見出し画像

令和6年読書の記録 アガサ・クリスティー『スタイルズ荘の怪事件』

 旧友の招きでスタイルズ荘を訪れたヘイスティングズは、到着早早事件に巻き込まれた。屋敷の女主人が毒殺されたのだ。難事件調査に乗り出したのは、ヘイスティングズの親友で、ベルギーから亡命して間もない、エルキュール・ポアロだった。不朽の名探偵の出発点となった著者の記念すべきデビュー作が新訳で登場!

↑文庫版裏表紙の解説引用

 朝の番組を担当していて毎週一冊の本を紹介していた(というか正しくはDJの方に紹介していただいていた)頃、確かアガサ・クリスティーのデビュー100周年か何かで関連する新聞記事などもよく見かけておりましたので、これは一度読んでみなければなるまいと、『そして誰もいなくなった』を読んでみたのが今思えば2020年のことだったらしい。

 なぜそれがわかるかといえば、この『スタイルズ荘の怪事件』がアガサ・クリスティーのデビュー作であり、発表されたのが1920年だからです。デビュー100周年が2020年であることはさすがのアホの私でもわかる。つまり、私が朝の番組を担当し、DJの方に毎週課題図書の読書を強いていたのが4年前のこと。緊急事態宣言が発令され、オリンピックの開催が延期された年です。いまパリオリンピックが開催されておりますゆえ、間違いなくあれは4年前なのです。

 その4年前、職場の近所にある「くまざわ書店」で『そして誰もいなくなった』を購入し、以来、「くまざわ書店」のポイントが貯まり、500円オフのクーポン券が発券されるたび、アガサ・クリスティー作品を購入しております。違う作品を買ったこともありますが基本的にそうしてます。その後大阪へ行く機会が増え、本は紀伊國屋書店で買うことが増えたため、くまざわ書店のポイントが以前より貯まらなくなり、自然、アガサ・クリスティー作品を読む頻度が減ってしまったのですが、久しぶりに読んでみたらやっぱり面白いから、この際、くまざわ書店でポイントが貯まらなくても違う店ででも買おうかなって思いますよね。

 『スタイルズ荘の怪事件』はなんといってもミステリの女王ことアガサ・クリスティーのデビュー作です。巻末解説の数藤康雄さんの言葉を借りますが、デビュー作でありながら、「本書は典型的な謎解きミステリである。被害者や犯人を含む登場人物のほとんどが第一章で紹介され、やがて田舎屋敷に住む裕福な老婦人が毒殺される。そして、(中略)証拠品が次々と見つかり、犯罪の動機は遺産相続と関係ありそうだとわかってくる。どのような手段で被害者は殺され、犯人は誰なのか?読者と作者の知的ゲームが展開されることになる」というわけです。

 アガサ・クリスティーがデビューするよりも前から他にもミステリ作家はいたでしょうし、それこそ、エルキュール・ポワロよりももっと前からシャーロック・ホームズは活躍していたわけですが、数藤さんいわく、『スタイルズ荘の怪事件』は当時のミステリ界に忽然と登場したフェアプレイ重視の現代的な謎解き小説であり、この作品によって、ミステリ黄金時代の幕が開いたといってよいとのこと。あまりミステリ小説の利口な読者とはいえない私ですが、確かにいろんな場面に既視感があるのは、きっと東野圭吾や綾辻行人や青山剛昌や坂口安吾やカササギ殺人事件の人や三谷幸喜やその他いろんなミステリ作品を手がけている人たちのルーツを遡っていったときに間違いなく鎮座しておられる女王様のデビュー作であるからなのでしょう。

 サザンオールスターズが好きになり、それからビートルズやクラプトン、ローリングストーンズその他いろいろ、サザンのルーツを辿っていくのは自分にとって実に面白い体験でありましたが、つまり、同じことをやっているわけなんですから面白いはずですよね。長くじっくりと紡がれてきた層を破壊することで新しいものを創り上げようとする人もいますけど、壊すなら壊すで先人への敬意がないといけません。自分の創作のこれからにも影響を与える経験となるにちがいない読書でありました。

#日記 #コラム #エッセイ #読書 #読書感想文
#読書の記録 #令和6年読書の記録
#アガサクリスティー #スタイルズ荘の怪事件
#矢沢聖子 #ハヤカワ文庫


蠱惑暇(こわくいとま)こと涌井慎の著書『1人目の客』と1人目の客Tシャツは是非ウェブショップ「暇書房」にてお買い求めください。
8月12日(月・休)に西院陰陽(ネガポジ)にて開催する「涌井大宴会mini(仮)」でも販売します。よろしければご来場ください。

というわけで、暇書房のウェブサイトは↓

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?