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妄想風味

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冬の到来

冬の到来

花は枯れて沈んでいる
僕のかつての幸福は葬られた
空が泣いている
孤独な星々が青白くまたたき
それもやがて灰色の中に沈んでゆく
もう僕は歌う事もできない
黄金の弦は損なわれた
冬の初めのひどい寒さに
僕の心は耐えられなかった
黒い木々は悲しげに揺れ
美しい小鳥たちは飛び去った

影法師

影法師

太陽は暗く病み
すでに薔薇の季節は過ぎ去った
晩夏の夜は蒸し暑い
長く寂しい旅から戻っても
僕を迎えてくれる者は誰もいない
僕の心は陰鬱に語りかける
また旅へ出ようと
ここは僕の場所では無いと
家の中は静まり返り
死神が歩き回るかのよう
旅を続ける時が来た
ただ僕の心がためらっている
夜の風は木々を揺らし
他には死んだ沈黙があるばかり

私は記憶を手繰る度…

私は記憶を手繰る度…

私はなんでも、思い出します
オタマジャクシの足、トンボの赤茶けたいろ、
図書館の外で、シロツメクサを見ていたあの時
みんな、みんな、思い出します

そして、その度、淋しくなります
もう二度と、あの時は訪れないから
もう二度と、あのしあわせは来ないのだから
あの幸福は、去ってしまったのだから

私には、もう幸せなんて、訪れないでしょう
私には、もう人を愛する時は、来ないでしょう
全ては、悪い、夢のよ

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孤独、慰めのない、孤独。

孤独、慰めのない、孤独。

人は皆、他人に対する恐怖を抱えながら、それを隠して生きているのだろうか。
そうなのであれば、何故皆、発狂することもなく耐えていけるのだろう。
私には、他人が怖い。
しかし、一人になるのも同じくらい怖い。

人には誰でも裏がある。
それは人間が社会で生きていく上で当然のことである。そして、自分を見ていて何よりもよく分かる。
表では仲睦まじく、冗談ばかりを言い合い、 喧嘩などしたこともない。し

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自分自身を無にするということ。

自分自身を無にするということ。

人生とは、下降運動である。この世に生まれ落ちたその瞬間から、その身が汚泥へと成り果てるその時まで、人は絶えず下へ、下へと落下を続ける。この力は、「重力」のようなものである。
いかにしてその力から逃れられようか。
いかにしてその力から免れられようか。
ーただ、「恩寵」によってのみ、である。
「恩寵」とは、満たすものである。
しかし、恩寵を迎え入れるには擬似的な真空状態が必要である。それは、全てを捨て

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愛するものを、自らの手で作り上げたいという欲求は、神を模倣しようとしていることに他ならない。

しかし、それは偽物の神である。

他者を通して、自分自身を愛するということ。

人は、自分自身を愛することはできない。
わたしたちは、ただ他のものを愛することが
できるのみなのである。
ここに、わたしたちの悲惨がある。
他者が私たちを愛しているから、わたしたちは
他者を愛さなければならぬのではない。
他者が私たちを愛しているから、わたしたちは
わたしたち自身を愛さねばならぬのである。
この回り道がなければ、どうして自分自身を
愛することが出来よう。