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高齢者の腰痛を持つ症例の考察

こんにちは。理学療法士のこうやうです。

今回は現在私が担当させていただいている症例の

私なりの考察について紹介をしたいと思います。

理学療法士の守秘義務を破らないように

書いていこうと思いますので

よろしくお願いします。

それでは始めます。


症例の特徴

情報を細かく載せないように書いていきます。

その方は通所リハビリを数年間と長い間利用しているのですが

通われた当初から腰痛の訴えがありました。

そして既往に脳卒中があり

高次脳機能障害(注意散漫)があり

認知症があります。

この方の姿勢の特徴は

骨盤前傾位になっている

ことです。

そのため体幹前傾位で歩いています。


そしてこのかたの腰痛の特徴に関して書きます。

まずこのかたは

起き上がり動作と長座位姿勢で腰痛を強く訴えます。

そして疼痛部分は

腰全体という訴えです。

局所的ではありません。


特徴をまとめます。

・骨盤前傾位姿勢
・起き上がり動作と長座位姿勢で疼痛
・腰全体が痛い

ということです。

そしてマッサージをしても疼痛の軽減がみられない

というのも大きな特徴です。

私の考察

私の考察ですが

このかたは椎間板性腰痛と推察しています。

根拠として

①長座位は腰椎後弯位にあり、椎間板内圧が上昇すると考えられる

②椎間関節性腰痛であれば、椎間関節部に疼痛を訴え
痛みは必然的に局所的になるはずなので候補から外れる

③筋・筋膜性腰痛であればマッサージで疼痛の軽減がみられるはずなので
候補から外れる

④仙腸関節痛であれば、PSIS・長後仙腸靭帯・仙結節靭帯・腸骨筋に圧痛初見が見られるはずだがないため、候補から外れる

といった感じです。

「では骨盤後傾位になっているはずでは?」

という疑問もあるかもしれませんが

この姿勢は疼痛の逃避反応として起こった結果である

と推察しています。

考察の問題点

この考察の問題点として

起き上がり動作で疼痛を訴える根拠を説明できていない点です。

起き上がり動作で腰痛を訴えるのは

圧迫骨折か仙腸関節性腰痛ですが

椎間板性腰痛であればいまいち椎間板内圧が上昇する

メカニズムのイメージがわきません。

そして椎間板性腰痛は局所的な痛みが特徴のため

これも説明がつきません。

他にも問題点があるかもしれませんが勘弁してください。


処方する運動療法

私は処方する運動療法として

肩挙上位でのヒップリフト・股関節伸展筋群のストレッチ・骨盤前傾運動をあげます。

根拠を説明していきます。

①四つ這い位・腹臥位の運動が厳しい

椎間板内圧を減少させるには

腰椎の分節的伸展力を働かせる必要があります1)。

この筋として代表的なのは多裂筋です。

そのため本来であれば腹臥位や四つ這い位で

行う運動が望ましいのですが

高齢者であるため、骨折のリスクを考えると

実施は少し難しいです。

そのためできれば背臥位で行うことのできる運動がいい。

と考えると肩90°挙上位でのヒップリフトです。

肩伸展の代償運動が出ないような環境下で行うことで

多裂筋の活動を促すことができます。

という文献を見たはずなのですが

私には見つけられませんでした。

申し訳ありません。


②股関節伸展筋群のストレッチ
これは想像している通り、

腰椎過後弯を防ぐためです。

大殿筋・ハムストの柔軟性を獲得できれば

おのずと股関節屈曲の可動域があがり

腰椎の過後弯を防ぐことができると考えます。

しかしこのエクササイズのデメリットは

股関節伸展筋群を伸張させる

という点です。

なんのこっちゃと思うかもしれませんが

この方は立位姿勢が体幹前傾位であり

この姿勢で歩くため

股関節伸展筋群の活動が大きいと容易に推測できます。

その筋を緩めるという行為は

むしろ股関節伸展筋群を働かせ

さらに硬くなるかもしれません。

慎重に様子をみて処方します。


③骨盤前傾運動

この運動に関しては批判が集まるかもしれません。

だって骨盤前傾位にあるひとにさらに骨盤を前傾させるわけですから。

脊柱管狭窄症のリスクがあると思われるかもしれませんが

私は思いません。

なぜかといえば、この方は

骨盤後傾はできないから骨盤前傾位にあるのではなく

骨盤後傾位になると疼痛を発するから骨盤前傾位になっているからです。

この方は骨盤過後傾・腰椎過後弯をする動作が癖になっているため

この癖を修正するには

全く逆の動作の癖を追加する必要があると考えます。

骨盤を前傾させる癖をつければ

骨盤を後傾する動作は徐々になくなっていくと考えます。


今回はこれで以上です。

最近思うのですが

勉強をすることのメリットは

知識がついてしまうことだと思います。

知識がつくと患者様の変化を客観的にとらえることができません。

なぜかといえば確信した根拠や理論があるためです。

我々はあくまで患者様を治すことが目的であるため

プログラムを実施する最大の理由は

患者様にいい変化が出るから

のはずです。

根拠は後から付け加えればいい話であり

根拠や理論があるからプログラムを実施しているわけではありません。

根拠のある効果薄めな運動療法より

根拠がでたらめな効果のある運動療法を私は選びます。

ですから患者様の変化を

思い込みや願いで捏造しないように

努めていこうと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考・引用文献
1)金岡恒治,成田崇矢:腰痛のプライマリ・ケア-腰痛者と向き合う時の必携書- P19-20,38-42,86-90,文光堂,2018.


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