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気づくとぼやける

視界がぼやけるように頭の中もぼやけるけれど、ぼやけている視界も好きだったりするからぼやけている頭でも問題ないのじゃないかと思っている。けれど、実際のところ頭がぼやけているのは困ったもので、なにをしようということを決めるのにさえだらだらと時間がかかってしまって、そんなふうにぼやぼやしていると1日が何事もなく終わってしまうのが最近の彼女の習慣になっている。

視力の悪い眼で、そのまま外を歩くのも悪くない。
向こうから歩いてくる人はぼんやりとした輪郭でしかなく、太陽の光はフィルムカメラでピントを合わせられなかった写真みたいに大きな光の輪郭としてしか見えない、全てのものが輪郭だけになる世界だけれど、それでも彼女は意外と問題なく誰にもぶつかることなく前に進むことができるしそれぞれの輪郭がなんなのかを把握することができる。思っているほど彼女の頭は優秀で、あそこにこの輪郭があるなら自動販売機だ、なんて見えなくっても知ることができたりすることが新鮮で、普段どれだけのはっきりした輪郭を見て、その物や人を認識しながら無視して生活しているのだろうと少しの驚きを感じた。

頭がはっきりしないとなにもできなくなってしまうなんてよくいうけれど、ずっと頭がはっきりしていたらきっとおかしくなってしまうのだろうし、まあだいたいぼやけている頭でいいか、と思って、本当にはっきりしたいときは眼鏡をかけるように頭もはっきりさせることができればいいのに、そんな方法どこかにありそうだな、それができればとっても好都合だし、彼女が好きなぼやけた生活をうまく続けられるきっかけにもなるだろうと思った。

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