。でも私は、少しも後悔していない。

あらかじめ書いておくと、出版社を受けるのをやめたのは、決して出版業界が低迷しているとか、未来がないとか、激務とか、そんなことではない。むしろ私は紙の本が好きだし、未来を諦めていないし、なんならまだ可能性はあると信じている。

でもだからこそ、私は出版社を受けるのをやめたのだ。

小さい頃から本を読むのが好きで、文章を書くのも好きだった。小説みたいに新しい物語を作るのは得意ではなかったけど、読書感想文とか、日記とか、エッセイとか、自分の考えを文章で表すのが好きだった。

高校生の頃に大学の進路を含めて将来どんなことをやりたいかを考えたとき、漠然と「言葉に関わる仕事をしたい」と思った。ジャーナリスト?ライター?小説家?編集者?コピーライター?どんな職業があるかもまだあまりよくわかってなかったけど、言葉を使って人の心に響く何かを届けたいなと思っていた。

大学生になってからはぼんやりと出版社で働いてみたいなと思っていた。いろんな言葉に一番近い仕事ができると思っていたし、仕事を通してもっと自分の言葉を磨いてみたかったから。素敵な言葉にたくさん触れて、たくさん感動したかった。

そんな気持ちがどんどん募って、自分の言葉でどこまでできるか挑戦してみたくて、宣伝会議のある講座に通ってみた。半年間、毎週4時間言葉のプロのお話を聞いて、自分の書いた作品を添削してもらえる機会があるというもの。プロの話を聞けるのはもちろんだけど、それよりも自分の書いた作品をプロが添削してくれるのがとっても楽しみだった。

そのときに、800字の課題が出て書いたものがこちら。

テーマは「自分の好きな本をおすすめする800字」。本の推薦文として出された課題に、思いっきり自分の気持ちを押し出してしまったけど、なんとクラスで優秀賞をもらうことができた。受講生の人からもすごく良かったと言ってもらえることが多かった。自分としても全力を出し切った渾身の800字だったから、本当に本当に嬉しくて、やっぱり言葉に関わる仕事がしたい!って思った。

大学三年生の冬、ちょうど宣伝会議の半年の講座が終わる頃、ある先輩と就活の話をしていた。言葉が好きで、言葉に関わって生きていきたいこと。宣伝会議で書いた文章がいろんな人に良かったと言ってもらえたことが嬉しくて、これからも編集者として感動や喜びの感情も、悲しみや苦しみの感情も、言葉で伝えて伝わる瞬間をもっと作っていきたいこと。そんなことを話した。

「それって、本当に仕事でしかできないことなの?」

一通り話した後、ゆっくりと先輩が言った一言。どうゆうことですか?と聞き返すと、「やりたい気持ちはよくわかったし、どんなことをしたいのかもよくわかった。けど、それって仕事じゃなくてもやっていけるよね?」と。

言われてみれば、私は今確かにnoteで好きなことを好きなように書き続けているし、そもそも私が言葉に魅せられたのは、言葉は誰もが使えるツールだから。出版社にいなければ使えないツールではないはず。

このことに気付いてから、もう少し出版社で働くイメージを具体的にしてみた。OB訪問をしたり、調べたり。仕事をちゃんと知ってみて、考えれば考えるほど、私は出版社に勤めないほうがいい気がしてきた。

決定的だったのは、ある編集者さんが言っていたこと。

「編集をずっとやっていると、純粋な気持ちで作品を楽しめなくなってくる。けど、また別の視点で作品を楽しめるようになるんだけどね。」

編集を仕事にしているから言葉の微妙な間だったり、言い回しだったりが気になる。自分だったらこう編集する、って考える。そうゆう新しい楽しみ方が出てくるっていうお話だったんだけど、私は、今まで通りの楽しみ方をしたいなと思ってしまった。

純粋に言葉の海に溺れたい。

この気持ちがはっきりとしてしまって、私は出版社を受けるのをやめようと決意した。ずっと目指していた出版社を受けないという決断は正直すこし勇気が必要だったけど、このはっきりと意識してしまった気持ちを無視することはできなかった。

その後、自分が本当にやりたいことは何か考えて考えた時、私は人の喜怒哀楽をもっと増やしていきたい、と気付いた。みんなが素直に感情を出せている社会って、なんだかハッピーだなって。それを言葉で成し遂げられたらとっても最高だけど、そのツールは言葉に限定する必要はなかった。

そしてやっぱり、私は出版社を受けずに就活を終わらせた。就活が終わって落ち着いて考えてみても、私は私の選択が間違ってなかったと思う。今も私は楽しく言葉の海に溺れてられているし、これからも言葉の海に溺れていくんだろうなと、ワクワクしているから。

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