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コカ・コーラとスタバが注目する「第3のミルク」とは何か?

エシカル消費が後押しする第3のミルク

みなさんは「オーツ麦」と聞いて、何かイメージが浮かびますか? 私を含めて多くの人はあまりピンとこないのではないでしょうか。オーツ麦は日本語では「燕麦(えんばく)」と呼ばれますが、「オートミール」として食べられていたり、もっとわかりやすいところで言うと、甘さを加えて「グラノーラ」として実は人気だったりします。

このオーツ麦からつくられる飲料「オーツミルク」が最近日本でも注目を集めるようになり、日本コカ・コーラからは「GO:GOOD おいしいオーツ麦ミルク」という商品が発売になりました。

ちなみにこの商品ですが、1リットル415円(税抜)とのことですから、一般的な牛乳や豆乳に比べると2倍近い価格です。

記事ではこのように説明されています。

アーモンドやオーツ麦などから作る植物性飲料は、牛乳、豆乳に次ぐ「第3のミルク」とも呼ばれる。牛乳に比べ製造過程の環境負荷が低い。日本は世界に比べ流通が始まったばかりで、エシカル(倫理的)消費を掘り起こせる余地があると判断した。

気になるポイントが2つありますが、1つ目は「第3のミルク」というカテゴリーの存在です。豆乳以外に、耳馴染みのあるココナッツミルク、米由来のライスミルク、アーモンドからつくられるアーモンドミルク、そしてオーツミルクなど、「植物性ミルク」が世界的にもじわじわとその存在感を強めています(言うまでもありませんが、ここでは「白い飲料」という意味で「ミルク」という言葉が使われています)。

スターバックスでも、アーモンドミルクやオーツミルクを使ったラテがメニューとして提案されています。

記事におけるもうひとつのポイントは「牛乳に比べ製造過程の環境負荷が低い」という箇所です。以前以下の投稿でも触れましたが、乳牛や肉牛などが出す「げっぷ」による地球温暖化への影響が危惧されていて、それよりも環境へのダメージが少ないとされる「プラントベース(植物由来)」の製品を評価する人や企業が増えているのです。

明暗のわかれている牛乳と豆乳

改めて「第1・第2のミルク」である、牛乳と豆乳の概要を見てみましょう。牛乳の国内生産量は350万キロリットル程度、金額としては5,000億円台とされますが、この数字は減少傾向が続いています。牛乳と言えば、学校給食をはじめ「こどもの成長サポート」というイメージが強いですが、少子化による消費減少の影響は大きいことでしょう。

一方で、豆乳は大躍進が続いています。日本豆乳協会によれば、2020年には生産量が43万キロリットルとなり、10年連続で過去最高を記録しているのです。スーパーの売り場でも存在感が増していた印象はあるのですが、こうして数字を見てみると改めて豆乳の人気ぶりを実感します。量ベースで言えば、牛乳の1割を超えています。

豆乳が人気となっている理由は何でしょうか。もちろん飲み物である以上、美味しさが前提にあるには違いありませんが、それだけではなく豆乳の健康イメージが大きな要因です。当然牛乳と比較されることが多いですが、豆乳は牛乳に比べて糖質や脂質が少なく、結果的にカロリーも低くなっています。

一方で、タンパク質の含有量は牛乳と同程度なので、筋トレに励む人たちからも評判です。さらに、大豆に含まれるレシチン、サポニン、イソフラボンなどの成分が美容や健康に良いとされるので、女性からの支持も集まっています。美味しいのに加えて「牛乳よりもヘルシー」ということで、じわじわと裾野を広げているのです。

ミルク市場はどうなっていくのか?

広義のミルク市場の概況としては、減少傾向の牛乳、躍進する豆乳、注目の第3のミルクとなっていますが、今後はどのようになっていくでしょうか。

牛乳に関しては、なかなか反転の兆しは見出しにくいと感じてしまいます。ミルク市場では、美味しさに加えて健康への機能性がかなり大きな意味を持ちますが、牛乳の健康といえばその筆頭はカルシウムです。成長期のこども、あるいは骨粗鬆症が心配なシニア層などでは切実なニーズがあるでしょうが、それ以外の大人にとっては、その機能性ゆえに選ぶというのはあまり考えにくいと言えます。

もちろん、牛乳の味が好きだから飲んでいるという人も多いでしょうし、昔から馴染みのあるものですから、一気に市場が縮小することはありえませんが、長期的に見ると少しずつ減少していくのではないでしょうか。

一方で、冒頭で触れた環境意識への高まりは、豆乳や第3のミルクなどの植物性ミルクにとっては追い風です。「カーボンニュートラル」という言葉が急速に広まり、植物性を志向する流れも強まっています。今後、代替肉などのプラントベースフードがその存在感を増していくと、豆乳や第3のミルクの消費量も増えていくでしょう。

個人的には、豆乳は安泰だと思いますが、第3のミルクの未来はまだまだ混沌としていると感じています。この領域は現時点では女性からの注目度が高く、そのヘルシー感がポイントになっています。オーツミルクの紹介のされ方を見ても、「低カロリー」「食物繊維が豊富」などのフレーズが目に付きます。

広義のミルク市場では、美容・健康への期待感、ファッション性(トレンド感)などの与える影響が大きいだけに、話題性豊富なニューフェイスが登場すると、途端に淘汰されてしまう可能性もあるのです。実際に数年前にはライスミルクが一時期注目されていましたが、ブレイクするには至りませんでした。

とは言え、選択肢が増えることは良いことです。オーツミルクやアーモンドミルクなどの第3のミルクがスーパーやコンビニなどで手に取りやすくなりました。まだ飲んだことのない方はぜひ一度試してみてください。ちなみに私は豆乳のヘビーユーザーですが、アーモンドミルクの「いかにもアーモンド」という後味は結構好きです。

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