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帰路

それから、僕は数か月後、会社を退職した。

会社を辞める時は淡々と簡単に事は進んだ。会社にもう行かなくてもいいというのは安心ではなくて、周りからなんて言葉を投げかけられるんだろうと恐怖しかなかった。

退職してからしばらくして、僕は家の天井を一人で見つめていた。

自分のしてきた失敗がフラッシュバックして、気分が悪くなった。

一人でいるとどうしてもいやなことが頭を過り、気分が悪くなる。だからといって、どうする事も出来ないから、自分の中でそれを消化するしかない。

そんな事ばっかり考えていると、嫌気が差してきて、近況を話す為になんとなく地元の友達に電話した。

明るくふるまうようにして電話をしてはいたが、内心ではなんともいえない…苦しい感情が渦巻いていた。

だけど、それを押し殺して、僕は明るくふるまって笑い話にするように電話で話をした。

本当は、全部話したかった、だけど、話しても、それを口に出しても、自分がみっともないように思えてその言葉を飲み込むしかなかった。

もちろん、親にも…合わす顔が無いながらも話をしたし、そして、自分の力なさを噛みしめながら謝った。

親からは「帰ってこい」という優しい一言があった。

親から掛けられたその言葉の前に働いていた会社の社員からは「とっとと地元へ帰れ」という罵声を浴びた。

ほんとなら、親のその言葉を聞いて安心するのだろうが、僕はその時、其のことが頭をよぎり、胸が締め付けられるような思いになった。

情けなくて悔しさもあって、正直、人生ってこんなことの繰り返しなのかと気分が悪くなって、また、一人でいる家で涙が零れた。

こんな思いは二度としたくないと同時に僕は強く思った。

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このマガジンでは一般人と思っていた自分が体験した絶望とADDという精神疾患が発覚し、それと向き合うまでの話を書いています。同じような経験のある方に少しでも読んでいただきたいです。そして、少しでも前を向けるきっかけになればなと思います。

私自身がADDという精神疾患が発覚し、それと向き合うまでの体験談を書いています。福祉で働いている方や同じような疾患を診断され絶望された方が…

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