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右膝痛・両腰痛を主訴とする症例の考察

こんにちは。理学療法士のこうやうです。

今回は右ひざの痛みを訴えている症例の考察を紹介しようと思います。

前回と同じような内容になっていますが

なぜなのかといわれると

自分で考えていることを書いて客観的に見たいということと

私の病院では現在症例報告会を実施していないため

その簡易的な報告をできればと思い、記事にしました。

守秘義務を破らないように

書いていきますのでよろしくお願いします。


症例の概要

今回ご紹介する方は通所のリハビリを利用している方です。

年齢が90歳以上であり、既往に仙骨骨折がある方です。

主訴として右膝痛があるのですが

両方の腰の痛みを呈しています。

姿勢は骨盤後傾位であり、膝屈曲位です。

高齢者の典型的な姿勢ですね。

ではそれぞれの痛みの特徴について触れていきます。


①右膝痛

膝の痛みとして訴えがあったのは

膝の中が痛い

というものです。

こういう訴えはよくありますよね。

そして何より困ったのは

圧痛所見がなかったことです。

様々な組織に触れたつもりでしたが

痛いという訴えが一切ありませんでした。

そして試行錯誤してわかったことがありました。

それは

膝蓋骨を下制すると痛みが伴ったということです。

触診だけでは見つけられなかったため

藁をもつかむ勢いで膝蓋骨を動かすと

「いてえ!!」と跳ね上がるような反応を見せました。

疼痛を誘発することは重要な評価ではありますが

とても申し訳ないことをしました。

そしてマイルドに膝蓋骨の上下運動を繰り返しましたが

明らかな滑走の悪さを感じました。

ここまでの特徴をまとめると

・膝の中が痛い
・圧痛所見は特になし
・膝蓋骨下制動作で疼痛誘発
・膝蓋骨の上下運動が円滑にいかない

となりました。


右膝痛の考察

このような特徴から痛みを発している組織は

膝蓋下脂肪体

と推測します。

根拠として

①膝の中=膝蓋骨の下にある組織と考えると、膝蓋下脂肪体の可能性が高い
②膝蓋骨の動きを円滑にするには膝蓋下脂肪体の柔軟性が不可欠

が挙げられます。

膝蓋下脂肪体の圧痛所見は膝蓋腱周囲にてとれるはずですが

今回はとれませんでした。

私の触診技術が足りないせいもあるかもしれません。

しかし膝蓋骨を下制させた状態で同部位を触診すると

圧痛所見がとれました。

これは膝蓋骨下制動作によって

膝蓋下脂肪体が弛緩?したためと考えられます。

その状態でモビライゼーションを行ったら

疼痛の軽減が見られました。

そのため組織判定は間違っていなかったといえると思います。


その後歩容を確認しましたが

立脚中期にて下腿過外旋動作が見られました。

膝蓋下脂肪体は下腿外旋動作にてストレスが加わりやすいため

この動きが膝の痛みを誘発していたと推察します。


処方した運動療法

この方にはセルフエクササイズとして

①膝蓋下脂肪体のモビライゼーション
②アダクトリーツイスト

を処方しました。

①は対症療法として、②は原因療法として提案させていただきました。

②に関しては園部俊晴先生の動画で見つけたものなので

ぜひ調べてみてください。



腰痛

疼痛部位として

おしりの部分を訴えていました。

腰痛があると思ったら臀部痛だったというのもあるあるですよね。

そして触診にて

両側の梨状筋と大腿方形筋に圧痛所見がありました。

深層外旋六筋群の代表格ですね。

試しにこの筋群が伸びるように

股関節伸展・内旋・外転位でストレッチをすると

同じところに痛みがありました。

腰痛の特徴をまとめると

・臀部に痛みの訴え
・梨状筋・大腿方形筋に圧痛初見
・股関節伸展・内旋・外転位にて同部位に疼痛


腰痛の考察

前述した情報から

疼痛を発している組織を

梨状筋と大腿方形筋と推定しました。

そして運動療法として

①梨状筋・大腿方形筋のマッサージ
②同部位の運動2種類(伸張位からの運動を意識して)
・股関節屈曲・外旋位からの伸展・内旋動作
・股関節伸展・内旋位からの屈曲・外旋動作

を行いました。

結果


微妙でした。

圧痛所見は軽減したのですが

歩行中の疼痛はわずかに軽減した程度とのことでした。

むしろ気遣って軽くなったといってくれたのかもしれません。


原因は何か

そもそもの仮説が間違っている可能性はさておき

まず疼痛が軽減しなかった原因として挙げられるのは

私は

股関節伸展・内旋・外転位でストレッチをしたことだと思っています。

これはなぜかというと

この肢位は股関節の締りの肢位といわれており

股関節靭帯系をすべて伸びている状態だからです。

そもそも深層外旋六筋群のスパズムが高い時点で

股関節に負担がかかっていることが想像できますが

その状態で靭帯を緩めてしまえば

さらに歩容の動揺は強くなるはずです。

これに関しては反省ですね。



今回はこれで以上です。

この症例はわたしたちの仕事は

人の身体をよくすることも悪くすることもできる

というのを改めて実感させていただきました。

20分という短い時間ではありますが

慎重なリハビリを心がけていこうと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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