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真夜中-B

国道沿いを歩く人たち。
国道沿いはオレンジの街灯。真夜中なのにとても明るくて、車もそこそこ走っていて真っ暗な部屋の中から歩いて出てくると違う世界に来たような心持ちになる。反対側から歩いてくる人たちは飲み会終わりで終電はないから近くに住んでいる人だろうか、とか思いながら前を歩く人がちらちらと後ろを振り返るのはタクシーを止めようとしているのだと気づく。ガードレールに寄りかかりながら佇んでいる老女と目があう。

ポストの上に置かれた発泡酒の空き缶。
朝、駅に行くときにときどき置かれている発泡酒の空き缶。夜に誰かが飲んでおいたんだろうと思うくらいの珍しくない風景。夜中の2時にはもう置いてあった。これから6時間くらいあまり人が通らない場所でそのまま。朝になればたくさんの人になんでそこにあるのか、いつから置いてあるのかと思われて、誰かに回収されて捨てられる。朝まであの缶は一人でポストの上。

沿道に停まるタクシー。
ちょっと脇道に入ってタクシーが止まっている。空車なのだけれど車内に人影がない。気になって除けば運転手がシートを倒して眠っている。制服で眠っている。いまは3時でここは人通りがない。もう少ししたらどこか繁華街まで走って朝帰りの人たちを乗せるのだろうか、もう仕事は終わりにして帰るだけなのだろうか。きっと途中休憩なのだろうと思って歩き始めたけれど、じゃあタクシー運転手の勤務時間ってどれくらいなのだろうと急に不安になって心配になった。けれど歩いていたらそんな心配はすぐに思い出せなくなった。

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