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短歌と和歌と

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中学生向けに和歌・短歌を語る練習をしています。短歌は初学者。和歌は大学で多少触れたレベル。
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#慈円

《新古今集》月と涙

《新古今集》月と涙

いつまでか涙曇らで月は見し
秋待ちえても秋ぞ恋しき
    (秋歌上・379・慈円)

 月はまぼろしをまといます。遠くの友人、親兄弟、そして恋人。
 しばしば自らの憂愁も投影されます。
 だから『新古今和歌集』にもこんなやりとりが載せられました。

 月を見てつかはしける      
見る人の袖をぞしぼる秋の夜は
月にいかなるかげかそふらん
    (409 藤原範永朝臣)
   返し
身にそへ

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7月22日(木) 慈円の鵜飼舟

7月22日(木) 慈円の鵜飼舟

 ほととぎすと五月雨の時期が終わります。夏の葉が茂り暑さが本格化する夏が来ます。『新古今和歌集』の夏歌もようやく多様性を見せ始めました。

鵜飼舟あはれとぞ思ふもののふの八十宇治川の夕闇の空
               (新古今集 251 前大僧正慈円)

 この歌は三つのアイディアとそれを貫く一つの物語で構成されています。一つ一つ確認しましょう。

1,鵜飼舟あはれとぞ思ふ  鵜飼いは『万葉集

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3月22日 先生の仕事と慈円の孤独な桜

3月22日 先生の仕事と慈円の孤独な桜

 長く休んでいる子に電話をかけた。

「元気かい」
「ええまあ」
「どうするか、こっから」
「いや行きますけど、普通に」

 決してご機嫌に応えてくれたわけではない。でも「普通に」が心に残ってジンジンと暖かい。

 後で母親にも電話をした。「普通に」を伝えると、意外そうに喜んでいた。時間が解決するものもあったのかもしれない。

陽だまりに置かれた椅子は身に熱を帯びて座られるのを待ってる

☆  

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1月26日 僕のいきかたと慈円の夜闇

1月26日 僕のいきかたと慈円の夜闇

 4歳の息子に「こどもちゃれんじ」体験版が送られてきた。一緒にやった。

「いきかたをかんがえよう」はベネッセに突きつけられた僕らの問二

 いきかたは4通りあるらしい。スタートからゴールまで、中には回り道も含まれる。

☆   ☆   ☆

 生き方に悩む歌を、『千載和歌集』雑部に取材した。

月かげの入りぬる跡に思ふかなまよはむ闇の行末の空(一〇二一 法印慈円)

 400年続いた貴族の世が終

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《和歌日記》2020年12月30日

《和歌日記》2020年12月30日

 年の瀬。

 最高気温が20度前後を記録した一昨日、昨日から一転。今日はずいぶんと冷え込んだ。昼間から雪が散らつき、日が暮れてからの冷え込みは、凄まじい。

 帰省も旅行も諦めた今年。それでも公園に行き、釣りを楽しみ、ニンテンドースイッチで勝負し、ドンジャラで盛り上がった。未曾有の災害に襲われようとも、子どもたちのエネルギーは煮えたぎる。
 とはいえ、年の暮れに子どもの元気な姿を見て救いを感じて

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