小説「春枕」第七章〜冬ながら空より花の散りくるは(1)〜
冬。
じっと耐えて、春を待つ季節。
今年も冬将軍がやって来た。まるで心まで凍ってしまうかのような辛く厳しい寒さの中、行く場所もなく、僕•水原翔真は東京の街を彷徨っていた。
金が底をつき、もう何日も食事をとっていない。彼女に捨てられ、居候していた家を追い出された。僕にはもう、何にも残っていなかった。
あまりの空腹に耐えきれず、その場にしゃがみ込んでしまった僕を怪訝な目で一瞥して、人は通り過ぎてゆく。
そんな中、一人の女性が歩いてきた。凛としていて、とても美しい人だ。まる