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スタートアップでの経験と名著「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」から学ぶ、チームの成果の出し方 【採用面談編】

こんにちは、高石(@ksk_taka)です。

ビットキーというスタートアップでファームウェア開発チームの責任者をやらせてもらってます

自己紹介毎回書くと鬱陶しいのでそこは1記事目に譲ります。

今回の記事では、HIGH OUTPUT MANAGEMENT 第4部における「採用面談(面接)」ついて記載していこうと思います。

【このnoteの対象読者】

この記事では、以下のような方を読者として想定しています。

・採用に関わり始めたが,面談でどうやって採用候補者の価値を見極めれば良いのかわからない人
・採用活動をしているが、うまく行っていない人
・採用活動の難しさを理解したい人

では早速行きましょう。

4.選手たち   〜ピープルマネジメント:採用・評価。それぞれの面談プロセスでマネージャが成すべきこと〜

※~~内の副題は高石が勝手に命名

一つ前の記事にも書きましたが、本書の第4部には「採用面談」「評価面談」の他、メンバーのアウトプット向上に向けた「メンバーの教育」「メンバーが働く動機付け」などの方法論や、「退職を告げられた時にマネージャーがすること」などについても記載されています。

その中で、今回僕が書評としてフォーカスを当てているのは「面談」についてです。

本書の中には、以下それぞれの面談についての記載があります。

①.今後、一緒に働くことになりうる人に対する採用面談今回の記事
②.今現在、一緒に働いている人に対する評価面談前回の記事
③.今後、今の職を離れてしまう人に対する面談(高石の書評では除外)

①.今後、一緒に働くことになりうる人に対する採用面談

前回の記事(評価面談編)では「今一緒に働いている人」に対してフォーカスを当てましたが、今回は「これから採用する可能性のある人」に対してです。

著者は、評価面談について「人事考課は非常に難しく・・・」と語っていたことは前回記事にも記載しましたが、今回の記事では採用面談について以下の様に語っています。

われわれは、密接な関係を持ち、一緒に仕事をしていながらも部下の過去の業績を査定することがいかに困難であるかを知っている。それどころかここでは、我々は誰かを前に座らせて、まったく新しい環境でどんな業務遂行活動をしそうかを一時間で発見しようとするわけだ。もし人事考課が困難だと言うなら、面接などはほとんど不可能に近いとすらいえる。しかし、実際のところわれわれマネージャーは、どんなにそれが困難であっても面接する以外に選択の余地がない。ただし、失敗の危険性が高いことは認識すべきだろう。(300p)

要するに「一緒に働いている人への評価面談ですら難しいんだから、まだ一緒に働いたことのない採用面談なんて一定以上の確率で失敗するに決まってんでしょ!」ということです。

個人的には、これはマネージャだけでなく全てのメンバーに理解してもらえると嬉しい内容です。

評価面談において「ちゃんと自分を評価してほしい」と考える人や、会社としての採用活動に対して「ちゃんとチームの足りない部分を埋める採用してほしい」と感じている人など。そう思いたくなる気持ちは重々承知しつつ、「それがなかなかうまく行かない・できない」と頭を悩ませているマネージャは世の中に沢山いるはずです。

著者の記載でも、以下の様な記載があります。

数年前、私はインテル社の高い地位への候補者としてある人を面接した。私は細心の注意を払ってできるかぎり徹底した面接を行った。そして、その人のスキル、過去の実績、価値観などのよってきたるところについて非常に良い感職を得たと思い、彼を採用した。彼は初日からまったくだめだった。以来、私は謙虚になって面接の内容をノートに取り、相手の紹介先と会話を交わすことにした。今日にいたるまで、私はその候補者の相当な欠点をなぜ見抜けなかったのか、皆目わからない。注意深く行った面接でも何も保証するものではないのだ。それは単に面接官の運の良さを少し強めるだけであるということを最後に言っておきたい。(307p)

どれだけ努力してもうまく行かないことがある、というのが事実というのが著者の主張です。採用活動に全力を尽くしても、「結果として採用した人が活躍できなかった」ということはどんな会社でも起こりうるのだということを主張したいのだと思います。

とはいえ、「失敗の危険性が高い」から「努力しない」のではなく、「失敗の危険性が高いからこそ、少ない成功率を可能な限り上げる様、全てのマネージャー・採用担当者は全力で努力すべき」というのが筆者の主張であると僕は受け取っています。

その為に、採用面談ではどのようなことをすべきでしょうか。著者の考えについて以下に詳細に記載していきます。

■採用面談中に聞くべきこと

筆者は、採用面談について以下の様に記述しています。

面接の最終目的は、志望者が会社の環境の中でいかに行動し業績をあげられるかを判断することである。これが、考課に関して強調した原則、つまり「可能性の罠」にはまるなということとは相容れないところである。人を採用しようとするときには、その貢献できる可能性を判断しなければならない。あなたが使える1時間かそこらで持って、以前の雇用環境と新しい雇用環境とを相互に見比べ、当人の過去の実績の説明に基づき、新しい環境では新しい環境では志望者は将来どのような業績を達成するのかを予想しなければならない。マネージャとしてこの仕事は非常に間違いやすく、リスクの高いものだが、不幸にも避けては通れないものである。(304-305p)

我々マネージャは「その人の今までの実績」ではなく「今後我々に与えてくれるであろう実績の予測値・可能性」から採用のOK/NGを判断しなければならず、「そこが最も難しい点である」というのが著者の主張です。これについては僕自身も100%同意です。

そして、マネージャがどうにかしてその面接を成功させる為の手段として、筆者は採用候補者に対して以下の4つの観点を聞くと良い、と記述しています。

・技術/技能
・知識を使って何をしたか
・差異
・仕事上の価値観

一つずつ記載していきます。

・技術/技能

これは、「採用候補者がどのような技術的知識を身に着けているか」という点をよく知るべきである、ということを指しています。

ここでいう「技術知識」について、著者は以下の様に定義しています。

工学的または科学的知識ではなく、希望している仕事の達成について、すなわち技能(スキル)水準について相手が何を知っているかである。経理担当者にとっては技術的スキルとは会計業務を知っていることであり、税理士にとっては、税法である。保険統計数理氏にとっては、統計がわかり、保険数理表が使いこなせることである(303p)

要するに、「採用候補者が『就きたい』と思っている職種についてどのような専門知識を身に着けているか」ということだと僕は理解しています。

これは、「今マネージャ自身が所属しているチームの業務領域」によって大きく質問内容が異なってくる点だと思います。自身のチームにおける技術リーダーやメンバーたちとよく協議し、「どの領域が不足しているか」「どんな専門知識を持っていればいいのか」という点を認識合わせできれば良いのだと思います。

・知識を使って何をしたか

当然のことながら、「技術/技能」を持っていたところで、それを活かすことができなければ成果には繋がりません。

ここについて著者は以下のように記述しています。

過去の仕事で、どのような技能(スキル)と技術知識を「使って」仕事を達成したかである。いいかえれば、志望者が単に知っているだけでなく、知っていることを使って何を「してきた」かである。(303p)

また、この観点での質問として、以下の様なことを聞けばいい、との記述もあります。

・過去の達成事項
・過去の失敗事項
(303p)

僕自身も、特に採用候補者の方の「過去に大失敗した事例」について採用面談中に聞くことが多いです。多分、ほとんど毎回聞いているんじゃないかな。

失敗の要因は何だったのか。自身に何の知識が足りなかったのか。防ぐ手段はあったのか。その自分なりに振り返り、何を学び、次に繋げようとする意思を持っているのか。

上記の様なことを自分なりの言葉でロジカルに答えられる人は「優秀だなぁ」と思うことが多いです。

あと、採用候補者の方は「成功」は積極的に伝えたい気持ちがある一方で、「失敗」はなかなか素直に伝えづらいんじゃないか、という推測もあります(僕自身がそうなので)

その「自分自身が関わった失敗」について、「失敗に対して素直に向き合い、次回以降の改善に繋げるためにはどうすればいいかを真摯に考えられる人」、そんな人と一緒に働ければ良いなと思っています。

・差異

こちらは「技術/技能」と「知識を使って何をしたか」の2つから導かれる観点です。著者の定義は以下の通り。

知っていたこととしたこと、つまり能力と実績との間にいかなる「差異」があったか、その理由を探すことである(303p)

一つ上の「知識を使って何をしたか」の項目で「過去の失敗事項」について記載しましたが、その内容がこの「差異」に繋がってきます。

「何が足りなかったから失敗したのか」について、自分なりの考察をしているかどうか。また、その考察を日々の行動に反映しているのかどうか。このあたりを採用面談の中で深堀りしていくと、その人がどんな人なのかがおぼろげに見えて来るように感じています。

・仕事上の価値観

最後となる4つ目の観点は、上で挙げた3つとは少し異なったものです。前述の3つの観点では「何故この人が、特定の専門領域において活躍ができるのか」に主眼を置いているのに対し、4つ目の「仕事上の価値観」という観点では「そもそも自社にマッチするのかどうか」ということを見極めることを目的としているからです。能力面もそうですが、主に「人柄」について主眼をおいた観点であると僕は認識しています。

著者は以下のように記述しています。

一連の「仕事をする上での価値観」、つまり、仕事の面で当人を導いているものをつかむことである。(303p)

この「面談相手が持っている仕事上の価値観」が「如何に自社とマッチするのか」ということを判断するのが、採用面談の中でも特に難しいものだと僕個人は感じています。

僕が「難しい」と考える理由は以下となります。

・「採用候補者自身の価値観」というもの自体が定まりきっていないことが多い
・面談をする担当者(マネージャ)自身が「会社が持つ価値観」を言語化しきれていないことが多い
・(仮に採用候補者が高石の様な気分の上下がある場合)「採用候補者自身の価値観」自体が面談のタイミングによって変わることがある

実際、僕は採用面談の中で「仕事に求めるものはなにか?」「会社に求めるものはなにか?」「所属するチームに求めるものはなにか?」など、色々な角度から質問を投げ掛けるようにしています。ただ、このあたりの質問に的確に答えるには「理想的な仕事の仕方」「理想的な会社」「理想的なチーム」といったものが言語化できていなければいけません。

もちろん質問を投げかける僕自身についても、上記のことがしっかりと言語化できていないといけません。仮に言語化できていたとて、それが相手に伝わり切るかどうかも相手によって変わってきます。

こういった、様々な観点における見極めを30分や1時間という限られた時間の中でこなさなければならない採用面談は、「正解はないし、失敗してしまう可能性が高いものだが、必ずマネージャがこなさなければならない仕事」として非常に重要な位置づけであり、長期に渡って向き合い続けなければいけない課題であると思っています。

終わりに

さて、ひとまずこの記事にてHIGH OUTPUT MANAGEMENTに関する書評は終わりとします。全部で3つの記事でこの本から学んだことを書いてきましたが、実際にはまだまだ価値ある内容が沢山書かれています。

マネージャーとして働き始めた人、今後マネージャになりたい人、マネージャがどんな視点を持って働いているのか知りたい人など、色んな人に価値ある内容が詰まっている本だと改めて感じています。

今後マネージャとして成長するにつれて、今回取り上げた内容以外についても書評を書くタイミングが来るかもしれません。何度も読み返しながら、日々成長していきたいと思います。

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