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あるなにもない一日

なんだかよく眠れる。起きてぼやけた視界で見た時計はだいたい9時ごろ。ああ、まだそんな時間、と思いまた布団にくるまり束の間幸福を感じて眠りに落ちる。また目が覚めて見た時計は12時ごろ。ああ、眠り過ぎてしまった。そう思う。いくらなんでも午前中眠っているのはなかなかだ。自分、やってしまったなと、これから1日が始まるタイミングで気分に陰がさす。枕元に置いてあった読みかけの本を手に取ってキッチンに行きお湯を沸かして顔を洗って煙草を吸いながら読む。お湯を沸かす火が温かい。換気扇の音とやかんの中で沸くお湯の音が今日も彼女の体に刷り込まれていく。じゅわじゅわと沸騰したお湯が沸かんの側面にはねて火を止めて、カップにフィルターをセットして豆を入れて湯を入れる。今日も変わらないコーヒーを飲んでやっと1日がはじまった。
窓を開けて外を見る。青空で気温も低くない。出かけてもいいかもしれない。たくさん眠ったから体がぎしぎしと痛む。いつもならそろそろ空腹を感じるはずなのに感じないのも寝過ぎだからだろうかと思いながら音楽をかける。ベースの音はいつ聴いても落ち着くと思う。読みかけの本をまた読み始めながらコーヒーを飲む。

気づくと14時で、もう14時でこれからどこかに出かけようかと1時間くらい考えて結局お腹が減ってしまい中断する。冷蔵庫の中にあったベーコンと卵を焼く。パンを焼く。牛乳を入れる。15時に食べる今日の一食目はなんとも言えないだらしなさというか、一人暮らしの極致のようなどうしようもなさを感じて陰がさす。ぼうっと本棚を眺めて気になる本を手にとる。読む。面白い。読む。時計を見る。17時だ。もう外に行くのはやめようと思いはじめる。本を読むのをやめる。テレビをつけてみる。夕方のニュース。しばらくすると寿司屋の特集が始まる。美味しそうだ。マグロよりウニが食べたいと思った。レポーターの女性はどこか昭和風だなと思った。ああ、この人たちは今日も変わらず働いて偉いものだなんて、しみじみと思う。

またお腹が減ってもう夕食を作ってしまおうとスパゲティを作る。出来上がるまで30分ほど。いつもながら美味しいと自画自賛しながら食べて満腹になる。満腹になると動けなくなる。もう体の全てが食べ物の対応に注がれてしまって私はただのものみたいになってしまう。だから満腹になるのはなんだか気が引けるのだけれど、こんな日にたまにはいいかと納得させる。

さてそろそろたっぷりお風呂に入ってみようかなと思いはじめた21時前だけれど、また読みかけの本に手を伸ばしてしまいそうになる。

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