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令和における国際協力のキャリアの悩み

国際協力のキャリアを目指す人から、最近「仕事とプライベートの両立をどうすればいいですか?」という悩みをよく聞く。

これは共働きがあたり前になった、今の時代だからこその悩みかもしれないし、ロールモデルの不在という点も関係しているのかもしれない。

特に、国際協力の仕事は “海外現場(特に開発途上国)に行く” という一般的な日本企業での勤務とは異なるアクションが加わる。この時に、パートナーとの生活を両立する工夫はさまざま思いつくだろうが、難点なのは「子育て」にある。

日本の企業・組織では、だいぶ産休・育休制度が法改正などもあいまって整備されつつある。そのため、制度の該当期間における子育ては、“男女ともに参画しやすくしよう” との動きが進んできている。これは、国際協力業界も同じである。

ただ、職場復帰後は家庭内でやりくりをしていかないといけない。その際に、中長期での海外出張もしくは駐在がある国際協力に従事するとなると、子育てのための制約が多かったり、子どもの健康や教育などを考えたり、パートナーへのさまざまな負担(キャリア面も含む)など、男女ともに悩んでしまうのだ。

●国際協力における「35歳」という軸

さらに、国際協力のキャリア形成を考える際には「35歳」という年齢軸が存在する。

例えば、外務省が所管している日本人限定枠の国連へのキャリアパス制度であるJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)派遣制度の年齢制限が35歳であったり、日本政府としての国際協力である政府開発援助(ODA)、それを実施する国際協力機構(JICA)でのプロジェクトにおける若手人材の定義が「35歳~45歳」と設定されていたりする。

つまり、国際協力のキャリアを考える際には、「35歳までに」自らの専門性の確立を図らなくてはいけないのだ。

そうなると、必然的にキャリアを磨く時期が「23歳~35歳」となり、この間に “海外経験(青年海外協力隊など)” や “修士号取得(大学院)”、“社会人経験(専門的な経験)” を積み重ねていく必要がある。

数字だけみれば大学卒業から12年と、ゆとりがあるように感じるかもしれないが、この期間で青年海外協力隊への参加と大学院進学を選択した際に、応募期間や合格後のギャップタームなど考慮すると4~6年は自動的に消化されてしまう。

また、大学卒業時のファーストキャリアが、自らが志す専門性と異なる分野であるならば、そこもゼロから実務経験を積み重ねなくてはいけなくなる。

そうしている内に、あっという間に「35歳」を迎えてしまうというケースは多い。

なので、国際協力業界で活躍する先輩を見ると、全員ではないが、家庭内のやりくりを考える以前に「仕事としてのキャリア」か「家庭(プライベート)のキャリア」のどちらかを犠牲にしている人も見受けられる。

もちろん犠牲にしているわけでなく、選択している人もいると思うので、それを否定しているわけではない。

ただ現実的に、ロールモデルが見つけられずに「仕事とプライベートの両立をどうすればいいですか?」との悩みが生まれているのだとも思う。

※こうしたロールモデルの可視化という観点から『国際協力キャリアガイド2021‐22』では「子育て座談会」を掲載。(現役の開発コンサルタント、JICA職員、NGO職員の方の声を載せている)


●パートナーシップから考える

ただし、そうした現状だからといって希望するキャリアを諦める必要はまったくないし、むしろ日本人はもっと欲張ってもいいとも考えている。

実際、海外に目を向けると、お互いのキャリアの希望を尊重し「主婦 ⇆ 主夫」を交互にしている家庭や専門性を生かしてパートナーに海外転勤があっても同行し、新天地でキャリアチェンジする人などもいる。

最近は『デュアルキャリア・カップル』という本が、国際協力界隈では共感を呼び話題になっていたので、ぜひ読んでみてもらいたい。

一方で、「結局、それは海外での話でしょ・・・」「そこまでは頑張れる気がしない・・・」と現実離れして、気が引けてしまう人もいると思う。

ただ、このキャリアの悩みは、冒頭にも記述した通り、共働きがあたり前になっている日本においては国際協力業界に限らず、誰しもが持つ悩みでもあるし、『デュアルキャリア・カップル』という書籍が存在するように世界共通の悩みでもあるのだ。

だからこそ、その解決策を模索し、提示してくれている人も多い。なので、簡単に諦めずにそれぞれにあったスタイルでキャリアの自己実現を目指してほしい。

国際協力業界でのロールモデルはまだ少なく、私自身も数名にしか話を聞いたことがないが、仕事と家庭を両立している人の共通点としては、パートナーと「実現したいキャリアは、どんな姿なのか」の共有をはじめ、それを互いに尊重し、支えていくための手段はなにかを話し合い、使えるツールやサービス、行政制度はあるのかといった情報収集と共有などを行っていた。

つまり、「パートナーシップからキャリアを考える」ということなのではないかと個人的には考えている。

そう考えている中、コンテンツ制作者として何かを発信していきたいと思い、『共働きのすごい対話術』の著者でもあるあつたゆかさんに協力してもらい、「互いのキャリアを諦めない夫婦のあり方」という授業コンテンツを制作。

パートナーシップからキャリアを考えるための「パートナーシップとは」という点が学べると思う。


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