小説「春枕」特別編〜海に入る難波の浦の夕日こそ〜
今日は祖父の命日だった。
祖父はとても長生きで、亡くなる前日まで元気に畑仕事をしていていた。夜に床について、そのまま眠るようにして旅立ったのだった。人は大往生だと言い、わたしもそう思ったが、それでも悲しかった。
わたしを可愛がってくれた人を喪ったことは、自分を形づくる大切なピースをひとつ失ってしまったようで、とても心細かった。
わたしはまだ若いせいか「死」というものがピンとこなかった。しかし、祖父の死によって、人間は本当にいつ死ぬかわからない、大切な人はいつか必ずいなく