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プラスチックは絶対悪なのか?台湾留学で気づいたエコ・エシカルの本質とは。

台湾留学がスタートして、初めての買い物に行った時のこと。

お会計が済んで「はいっ、どうぞ」と渡されたのは買い物かごだけ。「えっ、袋は?」と困惑してしまった。台湾ではエコバッグが必須だということを知らなかったのだ。

今だったら笑い話にできるけど、あの時は「なんて自分は日本の常識に染まってしまったんだろう……」と恥ずかしかった。


「地球に良い買い物を」

「エシカル消費を心がけましょう」

という言葉をよく聞くようになった。

これは、

・エコバッグを使いましょう

・ペットポトルゴミを減らそう

・環境に配慮しているものを買おう

と同義だ。


ただ、「環境に配慮したいけれどうまく実践できない」人が多いのではないだろうか。聞き心地の良い言葉だなぁ……と思っているだけ、なんて人も。

なんとなくレジ袋をもらってしまうし、ペットポトル飲料を買ってしまう。そこに意思などない。何となく消費しているのだ。



……とカッコつけた出だしを書いてしまったが、数年前まで、私はレジ袋を使っていたし、ペットポトル飲料もかなり買っていた。だって便利なんだもの。ついつい買ってしまう。そんな私だが、今はレジ袋を見ると悪寒がするくらいレジ袋が嫌いだ。本能的に無理……という感じ。ペットポトル飲料も1年くらいは買っていない。

その転機となったのが「台湾留学」。台湾は、国を挙げて環境問題に取り組んでいる。レジ袋の無料提供を禁止しているし、ゴミの分別を徹底している。


私は運が良いことに、当たり前のようにプラスチックゴミを減らす努力をしている社会に属することができた。台湾で生活すると、自然と環境問題・エコについて考える機会が増えたのだ。






「なんとかしなくては……」と、台湾留学中に使い始めたのがエコバッグ

台湾では大型スーパー(カルフールとか)や個人経営の小さいお店まで、レジ袋がない。それか、お金がかかる(地味に高い、1元=3.7円くらいかかる)。ゴミ袋にもなるので便利だけど、地味に家計を圧迫するし、環境にもよくない。

国がレジ袋を減らす方針を掲げている以上、従ったほうがいいし、環境に優しい取り組みを実践できる良い機会だ。そう思って「レジ袋を絶対に使わない生活」をやってみることにした。


これが案外楽しかった。環境に良いことをしている「心地よさ」と、台湾に溶け込めている「現地人感」が私の感覚を緩やかに刺激したのだ。最初は意識してレジ袋を使わないようにしていたけれど、だんだん意識しなくても生活の一部としてエコバッグを使うようになった。

それと同時に「レジ袋に対する嫌悪感」を感じるようになった。それくらい自然に、エコバッグが、エコへの関心が私の中に染みついたのだ。


こんなことを書くと、台湾はエコな国だ、と誰もが思うだろう。国を挙げて環境問題に取り組んでいるのだから、そう思われるのも当然のことだ。

しかし、光あるところには影がある。華々しい「環境に対する配慮」の裏にはニュースでは伝えられない暗黒面がある。実際に台湾に住んでいたからこそ、実感したことがあるのだ。








台湾には日本にはない文化がある。「飲料店」と言われるもの、日本では「タピオカ屋さん」「ドリンクスタンド」と言われるアレである。

日本では高級品・インスタ映えする飲み物だという感覚だけれど、台湾では安価で日常的に飲むもの、という印象だ。私たちがコンビニや自動販売機で飲み物を買うのと同じように、台湾人はドリンクスタンドで飲み物を買う。台湾では一杯50元(日本円で約170円)!激安!日本の3分の1で買えてしまう。

ゆえに台湾人は1日に数杯飲む、なんて人が多い。実は私もその1人で、1日3杯飲んだこともある(それで10キロ太ったことは秘密……)。


このドリンクスタンドが曲者なのだ。カップも、フタも、ストローも全てプラスチック。

ゴミの分別精神がしっかり根付いている台湾。ドリンクスタンドのカップが道端に捨てられていることはほとんどない。でもプラスチックが大量に使われ、大量に捨てられていることは事実だ。ドリンクスタンドは、台湾の素晴らしい文化であると同時に「プラスチックゴミの元凶」なのだ。





ただ、台湾も黙っちゃいない。マイボトル値引きをしたり、ステンレスのタピオカストローを販売したり……結構がんばっている。2019年7月からプラスチックストローの使用制限に踏み切ったのは、英断だと思う。


エコ関連商品の中でも、特に種類が多いのはストロー。ステンレスやガラスのようなオーソドックスなものから、竹製のものまで。観光客向けのオシャレな店でも当たり前のように売られている。

ストローの中が汚くなることも想定し、ストロー専用のブラシまで売る徹底ぶり。台湾全体にしっかりと浸透させたいという思いが伝わってくる。(写真は日本のもの)

台湾人の知人はガラスのストローを使っていて、「見た目もキレイだし洗えば大丈夫だ」と言っていた。しかし、マイストローはまだ浸透しきっていないのが現実だ。街中で使っている人を見かけたことはない。今は環境問題に敏感な人しか使っていないようだ。

エコが大好きな私も使ってみたいなぁ…と思ったのだけれど、外出中に使った場合、外で洗わないといけないんですよ……洗う場所がなければ、ベトベトのまま持ち運ぶことになる。面倒……そして不潔(泣)。

国民全員がマイストローを持つのはまだまだ先のようだけれど、取り組みを推進していく姿勢は日本も見習うべきだなぁ…と。





一方、日本はどうだろうか。今も昔もプラスチックで溢れている。スーパーには過剰包装が溢れ、大量のプラスチックだらけだ。スーパーに行くと野菜や果物がプラスチック容器で丁寧に包装されている。それに加えてレジ袋。言い方が悪いかもしれないが、プラスチックに依存しているといえるのではないだろうか?


とはいえ、こんな記事も。

「プラスチック排除」信者には耳が痛い話。しかし、この記事にはこんなことも書かれている。



「プラスチックは今も往々にして、最も効果的な素材だ。例えば、プラスチック製の袋に包んだきゅうりは14日以上長持ちするので、食品ロス削減につながる。(中略)一貫性のある廃棄物・資源戦略とは、単にプラスチック利用を減らすことだけではない。自分たちが買うものの環境負荷をどう減らすか、これを最優先することだ」

「環境負荷を減らす」ことが大事だ、と。単に「プラスチックが悪」「エコだから良い」なんていう単純なことではない、と。つまり私たちに必要なことは「環境負荷が少ない方法を選ぶ」ことなのだ。

「プラスチックが絶対悪」だとか、「マイバッグじゃないとダメ」ということではない。

プラスチックゴミまみれの台湾では「プラスチックゴミは悪」だったけれど、プラスチックの袋に包まれたきゅうりは長持ちする。時と場合によっては、プラスチックにもいい面があるのだ。

このように物事を多角的に見て「環境負荷が少ないもの・方法を選ぶ」ことが大切だ。

プラスチックイコール「悪者」ではなく食料廃棄を助けてくれるヒーローでもある。「絶対悪」だと思われがちなものこそ、いい面がないか注視してみよう。そうすれば人生はもっと深く、楽しくなるはずだ。




文章・文章中の写真 こうた(@coutan__

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