和歌・舞い散る桜
「久方(ひさかた)の光のどけき春の日に
しづ心なく花の散るらむ」
古今和歌集・紀友則
(光ののどかな春の日に、どうして桜の花は落ち着く心を知らずに散ってゆくのだろう)
光のどかな
うららかな春の日に、
はらはらひらひらと桜の花が
散ってゆく
静寂の中を音もなく、
次から次へと
舞い落ちてゆく
まるで春の雪かと見るまでに
ついこのあいだ満開になったばかりで
そんなに急いで散ることもないだろう
そんなわたしの心をよそに
桜はせわしなく散ってゆく
降りゆく花びらをこの身に受け止めながら
わたしは見守ることしかできない
ひとり光の中で立ちすくみ、
ただただ儚い命をいとおしむ
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