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オレは女が嫌いだが

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2020年7月の記事一覧

オレは女が嫌いだが 10

オレは女が嫌いだが 10

しがないサラリーマンの京平はひょんなことからアロハシャツの女探偵、朱里の助手にさせられる。朱里と京平は仕事のために神戸に向かうが、到着してみると別行動。京平を待っていたのは謎の人妻……。

「マサヒコ君!」

 女がこちらに向けて叫ぶ。マサヒコ? あー、オレじゃないな。

 そう思ってよそを向くと、またクラクションが鳴った。遂に女は車から降り立ち、こちらに向けて歩いてきた。ネイビーのワンピースから

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オレは女が嫌いだが 9

オレは女が嫌いだが 9

 二日酔いの朝、そしてなぜか朱里が我が家にいる朝。

 コイツ、無防備すぎる。

 例によって、オレの方が早く酔い潰れたのだろう。朱里に運び込まれて、寝ていたらしい。朱里はオレの部屋着を勝手に着ている。もう慣れたものだ。

 ゴールデンウィークが明けて、平凡な日々を過ごしていた。

 オレはちょくちょく、ゴールデンウィークの間も天に顔を出していたが、朱里は大阪に帰っているとかなんとかで一切現れなか

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オレは女が嫌いだが 8

オレは女が嫌いだが 8

「朱里、お前……!」

 オレは朱里の胸倉をつかもうとしたが、するりと交わされた。

「京平君、甘いことばっか言うて、甘い中で生きていくならそれでいいよ。人を傷つける覚悟がないと、この世間では渡り合えんよ?」

 朱里の言葉は、なんというか戦場の男のような重みがあった。どれだけ傷ついて、傷つけられて来たら、ここまで人を傷つける覚悟が出来るのだろうか?

 オレは純粋にそちらに疑問を感じた。

「怒

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オレは女が嫌いだが 7

オレは女が嫌いだが 7

 朱里に促されて店内に入ったのはよかったが、席についておしぼりをもらうと自分の情けなさがぶり返してきた。

 うつむいて、おしぼりを握りしめることしか出来ずにいると、朱里の顔が耳元に近づいた。そして吐息が耳にかかった。

 オレは瞬時に朱里から距離をとった。そうか、コイツとサシで飲むってことは隣り合って飲むってことか。

「林田有希、26歳。彼氏は大手飲料メーカー勤務。結婚の話は出ているものの、彼

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