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身体認知とは①

こんにちは。理学療法士のこうやうです。

今回は

身体認知

について話していきたいと思います。

最近のリハビリでかなり注目されてきている分野ですが

学校で習っているようなものではないと思います。

身体認知に関して

わたしなりに書かせていただきますので

よろしくお願いいたします。

それでははじめます。


身体認知と運動

環境に適応した運動を実現するには

自己の身体の適切な認知が必要である。

身体やその状態も、備わっているさまざまな知覚機能に基づき

認知されており、自己の身体認知は適切な運動に必須である。

身体認知は、自己受容器感覚/固有感覚などのような体性感覚と

外受容器感覚(視覚など)から得られる知覚情報に基づく。

しかし移動知の研究では認知→運動というプロセスだけでなく

運動→認知という逆方向のプロセスの重要性が指摘されており

我々の日常生活では、受動的認知のみでなく

能動的な認知が日常おこなわれている。

つまり認知と運動は、相補かつ相互依存的な関係であり

身体認知は運動制御と同時に機能していると考えられる。


脳内身体表現

ヒトは脳内に自己の身体の表象を持っており

これを脳内身体表現と呼ぶ。

脳内身体表現は

いわば脳の中に存在する自己身体の内部モデルであり

これを介して認知や運動が生成される。

脳内身体表現としては

身体図式(ボディスキーマ)、身体地図(ボディマップ)

といった表現がよく用いられる。

脳内身体表現に基づき、自己の身体運動や認知が生成されるプロセスは

実時間である一方、脳内身体表現が地殻運動経験に基づき生成・更新され

変容するプロセスはゆっくりとしている。

前者のメカニズムをファストダイナミクス

後者をスローダイナミクス と呼ばれている。

前者はリハビリテーション行為に相当しており

後者はリハビリテーションでいう回復過程に相当している。

このスローダイナミクスの解明が

リハビリテーションにおける治療の鍵といえる。

脳の可塑性

脳内身体表現の大きな特徴はその可塑性にある。

身体が成長する若年期に脳神経系も飛躍的に発育する。

しかし、身体的には成熟した成人であれど、その脳は可塑性に満ちている。

このような脳の可塑性は、

新たな身体運動を習得する場面などで大いに貢献している。

一方で脳が可塑的であるがゆえに起こる問題も非常に多い。

たとえば、事故などによる身体的変化に応じて、

脳内身体表現は大きく変容する。

また,脳卒中や脳梗塞など脳への直接の障害も、

この脳内身体表現を大きく変容させる。

加えて、通常の加齢によってもこの脳内表現が変化している。

ここで重要なのは、このようなさまざまな要因によって変容した

脳内身体表現は、正常な身体認知や身体運動を妨げうることである。

逆にいえば、この脳内身体表現を正常化することができれば、

身体認知や身体運動に生じているさまざまな問題の解決

につながると考えられる。


体部位再現


一次体性感覚野のホムンクルスの全身図 3)から引用

脳内身体表現のうち、理学療法士の教育過程でもよく習うのは

ホムンクルス (体部位再現) である。

これは第一次運動野、第一次体性感覚野や小脳などで巨視的にみられる、

各身体部位を再現する機能的部位である。


教科書をみると、第一次運動野や第一次体性感覚野などの

大脳皮質の表面に上図のようなホムンクルス が描かれている絵を目にする。

このような絵を眺めてみるとあたかもこの機能的構造 (ホムンクルス) が

固定的であるかのような印象を受ける。

しかし実際にはこの体部位再現はきわめて可塑的であり、

感覚運動体験や身体的変化によって簡単に変化しうるものである。

脳は常に変化し続け、その変化にこそ介入できるのが

我々セラピストといえる。




本日はこれで以上です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考・引用文献

1)近藤 敏之 他:身体性システムとリハビリテーションの科学2 身体認知 一般社団法人 東京大学出版会 2018
2)内藤 栄一:脳科学から見た脳内身体表現への介入 計測と制御 第 56 巻 第 3 号 2017 年 3 月号 p169‐174
3)上田 祥代 他:皮質体性感覚野の身体表現理解を促すFace Homnculus Viewer TVRSJ Vol.24 No.1 pp.3‐12,2019

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