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人は引きこもるとこうなります。

僕は25歳から26歳までの2年弱、引きこもっていた。
いまだに自分でもよく社会復帰出来たものだなぁと思うことがある。

大学卒業後に入社した地元の銀行を2年で辞めた。元々自分の肌には合わないと入社後3日で理解したので予定通りではあった。

思えばろくなことがなかった。
15時の締め作業で1円足りないと皆で大騒ぎしたり、
就業中にせっかく僕が良い気分でトイレで隠れてタバコを吸っているのに、それをコソコソ確認しに来たり、
ネットゲームのやり過ぎで眠たかったから窓口業務中に寝ていた時に、「窓口の男性が寝ているとクレームがきてます」なんてメモ紙がさっと回ってきたり、
ネットゲームのやり過ぎで朝に起きれなくなって、仮病で休んだだけなのに、次の日出社時に、「コトブキ君、精神的に大丈夫なの?」とか馬鹿かよ。

あげく最後の人事部長との面談では「お前は辞めると思っていた」
で?

そんなこんなで晴れて無職になった。当時、僕は実家から少し離れたところで独りで暮らていた。
最初は快適な独り暮らしだった。貯金は100万円ある。きっと僕にぴったりの仕事がむこうからやってくる。

僕はルンルンでネットゲームに夢中になっていた。

こんな目次絶対おかしい

1 失業手当の手続きがだるくなる

ハローワークへは1度行ったきりであった。
今はどうか分からないが、当時はいろいろと失業手当の手続きが面倒だった。
こんなに面倒ならいいや・・・ 家でネットゲームやろう。
ハローワークへは1度行ったきりであった。

2 昼夜が逆転する

基本的に、起きると同時にPCの電源がONになり、寝ると同時にPCの電源はOFFになる。いや違う、厳密にはネットゲームで露店を開いたまま寝るので常にPCの電源はONのままである。

3 コンビセット(マクドナルド)しか食べなくなる

当時は250円でハンバーガーとポテトMのセットが販売されていた。
こんなにコスパの良いセットはないだろうと僕は節約の為に喜んで食べていた。
100万円あった貯金はあと60万円か・・・
大丈夫だろ。きっと僕にぴったりの仕事が向こうからやってくるさ。
だって僕は東北大学の法学部出ているんだし。

4 エロゲーにはまる

ネットゲームとエロゲーを呼吸するかのごとく繰り返す。つよきすは名作だった。ギャグの勉強にはなったと思う。
「売れない声優さんは大変なんだなぁ」と思いながら馬鹿みたいにしゅっしゅとバットを振り回していたような気がする。記憶も白濁である。

5 エロゲーを物色しているところを母親に目撃されて声を掛けられる

地元の駅前にシーガルというゲーム屋があった。そこの奥には18禁シリーズ
がずらりと並んでいた。
ある日、僕は貴重な命のお金を払ってでも買うべきエロゲーはどれだろうと必死で探していた。こんな姿、親には見られたくないものである。

「ちょっとコトブキ!」声と同時に背中を叩かれる

そこには母親が立っていた。よく覚えていないが笑顔だったと思う。
自分の息子がちょっと変な雰囲気のコーナーにいたことよりも、自分の息子
の顔が見れたことの嬉しさが勝ったのだろうか。

なんでもシーガルの店の前にあった自転車が僕の自転車に似ていたから入ってみたそうだ。僕の自転車だよ。正解だよ。

ちなみにこの件は僕の両親と僕の姉二人にしっかり把握されているはずなのだが、誰もこの件を僕の前では口に出さない。優しい世界。

6 朝?とにかく突然起き上がれなくなる

脚気である。ビタミンB1が不足すると足が動かなくなる。
昨日まで元気だったのに目覚めると同時に足が動かない恐怖。
PCまで這いずり、調べてみたら脚気の疑いがあるとわかった僕は自宅の外の自販機でデカビタCを買った。イッキに飲み込んだら10分後に足が動くようになった。病は気から。デカビタCには今も感謝している。

7 両親が振り込め詐欺に遭う

ある日突然母親がやってきた。部屋の散らかり具合に発狂しながら掃除をしてくれた。

母「で アンタ 山田君の件はどうなったの?」
僕「え? 何のこと?」
母「え? アンタ 地下カジノにハマって借金して山田君って子にお金借りたんでしょ? 」
僕「え? 地下カジノ? なんのこっちゃ 僕に山田なんて友達いないよ?」
母「え? え? 本当なの?」

ことの顛末はこうだ。

ある日、コトブキを名乗る人物から、全く知らない電話番号で自宅に電話がくる。
「あ お母さん 携帯なくして新しくしたから登録し直して」
両親ともに僕の携帯番号を登録し直す。

またある日、コトブキから連絡が入る。
「実は、地下カジノにハマって山田君に借金している。返済のめどが立たないからお金を貸してくれないか?山田君に直接振り込んで欲しい」

僕の父親は理論派であり、何でも疑ってかかれ というような人だった。
そんな父親も、そのコトブキと直接電話で話したにも関わらず騙された。
「本当にお前の声そっくりだったぞ」なんて今では笑い話になってはいるが、流石に90万円はしんどかっただろう。

僕が引きこもっていなければこんな問題は起こらなかったはずである。
両親も僕のことを心配していたはずだ。そこにタイミング悪く詐欺に遭ってしまった。

8 トイレが詰まる

この話をするのは本当に気が引けるが、会社の同僚に話してみたところ大うけだったので書いてみる。汚いものは苦手な人は絶対に読まないほうが良いです。

ある日のこと、電子ジャーを開けたらカッチカチのご飯の塊が残っていた。僕はトイレに入れて水を流した。何でもトイレに流して捨てる習慣だったと思う。
しかし今回ばかりは流そうとした物が悪かった。トイレが詰まってしまったのだ。
僕はどうしたかと言うと、なんとそのままにしたのだ。

そのままにしながら用を足し続けたのだ。

それから多分3か月か4か月くらいだったろうか。便器がものでいっぱいになってしまったのは。
僕は引きこもって以来、初めて「面倒臭いなぁ」と思うことをやった。このことは今でも鮮明に覚えている。昨日のことのように覚えている。

ビニール袋を用意する。すくうものを用意する。せっせとくみ取る。精神状態は本人的には正常であった。でも周りからすれば精神異常者の行動だったろう。
幸いなことに、僕のアパートの周囲は田んぼだらけであった。深夜にアパートを抜け出して僕は田んぼに肥料を撒いた。お手製の今っぽく言うところの熟成肥料だ。
「誰かに見られたらそうとうまずいなコレ」
それははっきりと自覚していた。

9 親友から金を借りる

いよいよ金がなくなり、独り暮らし引きこもり生活が困難になる思った僕は親友から金を借りた。30万円借りた。(ちなみに30万円は返済しています)
僕はこの生活をまだ続けることが出来ることに安堵した。そして

振り込め詐欺の90万円 もったいなかったなぁ

なんて思っていた。糞野郎です。ウシジマ君に出てくるダメ人間みたいだ。

10 いよいよ実家に戻る

ついに金がなくなった。借りた金もなくなった。引きこもって1年は経過した頃だったと思う。僕は実家に戻った。

あーぁ これで好きな時に好きなだけネットゲームとエロゲーが出来なくなるな エロゲーはいつやろうかな

そんなことを考えていた。
僕の生活リズムは改善されるはずもなく、僕は深夜にひっそりとネットゲームとエロゲーにいそしんだ。両親はとても訝しんだ。当たり前だ。

11 両親もおかしくなる

想像してみて欲しい。自分に子供が産まれて、一生懸命働いて稼いだお金を惜しみなく子供につぎ込んだり。一生懸命自分の時間をひたすらに育児につぎ込んだり。愛情を注ぎ続けてそんなことを25年もしてきた結果、その子供が定職にも就かず、家の2階で深夜にゴソゴソやっているだけの生活を送っていたらどうしますか?

両親も感情的になることが増えた。僕は黙って全部聞いているようで、ひたすらに聞き流そうとしていた。全部自分が悪いことは自覚出来ていたので黙ることしか出来なかった。

いつか勝手に向こうから来るはずだった、僕にピッタリの仕事
そんなものがあるわけないのだ。

僕は一体どうなるのだろうか。ひたすら逃げ続けてきた。ひたすらに逃げて逃げて逃げて。
どこまで逃げることが出来るのだろうか。
いつまで逃げることが出来るのだろうか。
そして自分の人生がすでに終わっているのではないのだろうかということを
思い出してきた。
それと同時に

あぁ いつ死ぬかの問題なのかな

なんて思うようになった。


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