藤崎殊海(Kotomi Fujisaki)

ずーっと名古屋在住のアラフォー。配偶者あり子供2人。新米管理職。アートのためなら国内ど…

藤崎殊海(Kotomi Fujisaki)

ずーっと名古屋在住のアラフォー。配偶者あり子供2人。新米管理職。アートのためなら国内どこへでも。読みたい本が本棚に入りきらず雪崩寸前。休日はブックカフェにいたい。なるべく美味しいものを食べたい。絶賛フェミニズム勉強中。なくせ全ての分断と差別。ハイボールは私の血液。

最近の記事

ポテトチップスの誘惑。

人生を共に歩んできたと言っても過言ではないお菓子がある。 それはポテトチップス。 私の身体についている肉や脂肪の大部分は、ポテトチップスでつくられている。そう断言できるほどに、長い長い年月をいっしょに過ごしてきた。 初めて口にしたのがカルビーのうすしおだったか、チップスターだったかは定かではないけれど、気づいた時にはスーパーで真っ先にねだるお菓子として上位を独走していた。 日曜日の昼下がりに、塾の帰り道に、ドライブの時に、あのガサガサ音を立てる袋が傍にないと落ち着かない。

    • 仕事終わらない日。

      仕事が終わらない、終わらなすぎて錯乱する。 会社にどんだけいるんだろう、実労時間は日に日にバグっている。 3月は期末且つ慣れない他部署の応援に出ていたこともあり、毎日緊張で肩がパンパンに張っていた。腰も痛い。 4月もそのまま応援継続と言われていた、ところに、急な人事異動。 私は元の部署に戻ることに。 しかも課長職。 昇格した時の心の叫びは前回書いたのでそちらを参照いただくとして、時は流れ4月がきた。 相変わらず仕事は終わらない。 次から次に現れる、大きい難問から小さい雑

      • ふたりの卒業式。

        3歳差でふたりの子供を授かった時、周りから「卒業と入学が重なってしんどいよ」の声が届けられたものだ。 まだ幼子のふたりを育てていた私は、そんな先のことを不安がっても仕方ないじゃないか、このタイミングで子供たちに恵まれたんだからそれはそれでいいじゃないか、と漏らしていた。 が、ついにその時はきた。 今月は中学校の卒業式と小学校の卒業式が重なり、来月はダブルで入学式がやってくる。 出費がすごい(主に制服)。 来月のカード請求はとんでもない額を刻むだろう。仕方ない。キリキリ働くの

        • 昇格手前の日。

          先週のこと。仕事に追われる慌ただしい昼下がり。 いつの間に近づいてきたのか、はっと気づくと間隣に部長が立っている。存在を認識したとき、軽く冷や汗をかいたのが分かった。ひんやり、という言葉がしっくりきすぎる。 なんでしょうか、と問いかけた私に 「手が空いたら会議室まで」 それだけ告げて去る部長。 宣告された瞬間、私の本音は「今すぐどうにかして早退したい」だった、が、逃げ帰ることはもちろん許されない。 実は降格します、とかかもしれないし…他の人の異動の話とかかもしれないし… 自

          風邪で滅入る日。

          いっそ陽性ならすっきり受け入れられたのに、検査結果はどちらも陰性。 「風邪ですね。お薬どうしますか?」 コロナでもインフルエンザでもないとあってか、さっきより先生の声も冷たく感じる。 どうしますかって、そりゃあ欲しいよ、お薬。 そう言いたいのをぐっと堪えて「喉と鼻水の薬と、鎮痛剤をください」と返した。 長々と不調が続いている。 あともう少し、ほんの少しで完治しそう、と思いながらティッシュとのど飴が手放せない。そんな日がもう2週間以上。 我が家は風邪と花粉症が入り乱れ、どんな

          忘却の日。

          いる。 『思考の整理学』が。 さっき本屋で買おうとしていた本が、なんと自宅の本棚に存在している。 5秒くらい静止した後で「…まじかよ」と、独りごちた。 40代も半ばになろうとしている。 日々、唖然とするほど、記憶が抜け落ちる。 会社で「あっそうだ、」と立ち上がった瞬間に「…何しようとしたんだっけ?」と動作が固まる。 「あれやらなきゃ、」とパソコンを開いた瞬間に「えっ、なにするんだっけ」と自分へ問いかけ。 脳がピンピンしている世代からすると、そんなことあるわけないじゃないかと

          掬い上げられた記憶『いつか記憶からこぼれおちるとしても』(江國香織)

          物語の端々にひっそり佇む、あの頃の日常。 17歳の女子高校生が書いた日記を読んでいるかのような。 江國さんは好きな年齢にいつでも戻れる術を持っているのだろうか。それとも記憶力が私より遥かに遥かに優れているのかもしれない。 父親といる妙な居心地の悪さや、母親からの誘いにはしゃいでみせる気の遣い方。 傘がなくなるだけで大事件になる教室。 今とは全く異なるものの見方をしていた。大切に思うもの、優先するもの、後回しにするもの、全て違う。17歳と社会人ではこうも違う。それを鮮明に描く

          掬い上げられた記憶『いつか記憶からこぼれおちるとしても』(江國香織)

          お風呂に浸かる日。

          お風呂に浸かるとお酒が抜けるってほんとうなんだろうか。 酔っ払った翌朝にお風呂へ入る。と、いつも思い出すのは『のだめカンタービレ』で千秋が「風呂で酒抜いてこよ」というシーン。なんてことない場面だけれど、お風呂の湯気に混じってアルコールが飛んでいくのを千秋先輩と共に浮かべる。 本気の二日酔いでは湯船に入るだけでも決死の覚悟になる。 今回はさして飲んでいない。だから回復も早い。 「もう少し気を遣ってほしい」と数日前に真正面から批判を浴びせてきた、例の相手から誘いがあった。ご飯行

          お風呂に浸かる日。

          胸に雨が降る日。

          身体はいたって健康だけれど、心の中がぼんやり不調な日がある。 今週のとある日はまさにそれで、これという理由とはなしに胸の中が少し重たい。 信頼して自分の本音を曝け出していた人から「もう少し気を遣ってほしい」と諭されたこと。 家の中に大の苦手としている虫が入ってきて、気が気じゃなかったこと。 娘の受験が近づいてきて、本人よりも親の方が緊張していること。 義父の他界後の費用を義弟と折半しないといけないのに、レシートや領収書の整頓がまだできていないこと。 そんな、少しずつの積み重

          閉ざされた過去で現在を生きる『ちょうちんそで』(江國香織)

          えっ、ここで終わるの? まだ続くと思って頁を捲ったら、解説が出てきて思考が一瞬止まった。 あ。物語はここでおしまいなんだ。 もうすぐ頂上、と言う手前で梯子を外されたような感覚。 それがこの本のはじめの感想だ。 雛子と絵里子が出会うところまで描かれると思い込んでいたから、こんなに驚いたんだな、と推察する。 なんの関連もないと思わせて、だんだん結びついていく登場人物たちの描写はあまりに見事。ちゃんと読者が気づく隙を、ここぞの場面で差し込む。流石江國さん。 それにしても正直の

          閉ざされた過去で現在を生きる『ちょうちんそで』(江國香織)

          片親の子がグレる、とは限らない話。

          父親の顔を知らない。 と言うと、かなりの確率で「あっ…聞いちゃいけないこと聞いた…」という表情に出くわす。 当の本人は何とも思っちゃいない。家庭の話とはそういうものだ。 本人はもうその状況に慣れて、というよりそれが当たり前で生きている。 だから、そんな「しまった」みたいな顔をされると、こっちの方が「ああしまった、言わなきゃよかった」などと感じてしまう。しまったの応酬。 片親、幼少の頃は祖父母に育てられ、かつて自分の母親は夜の水商売。 ここまで聞くと、その子供=真っ直ぐ育て

          片親の子がグレる、とは限らない話。

          親業の分担度合。

          読書会に参加していたら、急にスマホの着信が。 マナーモードにしていたとはいえ、手首のウェアラブルウォッチが振動することで一気に本の世界から現実に戻される。 慌てて画面を確認すると、子どもたちが通う塾。 何か重要な話かと思い、静かな空間の隅っこに移動して「もしもし…」と小声で出てみる。 相手は塾の校長だった。 「明日の漢字検定、お子さん遅れないようにお越しください〜」 ………え、それだけ? 母親業を始めて15年以上になる。 お腹の中に生命が宿るという、何物にも変え難い体験をさ

          活字を浴びる日。

          年に数回かかる病がある。 「活字読まないと死ぬ病」とでも言おうか、とにかく本が読みたくて読みたくてたまらない状態に陥る。 今年は年始早々この病が1ヶ月続いた。 1月に読んだ本は17冊。 これは過去の私対比で相当多い冊数。 1冊しか読まない月もある中で、この数字はかなりの快挙だろう。 ジャンルもバラバラで、小説から子供向けの教育本、エッセイや日記、ZINEに絵本、自己啓発本から難民問題まで幅は広すぎるくらい広い。 目につく興味がある本、信頼できる方にお勧めいただいた本を片っ

          娘とあるく日。

          ついに娘の受験が始まった。 まずは滑り止めの私立を2校受ける彼女は、最初「ひとりで行くから大丈夫」と言っていたけれど、私の方が頼み込んで駅まで送らせてもらうことになった。 とにかく心配で仕方がない。 自分のことじゃないが、自分のことより気を揉んでいる。毎日こねこね揉みすぎて、もう何か生まれてしまいそうなほどだ。 初日は駅までの予定が、着く寸前に「学校まで来てくれたら、それはそれで、嬉しい」と漏らしてくれたので、聞き逃さずくっついていった。 どんな学校なのか、ぼんやりとしか調

          自分の根元と向き合う予感『はーばーらいと(吉本ばなな)』

          時間をかけてでも読むつもりで開いた、けれど、予想に反して90分であとがきまで辿り着いた。 本を閉じた後、しばらく宙を見つめてぼうっとしていた。 落ち着いて読もうとしても、手が、目が、脳が、止まってくれない。 全身で頁を捲り続けるような本がある。これは、まさにそんな本。 まるで映画の始まりのような本の構成にも、してやられた。 これをばななさんが考えたのか、他のどなたかが考えたのかは知らないけれど、完璧な幕開けだった。 人を救う、と書くと、どうしてもヒーローの姿が過ぎる。

          自分の根元と向き合う予感『はーばーらいと(吉本ばなな)』

          軽く魔女の一撃の日。

          腰がとんでもなく痛い。 ぎっくり腰ですか?と言われるけれど、経験がないので否定も肯定もできないでいる。 正確には、左側の腰とお尻の間の部分が、ピシッとかピキッとか音で表現するなら高音な痛みを放ってくる。 朝起きた時はなんともなかったのに、夫と娘のお弁当を作っていたら、じわじわ痛みが攻めてきた。気のせいかと思ってストレッチしてみたり、安静にしてみたりしたけど、効果はなく。 全く歩けない、とか全く動けない、ではない。 けれど、動こうとすると暫く固まる。 どうにか出社したけれど、

          軽く魔女の一撃の日。