子安大輔

食べ物・飲み物まわりのプロデューサー。(株)カゲン代表取締役。飲食店や商業施設のプロデ…

子安大輔

食べ物・飲み物まわりのプロデューサー。(株)カゲン代表取締役。飲食店や商業施設のプロデュース、食領域の企画・事業開発、飲食ビジネスのスクール主宰、執筆・講演など、「食」のフィールドであれやこれや。著書に『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』(ともに新潮新書)。

最近の記事

決めたことを徹底的にやり抜くこと

大切な友人が本を出したので、そのご紹介です。 もちろん著者を知っているからこそ、それぞれのエピソードから彼らしさを想像できたり、あるいは、そもそも贔屓目に見たりしているところはあると思います。しかし、それを抜きにしてもとても面白く、興味深い内容でした。 まず、彼がCOOを務めている会社「メッセホールディングス」ですが、基幹事業は「遊技事業」、わかりやすく言えば「パチンコを中心とするエンタメ事業」です。時代的には決して追い風というわけではないはずですが、この6年間で売上が2

    • 点と点が繋がって、クラフトビールをつくることになりました

      偉人の名言を殊更にまつりあげるのは好きではありませんが、それでもスティーブ・ジョブスの「Connect the Dots」という有名なフレーズについて、「ほんと、そうだよなぁ」と最近強く実感しています。 というのも、長らく関わってきたプロジェクトがようやくスタートラインに立つところまで来たのですが、自分にとってはまさに点と点が繋がった感じなのです。 アメリカで来年30周年を迎えるクラフトビールのブランドが、海外初進出として日本の仙台市を選んだのですが、その立ち上げにどっぶ

      • 「業態」ではなく「店格」で選ばれる時代へ

        「業態」の時代は終わったのかもしれない しばらく前のことではありますが、2軒の人気の飲食店に行きました。ひとつは渋谷の居酒屋、もうひとつは池尻大橋(渋谷の隣駅)の立ち飲みバーです。どちらも最寄り駅から徒歩10分以上離れているのに、若いお客さんを中心にとても賑わっていました。 ただし、食べたり飲んだりした感想としては、「良い店だとは思うけれど、そんなに特徴があるわけでもないし、格別おいしいわけでもないなぁ」というものでした。「全体的な『雰囲気』が人気のお店なんだな」という印

        • かくも奥深き四川料理の世界

          僕の仕事は「食」に関する領域の企画開発・事業開発やコンサルティングなどです。そんな中で、飲食店や外食企業とご一緒することも多いのですが、この数年間、四川飯店さんのお手伝いもさせてもらっています。 四川飯店といえば、初代の陳建民さんが四川料理や中国料理を日本に広め、そして2代目の陳建一さんは「中華の鉄人」としてメディアでも大活躍されました。現在は3代目の陳建太郎さんが、新しい道を切り拓いている最中です。 建太郎さんが率いる「四川飯店シンガポール」は、正式名称を「SHISEN

        決めたことを徹底的にやり抜くこと

          アルコール・ダイバーシティ 〜飲む人と飲まない人が共存する社会へ〜

          日本マーケティング協会が発行する「マーケティングホライズン」という月刊誌があります。縁あってかれこれ10年近く、その編集委員というものをやらせてもらっています。編集委員は年に1回ほど、持ち回りで責任編集号を担当するのですが、僕の出番は6月号でした。広義のマーケティングの範疇ならば、委員の関心あるテーマを扱ってよいのですが、今回は特集企画を「アルコール・ダイバーシティ」としました。サイトに掲載されていない「巻頭言」の全文および、アップされている全コンテンツへのリンクを以下に記し

          アルコール・ダイバーシティ 〜飲む人と飲まない人が共存する社会へ〜

          チェーン居酒屋の進化形は持込み自由の「時間貸しスペース」?

          居酒屋の苦境は今に始まった話ではないマクドナルドをはじめとするファストフードの売上が好調なのに対して、外食産業の中で苦しい状況にある業態の筆頭が居酒屋です。中でも、大手の居酒屋チェーンは店舗サイズに対して経済的な補償も少なく、瀕死とも言える状態に陥っています。 ただし、新型コロナの影響が大きすぎて実態が見えにくくなっていますが、実は居酒屋という存在に対してずっと逆風が吹いていたことは、改めて認識しておきたい点です。 以下は、日本フードサービス協会のデータですが、「パブ・居

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          イラストに写真、「食のUI」のあるべき姿とは

          話題を呼んだローソンPBのリニューアル「プライベートブランド」(以下、PB)とは、コンビニやスーパーなどの小売店が、独自のブランドをつけて企画・販売する商品のことです。かつてのPBは低価格をウリにしていて、そのコスパで選ばれることが多い存在でした。 ところが、セブンイレブンが「金の」シリーズを出した頃から、その印象が「送り手の思想を込めた良品」へと大きく変わっていった気がします。こちらの記事からは、PBにかけるセブンイレブンの執念を感じます。 PBがクオリティという点で大

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          「唐揚げ戦争」を横目に、生活に寄り添う惣菜業態をつくってみた

          唐揚げ&フライドチキンで攻勢をかけるワタミ街に「唐揚げ専門店」が続々と増えています。 例えば、ワタミが展開する「から揚げの天才」。唐揚げがひとつ99円(税込106円)、そしてイチオシのお弁当は、唐揚げ3個と玉子焼きがついて498円(税込537円)という価格設定です。「唐揚げ1個99円」という手頃な値段は、生活者に魅力的に映っていることでしょう。2018年11月に1号店をオープンさせてから2年半で、公式サイトによれば現在98店舗まで増えました。 また、いわゆる「唐揚げ」とは

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          「容器」に透ける、ドリンク商品開発の最前線

          大ブレイクのスーパードライの「生ジョッキ缶」アサヒビールの「スーパードライ 生ジョッキ缶」の売れ行きが絶好調のようです。 私も何度か飲んでみましたが、缶の上部が全開になって、まさにジョッキやグラスのように直接口をつけてゴクゴク飲めるのは面白い体験です。そして缶の内部に施された凸凹によって、泡がモコモコと立ち上がってくる様子は見た目も非常にユニークです。缶ビールにこういう細かい工夫を凝らすあたりは、いかにも日本らしいと言えるかもしれません。 ちなみに、アメリカ在住の知人とこ

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          コカ・コーラとスタバが注目する「第3のミルク」とは何か?

          エシカル消費が後押しする第3のミルクみなさんは「オーツ麦」と聞いて、何かイメージが浮かびますか? 私を含めて多くの人はあまりピンとこないのではないでしょうか。オーツ麦は日本語では「燕麦(えんばく)」と呼ばれますが、「オートミール」として食べられていたり、もっとわかりやすいところで言うと、甘さを加えて「グラノーラ」として実は人気だったりします。 このオーツ麦からつくられる飲料「オーツミルク」が最近日本でも注目を集めるようになり、日本コカ・コーラからは「GO:GOOD おいしい

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          「微アルコールビール」というチャレンジは、市場に受け入れられるのか?

          お酒の適量とはアルコール20グラムまで「まずはビールを飲んで、その後にハイボール、最後に日本酒を…」。お酒をそれなりに飲む人にとっては、こうして様々なお酒を楽しむのはよくあるスタイルです。ただし、自分が何杯飲んだのかはわかっても、「じゃあ、どれくらいの量のアルコールを摂取したの?」と問われたら、ほとんどの人は「よくわからない」と答えるはずです。 悪酔いの原因になったり、健康に悪影響があったりするのは、主に摂取したアルコールの「量」によるはずですが、これまでなかなかその量を知

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          令和時代の新しい家族の食卓とは

          ※日本マーケティング協会発行「マーケティングホライズン」の2021年1月号「新型でいこう」の特集に寄稿した内容を転載しています。 ***** 手料理への飽きがもたらす食卓のカオス 「家のごはんには、もう飽きた!」 私の身の回りで、そしてネットでもしばしば見聞きするセリフだ。コロナは私たちの生活のあらゆる面に多大な影響を及ぼしているが、その中でも食生活の変化は相当に大きいのではないだろうか。それもそのはず。これまで毎日のように職場近くでランチをしていた人は、在宅ワークになっ

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          レストランの本質は場所にあるのではなく「素晴らしい食体験を提供すること」

          今回は日経MJとの連動企画「#新レストラン考」というお題についてです。 この企画では私は「選者」ということになっているのですが、皆さんの投稿にコメントする前に、まずは自分の考えを少しお伝えしておきたいと思っています。 「うれしくない外食」が減り、市場は縮む2021年1月の外食の売上は前年比マイナス21パーセントでした。20時までという営業制限は相当なダメージで、各店舗・各社ともに非常に苦しい状況が続いています。 年間の数字を見てみましょう。外食産業の市場規模は2019年

          レストランの本質は場所にあるのではなく「素晴らしい食体験を提供すること」

          【お知らせ】オンラインイベントに登壇します

          3月10日(水)の19:30~、日経MJとCOMEMOによるオンラインイベントが開催されますが、そちらに登壇します。 もともと評判のレストランでしたが、コロナ禍での様々な活動によりさらに話題となったsioの鳥羽周作シェフとご一緒させていただきます。ファシリテーターは日経新聞の大岩佐和子さん。 「新レストラン考」というなかなか壮大なテーマではありますが、今考えていることを、お話できればと思っております。 一般1500円ですが、日経電子版を契約している方は無料で参加可能です

          【お知らせ】オンラインイベントに登壇します

          「大人の半分はお酒を飲まない」という飲食店にとっての「不都合な真実」

          お酒を習慣的に飲む人は何パーセント?今回は「お酒」について、少し考えてみたいと思います(このnoteではお酒を取り上げることが多いのは…おそらく気のせいです)。以前は「若者のアルコール離れ」というフレーズをよく耳にしましたが、最近あまり聞かなくなったような気がします。もうそんなものは当たり前になったということでしょうか。 そもそも日本において、習慣的にお酒を飲んでいる人の比率はどの程度だと思いますか? 人口の半分くらい? いやそれよりもっと少ない? ちょっと考えてみてくださ

          「大人の半分はお酒を飲まない」という飲食店にとっての「不都合な真実」

          恵方巻きに、おにぎり。コンビニの食品ロス削減に見る「価値観のトランスフォーメーション」

          いつしかすっかり定着した恵方巻き今年も間もなく「鬼」の季節がやってきます。 そう「節分」です。節分とは、その文字が示す通り「季節の分かれ目」のことで、元来は立春・立夏・立秋・立冬、それぞれの前日のことをすべて節分と言っていましたが、今ではその中の立春(今年であれば2月3日)の前日のみを表すようになりました。 なぜ、節分には鬼を追い払うのでしょうか。調べてみると、季節の変わり目というのは、とかく疫病などの災厄が起こりやすいもの。そうした悪しきものを鬼に見立てて、それを退散さ

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