人格

あーあ。
俺って馬鹿なんだ。
馬鹿でアホで何もできないんだ。
何かあったら過呼吸になって。
少しタフな動きしただけで知恵熱出て。
みんなそんなこと知ったこっちゃないから何だこいつってなる。
周りで見てる大人なんてそんなこと見えないから。
お前って頭いいよな、お前って仕事できるよな、ってなるのかな。
俺はそんなことない。
むしろ頭は悪いし、仕事だってできない。
仕事しなきゃの一心で動いて。
子供のために嘘ついて。
偽善者ぶってカッコつけて。
少し大げさにコミュニケーション取れば子供は喜ぶんだ。
なついてくれても好いてくれても。
そんなの嬉しくない。
素の自分じゃないのに。
これが素だって当てつけみたいで。
子供の素直さに打ちのめされて。
それを大人が解釈して。
お前は仕事ができるとかお前は頭がいいとかお前はいいやつだとかほざくんだ。
俺は一切そんなことないのに。
バカみたい。
どうしてそんなこと言えるの。
素の俺だって見てほしい。
でも素の俺はきっと出てこない。
素の俺はとっても人が苦手で人を嫌がるんだ。
どっぷり信用してないと出てきてくれない。
出てこなかった嘘の自分は素の自分に嘘のマスクをかぶりまくる。
目だけは素の自分かもしれない。
でも。
口は。
鼻は。
耳だって髪の毛で隠れちゃって。
眉毛だって髪で隠れちゃって。
でも目だけは見せてあげられるのかもしれない。
マスク詐欺だ。
根本だけは一緒だからきっと目だけは見せてくれる。
でもそれ以外の部位はマスクのせいで見れない。
きっと俺の中の神様が外しちゃだめと鍵をかけているのかもしれない。
どうしてだろう。
どうしてそんなに隠しちゃうんだろう。
俺にだってわからない。
神様がいたずらして。
隠しちゃって。
そのまま鍵を捨てちゃうんだ。
そしたらその人とはそのマスクのまま喋らなきゃいけないんだ。
そしたら俺はマスクに嘘を塗り重ねて。
これはマスクじゃないんだよと言いながら。
嘘というマスクをかぶるんだ。
俺だって頑張ってマスクを取りたいんだ。
好きな人にマスクを取りたかった。
一瞬取れた気がした。
でもきっとマスクが取れた空気は酸素濃度が高かったんだ。
俺は何ヶ月も起こさないようにしていた過呼吸になった。
久しぶりの過呼吸だった。
今まで隠してきたのにバレてしまった。
俺は「大丈夫楽になったよ」という嘘を塗った。
大丈夫なわけがないのに。
過呼吸になって大丈夫なわけないのに。
大好きな場所で。
大好きな子どもたちの声を聞いたことがきっかけで。
大好きになるはずだった人の前で過呼吸。
隠してた本心が見えてしまって。
不倫のスキャンダルでファンが離れていく芸人のように。
その人への好きは憧れという本とのような嘘に変わってしまった。
悲しくて。
人に流されるという行動に移った。
意識する人ができた。
マスクを被った自分がその子とお似合いなんじゃないと。
甘い言葉に載せられて。
気になってしまった。
俺って馬鹿じゃないのかな。
嘘の自分が今までのパートナーとの糸をちぎってきたのに。

あーあ。
俺って馬鹿なんだ。

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