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映画鑑賞の記録『関心領域』

 空は青く、誰もが笑顔で、子どもたちの楽しげな声が聞こえてくる。そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から煙があがっている。時は1945年、アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた。第76回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝き、英国アカデミー賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞、トロント映画批評家協会賞など世界の映画祭を席巻。そして第96回アカデミー賞で国際長編映画賞・音響賞の2部門を受賞した衝撃作がついに日本で解禁。
 マーティン・エイミスの同名小説を、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』で映画ファンを唸らせた英国の鬼才ジョナサン・グレイザー監督が映画化。スクリーンに映し出されるのは、どこにでもある穏やかな日常。しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在が、音、建物からあがる煙、家族の交わすなにげない会話や視線、そして気配から着実に伝わってくる。その時に観客が感じるのは恐怖か、不安か、それとも無関心か? 壁を隔てたふたつの世界にどんな違いがあるのか?平和に暮らす家族と彼らにはどんな違いがあるのか?そして、あなたと彼らの違いは?

↑映画公式HPより

 各方面から伝わってくる情報を自分なりにまとめたところ、「令和6年、この映画は絶対に見逃したらあかん大賞」は間違いなくこの映画やろ、という結論に達しました。
 ちょうどコロナ初年以降、年会員になっている「京都シネマ」の会員更新時期と重なったので3000円で会員更新を済ませ、更新特典で貰った一回鑑賞無料券(実際は券ではなくデジタルだったので券というよりは権のほうが近いかもしれない)で鑑賞いたしました。
 今日はお昼12時台と夕方6時台に上映があり、夕方のほうが混雑するやろうと思い、お昼の回にしたのですが、月曜のお昼12時のくせに意外と人が入っておりました。月曜のお昼12時のくせに生意気な!とジャイアンみたいなことを思ってしまってごめんなさい。

 映画公式HPに書いてある通りの映画です。これまでいろんな人がいろんな感想を書いておられます。私のような映画ど素人が感想を書いたところで誰かの感想をなぞったものか、あるいは全く的外れなことしか書けないと思うのですが、それでも観たからには何かを書くまでが私の映画鑑賞ですから何か書かねばなりません。そういう時の文字数稼ぎと「間違ったことを書かないための保険のために冒頭に公式サイトからの引用を貼るという、誰に向けた予防線やねんということをやらずにはいられない大人になってしまいました。こういうところで失敗を恐れ、石橋を叩きがちな分、自分企画のライブイベントでは比較的好き勝手なことをやらせてもらってます。8月12日は是非西院陰陽(ネガポジ)にて開催の「涌井大宴会mini(仮)」にお越しください。

 しまった。また映画と関係のないことを書いてしまった。

 アウシュヴィッツ収容所の隣で幸せに暮らすのは収容所の所長ヘスの一家です。すぐ隣から銃声や怒号が聞こえるなか、一家は「平穏無事」に暮らしているのです。
 物語の途中、ヘス所長が昇進のため、この家を出なければならないという場面でヘスの妻は「こんなに幸福の塊みたいな家に住んでるのに引越しするなんて嫌!」と、まあ、細部は全然違うと思いますが、こんなセリフを吐くわけです。そこまで自分本意でいられるか、そこまで壁一つ隔てた向こう側の世界に無関心でいられるか、と驚いたわけですが、やはり、同時に考えてしまうのは、私自身の今の暮らしのなかで知らずうちに作ってしまっている壁のことでした。先日、沖縄の歴史を題材にした『ライカムで待っとく』というお芝居を観たばかりの私はどうしても沖縄問題に関して私が壁を作り無関心でいることを痛感したし、それ以外にも、地方自治法の改正とか、共同親権とか、同性婚とか、パレスチナ問題とか、ウクライナのこととか、あらゆる問題について、時に矮小化し、時に自らには関係のない問題としてスルーし、そうすることで自らの平穏な暮らしを保とうとしているところがあり、ある程度仕方ないやろと思う反面、この無関心がエスカレートしていけばヘスの妻みたいなことになりかねないのではないか、と恐ろしくなったりもする。

 個人的に「令和6年絶対観ないといけない映画大賞」受賞作なので公開の日から絶対に観ないといけないと思い続けていたのですが、観てよかった。観ないといけない映画でした。こんな映画を年会員更新サービスで無料で観せてくれた京都シネマ、ありがとう。これからも応援しつづけます。

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涌井慎です。趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。蠱惑暇(こわくいとま)の名前で『1人目の客』刊行いたしました。めちゃくちゃかわいいとバズりつつある1人目の客Tシャツもあります。ウェブショップ「暇書房」にて是非お買い求めください🎵

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