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資料を作り込む前に、すべきこと/佐藤芽衣 さんの記事に触発されて

佐藤芽衣さんが、仕事でひんぱんに資料を作る人向け、それも特にまだ経験の浅い人向けに、本音ベースですごく役に立つ記事を投稿なさっています。
私は、研修企業で、お客様と先輩講師向けに様々な教材と資料を提出してきました。その経験から、佐藤さんの記事には納得しか、ありません。ただ、元研修講師としての職業病で、私の経験から若干の補足をさせていただきます。

佐藤さんの記事はこちら


 佐藤さんの記事のご主旨は、資料作成は

自分の完全主義で作り込まず、依頼者が気が変わっても柔軟に対処できるよう、ステップ・バイ・ステップで進めるべし

ということだと理解し、以下、それについて、私の研修企業での経験を綴っていきます。

1.6割が「ちゃぶ台返し」されても耐えられる限界線


佐藤さんは

6割ぐらいで作成途中であることを言いわけして見せる

佐藤さん記事から引用/太字化は楠瀬

とおっしゃっています。6割で見せるのは、自分が余計な苦労をしないための必須のステップです。

 お客様・上司は、心のどこかでは「取引先と部下は、自分の痒いところを全部掻いてくれるもの」と思っています。
 ですから、はじめにお客様・上司が出してくる要望は盛り沢山で「むちゃぶり」なものだと思ってください
 佐藤さんは、次のようにおっしゃっています。

上司や社長のむちゃぶり単なる衝動的な思いつきのざっくりとしたオーダーに応えるのも会社員の務め、それこそが会社員の仕事である。

佐藤さんの記事から引用/太字化は楠瀬

 その過剰な要望を現実的に可能なレベルに収拾するのは、お客様と上司の仕事ではなく、私たちの仕事です。

 そのために6割段階の資料を見せて、その方向性でよいかどうか、お客様・上司の腹の意向を確認するのです。私の経験では、6割は、お客様・上司に「ちゃぶ台返し」されても心折れず、時間も押しすぎずに対処できるギリギリのラインです。

 もし、時間に余裕があるなら。自分の中で大枠のアイディアがまとまった段階で、それとお客様・上司の意向を擦り合わせておくことをお勧めします。

 私が可能なら実行していたのは、アイディア・メモです。A41枚のメモまたはA4のパワポ・スライド1枚で、「こんな資料をつくるつもり」という概観を提示して、お客様・上司と擦り合わせるのです。

 これをやっておくと、お客様・上司に「ちゃぶ台返し」されるリスクが、多少なりと軽減されます。とはいえ、決して100パーセントではなしので、常に「ちゃぶ台返し」の危険を織り込んで仕事の計画を立てることが大事です。

2.7割~8割の出来で、仕上がったふりして出す

 
 ここは佐藤さんは触れていらっしゃいませんが、私は自分からみて7~8割の出来で、仕上がった振りして提出してしまうのが余計な苦労を避けるコツだと思っています。

 私の経験では、7割~8割まで仕上げた段階で、あと2~3割が必要と思っている内容は、私自身の完全主義からくるもので、お客様・上司は必ずしも望んでいなかったり、あるいは、お客様・上司が本当に望んでいることは別のところにあったりしたものです。

 もし、7~8割でそのまま通ったとしたら、そのレベルでお客様・上司の要望が十分に満足されたということで、資料作成者としては、それを誇りに思いこそすれ、恥じる必要はまったくありません。「ラッキー!」と
 佐藤さんは

ボツになるのも採用されるのも、上司が勝手に決めること

佐藤さんの記事から引用/太字化は楠瀬

 とおっしゃっています。実に、その通りです。自分の個人的な完全主義にハマらないこと。資料作成に限らず、仕事全般に通じる鉄則だと思います。

3.それでも、落とし穴は待っている

 
 とても残念なことですが、1と2をきちんと実践しても、まだ落とし穴が待っています。それは、〆切が近づいてお客様・上司がそれまでと違う目で資料を見はじめることがあるからです。こうなる原因は、だいたい、次の2つです。

1.それまでは真剣に見ていなかった。

2.細部を気にするようになった。

 1は、(アイディア)⇒たたき台⇒仕上げ と積み重ねてきたこちらにとっては《言語道断横断歩道》な話ですが、現実にはよ~くあります。特に、忙しいお客様と上司にありがちです。

 人間は、忙しいと目の前の緊急案件に気を取られて、時間に余裕がある(と、自分では思っている)案件を後回しにするものです。まとまった資料で〆切が先にあるものは、後回し対象になりやすいのです。

 2のケースでは、お客様と上司はそれまでに真剣に資料を検討している場合がほとんどです。その上で、お客様と上司が最後の土壇場で完全主義になることで起こる事態です。
 お客様にはそのお客様、上司にはその上司がいます。私たちが提出する資料を、お客様と上司が自らのお客様・上司向けに説明する場合が多いのです。
 すると何が起こるかというと、自分のお客様と上司から突っ込まれても大丈夫なように細部まで万全を期したくなるのです。
 ですから、このケースでは、「てにをは」に類することで訂正が頻発するようになります。ここで対応を誤ると、全面やり直しという恐怖の事態に陥る可能性が、案外あるのです。

 佐藤さんが次のようにおっしゃっているのは、まさにこの部分だと思います。

時間をかければかけるほどよくなるかもしれないが、時間コストを見越して指示を出してほしいと思う。

佐藤さんの記事から引用

 では、私たちはこの最後の落とし穴にどう対処したらよいのでしょう?
次の2つが基本の対処法です。

A. お客様・上司の性格と今の状況をよく観察しリスクを予知する。

B. 最後に「てにをは」の直しをさせられることを覚悟しておく。

C .   最終版を提出するタイミングを見計らう。

 Aは、そのお客様・上司と付き合いが長くないと難しいのですが、「先送りしやすい性格かどうか?」、「先送りが起きそうな忙しさにあるかどうか」をよく観察していると、少なくも心の準備は可能になります。

 「なんだ、心の準備程度か」と思われるかもしれませんが、心の準備があるとないとでは、大違いです。少なくともパニックするのを免れやすくなるし、自分でスケジュールをコントロールできる場合は、非常事態対応時間を見込んでおくこともできます。 

 Bの効果は、Aの場合と同じで、心の準備ができることです。非常事態対応時間を見込めることも同じです。

 Cは、ものすご~くハイリスクな離れ業です。お客様・上司が要望を出してくる余裕がないくらいのギリギリに最終版を提出するという手です。
 ただ、この手は、その場で通用したとしてもお客様・上司の怒りや不信を招くので、中長期では、間違いなく損します。よほど気心の知れた上司に対してだけ使う最後の手段として、頭の片隅に置いておく程度が無難だと思います。

 以上、さんのエッセイに触発されてつらつらと述べてきましたが、ポイントは、自分の仕事の手綱を自分で握れるために工夫を凝らすということだと思います。

 ここまでお付き合いただき、ありがとうございました。

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