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総SE化されることで、IT企業に求められることとは

 昨日もノーコードに関するnoteを書きましたが、この日経の記事はまさにノーコード・ローコードの広がりがクローズアップされています。

 この記事ではお役所の取り組みが紹介されていますが、これが同じように民間企業にも広がりを見せた時に、我々IT企業はどのようになっていくのか?何を求められるのか?を少しだけ考えてみたいと思います。

 ※お役所の方が民間よりも遅れていると思われていますが、果たしてどうなのか?企業によって異なっていて、めちゃくちゃ進んでいる(意識が)企業もあれば、従来通りのベンダー丸投げ体質の企業もあります。割合はわかりませんが、肌感としてはまだまだ後者が多いと感じます。

記事概要

 この記事では神戸市役所の取り組みが紹介されています。

 DXは職員自らの手で!ということで、2016年ごろから全庁をあげて、多くの職場でITツールの活用やテック企業との連携に取り組んでいる。

 2017年には民間IT人材の活用を中核に据え、「ICT業務改革専門官(現デジタル化専門官)」というポストを新設した。専門官は
①各職場のDXの支援や技術指導 
②外部テック企業との橋渡し
③DXに向けた企画の提案

といった任務に就いているそうです。

 ノーコード・ローコードツールを活用して、職員が各現場で使いやすい・使いたい業務システムを手作りしている。デジタル専門官は現場職員からの相談にもとづいて、使うツールや作り方などを支援し、職員が自力でシステムを組み上げる。まさに総SE化と言える活動。

 これまでの役所系システムは、仕様書に従って、大手のシステム会社が構築することが多く、いわゆる丸投げ状態となり、使いづらいシステムが完成してしまうこともしばしばあった。そのために余計なコストや時間がかさみがちであった。

 神戸市役所では行政課題を一番良く知っている職員がシステムを組めるようになれば、素早く使いやすい市民サービスへとつながる、ということで前述の職員総SE化が進んでいる。

 このコロナ禍でその成果は発揮された。その中でも「健康相談チャットボット」「10万円の定額給付金の申請状況に関する自動確認サービス」だ。

 チャットボットは5月には1日500回も利用され、確認サービスは、コールセンターへの相談件数がピーク時1日4万件だったのが、導入後は1日3,000件にまで激減したようだ。

IT企業に求められることは何だろう

 上記2つの取り組み事例は素晴らしいです。いや、凄い!同じようなことをIT企業に発注し、従来のようなプロジェクトの進め方を行っていたら、何カ月と何百万円もかかっていたことと思います。(最近ではチャットボットも大分安く早くなってきていますけどね)

 また、上記のようなシステムは瞬間的には必要になってくるのですが、恒久的に必要なものではないので、わざわざ発注してつくっていては割に合わないシステムです。そこを見事に解決することができたのが、職員総SE化というわけです。

 このような総SE化・IT人材化やノーコード・ローコードが普及するにつれて、IT企業の仕事が奪われてしまい、どこを飯の種にするのか?その一つの答えとしてシステム開発における上流工程や設計工程の支援が、これからIT企業は飯の種にしていくべきだ、とこれまでも何度かnoteで書いてきました。

 しかし本当にそうなのでしょうか。仕事は奪われて無くなるのでしょうか?今回の神戸市役所の取り組み事例を読んでいてもそうなのですが、基本的にはSoR領域にあるデータを上手く使い、SoE領域での取り組みとなります。SoR/SoE、一時期バズっていたワードですが、まさにユーザ企業とIT企業の仕事分担はここの境界線で分けられてくるのではないかと思っています。今回、SoR/SoEの説明は割愛します。以下リンクを参照ください。

 つまり、IT企業の従来型の仕事の種は減るものの、これまでと変わることなく一定の需要はあり続けるのではないかと思っています。SoR/SoEがバズっていた頃に、SoRは仕事としての価値が低くレッドオーシャン、SoEこそがブルーオーシャンであってより付加価値の高い仕事。だからIT企業もユーザ企業も積極的にSoEに取り組みましょう!といった感じで取り扱われてきましたが、私はそうとは思いません。

 確かにSoEは言葉の通り、顧客とのエンゲージメントを高めるためのものであり、その企業の売上や顧客満足度等に直結してくるので、必須な取り組みでありシステムであると思います。

 ですがSoRは本当にレコード(記録)していくだけの仕組みなのでしょうか?入れることもあれば、それを取り出すこともあるのです。さらに言うと何を、どのように、いつ、どこに、誰に対して取り出すのか?を考えた時に、データがきちんと正しい形で保管されていることが大前提となります。

 例えば神戸市役所の取り組み事例である「10万円の定額給付金の申請状況に関する自動確認サービス」についても、上述した5W1H(Whyが入ってませんが・・)の問い合わせ先は、SoRである神戸市役所の給付金管理システムのデータになります。SoRがきちんとしていないと、SoEなんて出来ないということが良く分かるかと思います。

 これまではどちらかと言うと、きちんと保管できることに重きが置かれて開発されてきたSoRですが、これからは保管庫から上手く取り出せるように開発することが求められます。つまりは、SoEで使われ易いシステムということです。

結局どうなるのか

 5年10年という未来を見た時には、従来のIT企業に求められていた役割はあまり変わらない気がしていますが、上述した通りSoE領域との繋がりを意識した開発が求められます。取り出し易さ、です。

 ですが、もう少し遠くの未来20年、30年後にはIT企業(旧来の)は滅んでいる可能性が高いです。ITはより高度で賢いものとなり、それを使いこなせる人も今よりもずっと増えます。さらに、ノーコード・ローコードの上を行くようなユーザフレンドリーなサービスも登場してきます。そうなると、よっぽどのエンタープライズな領域でないと、まともな利益が確保ができなくなるので、一部を除いては衰退していくのだと思っています。

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