テレビドラマは常に1966年生まれ世代に向けて作られてきた???
テレビドラマってずっと同じ世代に向けて作ってない?
今でこそ日本のテレビドラマを全く見なくなってしまった私ですが、昔は三度の飯よりテレビドラマが大好きな子どもでした。(そのわりには、このブログではテレビドラマの話は全然していなかったけど……)
当時は朝起きるとまずテレビ欄を見て「今日はどんなドラマが放送されるのかあ~」とワクワクしたものです。特に、楽しみにしていたのがお昼のドラマの再放送。再放送で昔のドラマを見ては、こんな面白いドラマがあったんだ……とびっくりしてはのめり込んでいたのです。
そんな日々を過ごしていた子ども時代、私はあることに気付いてしまいました、それは……
「テレビドラマってずっと同じ世代の人たちに向けて作ってない???」
ということです。そしてその世代こそ、私はタイトルにも書いてある1966年生まれの人たちだと思うのです。
このことに気付いたときは結構興奮して大発見だ……なんて思っていたのですが、大学生時代に全く同じことを言っている記事を見つけてしまい、別に特別な発見じゃなかったんだな……と落ち込んだのも覚えています。
そんな1966年生まれですが、改めて見てみると心底ずーーーーっと良い思いをしているのです。
なので、ここは羨ましい!!!という強い思いを胸に彼らの身になってテレビドラマ史を振り返ってみたいなと思います。
0才 テレビエイジ誕生
さあ、1969年です。皆さん生まれましたね。東大の安田講堂が占拠されて東大受験が中止となり、アポロが月面着陸をした1969年です。もちろん当時はまだテレビドラマを見れる年齢ではありません。
6才『ありがとう』(1972) TBS
8才『寺内貫太郎一家』(1974) TBS
6才になったあたりで歴史上最も視聴率の高い民放のテレビドラマと出会うことになります。『ありがとう』というホームドラマです。視聴率は57.3%という異次元の世界。心温まる物語で日本中から愛されました。
そうなんです……この時代の日本のテレビドラマはTBSのホームドラマが全盛期。久世光彦とか石井ふく子らがプロデュースする作品がとにかく面白かった時代で、『時間ですよ。』『肝っ玉母さん』などたくさんの名作ホームドラマが放送されていました。
そして彼らが小学校に上がった1974年にも『寺内貫太郎一家』というドラマが大ヒットします。視聴率は31.3%とこちらもやばい。このドラマは脚本を読んだことがあるのでなんとなく知っているのですが、主人公の一家は大家族でいろんなドタバタがあるけど最後は親父がちゃぶ台ひっくり返して大団円……みたいなお話ですごく面白いんですよね。
幼少時代の彼らは、こんな歴史的なホームドラマの名作と共に家族団らんの日々を過ごしてきたのかと思うと……ああ、なんとも羨ましい!!!!
10才『赤い疑惑』(1976) TBS
1976年になりました。彼らもついに10代です。この年になってくると自我も出てきてもう親と一緒にホームドラマなんか見ていられません。
そんなとき流行していたのが”赤いシリーズ”と呼ばれる山口百恵や三浦友和が出演していた一連のテレビドラマシリーズでした。取り上げている『赤い疑惑』については視聴率は30.9%、大ヒットですね。
このシリーズではヒロインの身にとにかく悲劇が立て続けに起こります。白血病にかかってしまったり、病院で出会った医大生と恋に落ちたとしても、その医大生は異母兄弟だったということがわかったり……とこんなことが次々と起こります。
年齢もそんなに離れていない山口百恵に襲い掛かる荒唐無稽な悲恋物語に、10代なりたての彼ら・彼女たちは夢中になっていたのです。
12才『Gメン’75』(1978) TBS
13才『太陽にほえろ!』(1979) 日テレ
彼らが小学生高学年の頃に、人気だったドラマと言えば『Gメン'75』もありました。視聴率は32.2%。
これはアクション刑事ドラマとされるような作品で、Gメン75とは難事件や凶悪犯罪を捜査する架空のエリート集団のこと。画期的なハードボイルド路線の刑事ドラマで、クールなこの作品はとにかくかっこよくて10代の彼らを魅了しました。
『太陽にほえろ!』同じく刑事ドラマですがこちらも大人気。1979年のときに最高視聴率40%を記録します。映画会社の東宝が制作していてとにかくキャストが石原軍団でカッコイイのです。(とかいいつつ、ごめんなさい。さすがにこのあたりの作品は見てないです……)
とはいえ、小学校高学年の時期にドンピシャでアクション刑事ドラマの今も名の残るド名作と出会えた彼らのことを本気で羨ましいと思うんですよ!
13才『3年B組金八先生』TBS『熱中時代』(1979)日テレ
ウォークマンがはじめて発売された1979年、彼らもついに中学生です。そのとき流行っていたのがこの2つの学園ドラマでした。
中学校を舞台とした『3年B組金八先生』は視聴率39.9%、小学校を舞台とした『熱中時代』は視聴率40.0%とどちらも大ヒット。名前を知らない人はいない学園ドラマの金字塔です。
この2つの学園ドラマの特徴はまさに”リアリティ”。エピソードの1つ1つがとにかくリアルで等身大なんですよね。(今の学園ドラマを知っているとマジで等身大な内容すぎて、悪く言えば地味で、本当にヒットしたの?という気持ちになります。でもいいドラマです。)
当時彼らは13才です。小学生の記憶もまだ鮮明で中学校にまさに通っているというこれ以上ないジャストなタイミングで、この日本の二大学園ドラマに出会えるというのはさすがに運が良すぎるのでは????と思わざるをえないんですよ!!!
17才『スチュワーデス物語』 TBS(1983)
18才『スクール☆ウォーズ』 TBS(1984)
スターウォーズの新作にスピルバーグの新作もあって、かと思えばマイケルジャクソンの新曲に……とにかく洋画・洋楽が絶頂を迎えていた1980年代前半、高校時代を迎えることになります。高校生になった彼らにとって、日本のテレビドラマはおっさん臭くてあんまり興味がないよ……というのが正直な感想でした。
そんななかでもヒットを飛ばしたのがいわゆる大映ドラマ。19才の堀ちえみがスチュワーデスになって頑張るさまをJAL全面協力の圧倒的リアリティで描いた『スチュワーデス物語』は同世代の彼らにぴったりはまって視聴率は26.8%。
落ちこぼれラグビー部が全国優勝するまでの伏見工業高校での実話を描いた『スクール☆ウォーズ』もまさに同世代の話なのでそれなりにヒットし、視聴率は21.8%を記録しました。
とはいえ視聴率は20%代、当時日本のテレビドラマは完全に冬の時代を迎えていましたのです。。。
20才『男女7人夏物語』(1986) TBS
22才『抱きしめたい!』(1988) フジ
1986年に彼らは成人を迎えることになりました。世はバブル景気真っ盛り。ガンガン上がる地価と財テクブームに浮かれに浮かれた時代を彼らは大学生として過ごすことになります。
そんな時代に流行ったのがいわゆるトレンディドラマです。トレンディドラマの特徴はダイレクトに物欲に訴えかけてくるところでした。
とにかく、お洒落な場所、お洒落な服、お洒落な小物がバンバン出してくるのがトレンディドラマのやり口。登場人物はいかにもイケてる風の仕事についている社会人なのに、働いている様子はありません。とにかくナンパして女と電話して酒を飲んで寝て、そんな様子ばかりが描かれました。
こう考えるとトレンディドラマというのはまさに大学生のためのテレビドラマといっても過言ではないのです。現に当時の大学生はトレンディドラマをとにかく真似しました。『男女7人夏物語』にはブーツグラスでビールを飲むシーンがチャーミングに描かれるのですが、当時はみんな真似したそうです。
『男女7人夏物語』は視聴率31.7%を記録、『抱きしめたい!』は視聴率21.8%を記録しました。
それにしても、大学生時代にドンピシャでトレンディドラマが流行るとか、あまりに出来過ぎですよ!!!羨ましい……。
25才『東京ラブストーリー』(1991) フジ
26才『愛という名のもとに』(1992) フジ
さて、いつまでも浮かれ気分は続くことはなく、1991年にバブル経済は崩壊してしまい、長く続く不景気に突入してしまいます。そんな時代、就職したばかりだった彼らを惹きつけたのは等身大の若手サラリーマンのちょっと辛口な物語でした。
『東京ラブストーリー』はその代表的な作品と言っても過言ではありません。登場人物はみんな24才の若手社員、赤名リカというスポーツ用品メーカーの社員が同じ職場で同い年の同僚カンチを一途に思い続けるという話です。カンチがさとみちゃんという幼馴染に惹かれていることに気付きつつも、それでも負けずカンチを一途に思い続けアクションを取り続けるリカの健気さに全国民が感情移入し、その悲恋に泣いたのでした……。
東京ラブストーリーはトレンディドラマのようなキラキラした職業のキラキラした仕事の話ではありません。彼らは等身大のどこにでもいる冴えないサラリーマンとして描かれました。そして等身大の彼らに全力で感情移入して夢中になったのです。視聴率は32.3%でした。
『愛という名のもとに』も同じく等身大の若手サラリーマンを描いた1992年の作品で、視聴率32.6%を記録する大ヒットとなります。
同じ大学のボート部でイツメンだった部員たちが就職3年後、恩師の葬式をきっかけに再会、それぞれが抱えている悩み・苦しみに直面するという話。就職3年後なのでこちらも全く彼らの同世代である25才くらいの超若手サラリーマンの物語でした。
唐沢寿明と江口洋介が鈴木保奈美を取り合ったりするようないかにもな恋愛模様も描かれますが、基本的には切実な展開が続くのがこの作品の特徴。証券会社に勤めていたチョロという同級生が営業成績が上がらず自殺するシーンは日本全国に衝撃を与えました。(2024年に見る作品かと言われると難しいですが……)
おわかりの通りびっくりするほど登場人物の年齢が彼らと一致するのがこの時代。特に東京ラブストーリーを25才でリアルタイムで見るなんて羨ましすぎません????最高の視聴体験だと思うのです。
28才『29歳のクリスマス』(1994) フジ
30才『ロングバケーション』(1996) フジ
世の中がオウム真理教の疑惑に揺れていたこの時代、彼らもいよいよアラサーと呼ばれる年齢になってしまいます。そんな時代に流行ったのが『29歳のクリスマス』と『ロングバケーション』でした。『29歳のクリスマス』は視聴率26.9%、『ロングバケーション』にいたっては36.7%と特大の社会現象を巻き起こします。
この2つの作品の特徴と言えば、主演が山口智子であること。そしてどちらもとにかくツイていないアラサー女性が主人公だということです。
『29歳のクリスマス』では29歳の誕生日に円形脱毛症になってしまい、仕事も左遷させられ、彼氏にフラれるというところからはじまります。
『ロングバケーション』も同様で、結婚式当日に花婿に逃げられてしまったうえに、財産は全て持っていかれて一文無し。さらにはほそぼそと続けていたモデルの仕事も解雇させられてしまう。そしてすでに32歳。
そう。どちらもとにかくツイていない。ツイていないんだけども、もうすでにアラサーでもはや取り返しのつかないんじゃないか……という絶望を抱えながらも、、、それで終わらないのがこのドラマなんです……。
そんな死にたくなるような状況でもたくましく幸せになることを願い、それだけでなく他人の幸せも願い、決して信念は絶対に曲げずに自分を強く持ち、絶対に幸せをつかみ取る。
彼ら・彼女たちはそんな山口智子の姿に共感を覚えて感銘を受けていたのです……。本当に今見ても色あせない名作なんです……。にしても世代ドンピシャすぎないか……。アラサーのドラマをアラサーで見れるなんて……。
35才『大好き五つ子』(2001) TBS
38才『牡丹と薔薇』(2004) フジ
さて、そんな彼らも多くの人が結婚し子供を持つ世代となります。28才で出産していたとしたら2001年で7才。ようやっと小学校に入ってくれるという年でしょうか。そんな年に流行ったのが『大好き五つ子』でした。
1999年に放送が開始された『大好き五つ子』は、2001年視聴率15.8%を記録します。知らない人にあえて教えると、このドラマの放送時間は昼の13時からでした。そう考えるとこの視聴率は驚異的です。私も『大好き五つ子』は大好きで、夏休み絶対に見てました。。。色々苦労するんですけど良い家族なんですよ。。。
さて、昼のドラマといえばもう一つこの時代に流行ったのがありましたね。そうです。『牡丹と薔薇』です。ドロドロの昼ドラと言えばこれ!って感じがしますよね。「役立たずのブタ!」という台詞や、「牛革の財布ステーキ」という衝撃的な食事が話題となりました。
このドラマも母親と一緒によくわからないなりに……見てたなと懐かしく思います。
35才『HERO』(2001) フジ
37才『白い巨塔』(2003) フジ
どうやら30代も後半になると恋愛ドラマに興味を失ってしまったのか、恋愛ドラマで視聴率30%を超える作品がめっきりなくなってしまったのが21世紀という時代。そんな時代に視聴率30%を超える大ヒットを飛ばしたのがこの2つのお仕事ドラマでした。
『白い巨塔』は何度も映像化されている山崎豊子の名作ですが、主役の2人を演じたのが江口洋介と唐沢寿明というのが象徴的です。1992年に『愛という名のもとに』で鈴木保奈美を取り合った2人が、『白い巨塔』では大学病院で医療倫理をバチバチにぶつけあい、権謀術数をめぐらすのですから。
39才『ごくせん2』(2005年) 日テレ
39才『花より男子』(2005年) TBS
28才に子どもを産んでいたとしたら11才になるという2005年。親がテレビドラマ大好き人間であれば当然、その子も一緒に見るようになります。そんなテレビドラマ大好き家族が家族そろって夢中になったのがこの時代の学園ドラマでした。
『ごくせん』の視聴率は32.5%、『花より男子』もリターンズでは27.6%を記録、どちらも大ヒットします。
2005年を機にいっきに日本のテレビドラマは学園ドラマブームが沸きに沸きます。2006年には『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』がヒットし、2007年には『花ざかりの君たちへ~イケメンパラダイス~』『山田太郎ものがたり』がヒットします。
よって、テレビエイジの子ども世代も結構テレビドラマ好きが多いはずなんですよね。そして私も完全にこの世代です。
42才『Around40~注文の多いオンナたち~』(2008) TBS
46才『最後から2番目の恋』(2012) フジ
49才『あさが来た』NHK
さて、40代に突入しました。この時期も見事に狙い撃ちされている作品がそれなりにヒットします。『Around 40~注文の多いオンナたち~』が視聴率15.7%でそれなりにヒットし、40代女性の恋愛を描いた『最後から二番目の恋』も14.0%と健闘しました。
とはいえ、この時代になると視聴率を取るテレビドラマって全然少なくなってきます。『家政婦のミタ』や『半沢直樹』というような特段世代感のない奇跡的なメガヒット作品を除くと、朝ドラか刑事ドラマくらいしかヒットしなくなってしまいました。
『あさが来た』は2015年の作品ですが、視聴率は27.0%。テレビエイジがハマった最後の日本のテレビドラマかもしれません……。
さいごに
ここまでいかに日本のテレビドラマが1966年生まれ向けに作られてきたかを見てきました。わたしが個人的に気になるのは私と同世代のテレビエイジの子ども世代が今どんなテレビドラマを見ているかです。それなりにテレビドラマ好きが多い集団であるはずで、そこをうまく狙い撃ちできれば結構ヒット作が出てくるんじゃないかなという気もします。(『逃げ恥』なんかはそういう作品だったのだと思います)なんとなく韓国ドラマを見ている人が多そうですが……。
そしてもう1つ、テレビエイジがその世代に見ていた作品は今見ても古びない名作であることが多いのです。私自身いま若手サラリーマンとしてもがいていますが、そんな今の私にとって『東京ラブストーリー』というのは本当に面白くて面白くてしようがありません。アラサーとして見る『ロングバケーション』も最高オブ最高でとにかく毎日ロンバケに救われています。
そんな風に1966年生まれの人が自分と同世代だったころどんなドラマを見ていたのかという観点で過去の名作を掘ってみるのも結構意味があることなんじゃないかなと思います。