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アルコール・ダイバーシティ 〜飲む人と飲まない人が共存する社会へ〜

日本マーケティング協会が発行する「マーケティングホライズン」という月刊誌があります。縁あってかれこれ10年近く、その編集委員というものをやらせてもらっています。編集委員は年に1回ほど、持ち回りで責任編集号を担当するのですが、僕の出番は6月号でした。広義のマーケティングの範疇ならば、委員の関心あるテーマを扱ってよいのですが、今回は特集企画を「アルコール・ダイバーシティ」としました。サイトに掲載されていない「巻頭言」の全文および、アップされている全コンテンツへのリンクを以下に記します。

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【巻頭言】
日本人の成人のうち、お酒を飲む習慣がある人の比率がどのくらいかご存知だろうか。

厚生労働省の国民健康・栄養調査では習慣的に飲酒する人を「週に3回以上、1日あたり日本酒換算で1合以上を飲酒する者」と定義している。2019年のデータではこの比率は20.5%であるから、成人の5人に1人しか習慣的飲酒者には該当しない。ちなみに20代に限ってみれば、その比率は7.8%(13人に1人)である。

この数字を見ると、「週3回以上というのは、ちょっと飲みすぎでしょ。頻度はそれより少ないけれどお酒を飲む人は、もっとたくさん存在するのでは?」と考える人もいるだろう。それは半分正しく、半分間違っている。

同調査では、飲酒の頻度も聴取しているが、その結果は「ほとんど飲まない:15.9%」「やめた:2.0%」「飲めない:37.2%」となっており、これを合算すると55.1%になる。つまり、大人の半分以上は酒を飲まないのだ。実は日本社会は飲まない人がマジョリティなのである。「日本人は体質的に酒に弱い」という話を聞いたことがある人も多いと思うが、お酒を飲めない人が37.2%存在するので、3人に1人以上は下戸(げこ)である。

一方で、世の中を見渡してみるとどうだろう。テレビにはビールの広告が溢れ、街の一等立地には居酒屋が乱立している。誰かを夜に食事に誘うときには「飲み行こう」と表現するのも一般的だ。飲む人にとってはごくごく当たり前の光景も、無意識のうちに飲まない人・飲めない人に肩身の狭い思いをさせている可能性は高い。

言うまでもなく、人を虜にする魅力がお酒にはある。味わい自体の素晴らしさ、食事との相性、文化的な深み、コミュニケーションの潤滑油としての機能。人類の歴史を紐解いても、その傍らには常に酒が存在していたのだから、「人と酒」には深い関係があることは間違いない。

本号では、そうしたお酒の価値について改めて掘り下げると同時に、飲まない人についてもきちんと光を当てることで、これからの「社会とお酒」について、何より「自分とお酒」についてみなさんが考えるきっかけにしたい。飲む人と飲まない人の対立を煽るのではなく、両者が心地良く共存できる未来をイメージして、それを「アルコール・ダイバーシティ」と呼ぶことにする。

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インタビュー①:「ゲコノミクス」を開拓せよ!
藤野英人さん(レオス・キャピタルワークス)


インタビュー②:ラグビーとともに、酒とともに
大野均さん(東芝ブレイブルーパス)


インタビュー③:「微アルコール」そして「スマートドリンキング」
小野祐花里さん(アサヒビール株式会社 新価値創造推進部)


インタビュー④:飲む、そして描く。飽きることない酒の魅力とは。
ラズウェル細木さん(漫画家)


インタビュー⑤:「断酒」を経由して、「減酒」というスタイルへ
川下和彦さん(株式会社quantum)


実録「若者とお酒」に関する座談会

総括記事:「アルコール・ダイバーシティ」 という世界



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