06 ロード・オブ・ヘブン
イヴァンは大きなため息をついた。というより、溜め息をつくしかない状況なのだ。真横にいる上官に、着任早々文句を言えるはずもない。ささやかな抗議は溜息でしか表せないのだから。
「ボンベ持ってきただろ? 巡回エリアに着く前に使っておきなよ」
しかしくだんの上官であるエーレは、初勤務となる部下の溜め息の理由を、軽い高山病だとずっと思っているのだろう。それは間違っていない。確かに間違えてはいなかったが、正確でもなかった。
「……はい」
無難に頷き、イヴァンは視線を下へ向けた。そこ