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はじめてのシステム思考 #9 まとめ

VUCA(変動性,不確実性,複雑性,曖昧性が高い)時代と言われる現代、複雑な問題に対処する能力がますます求められています。そのような能力の一つであるシステム思考は、戦略,組織,政策,地域,持続可能性など様々な課題領域で、複雑な問題の解決に役立つ思考法です。
このマガジンでは、私が15年ほどシステム思考を学び実践してきたことをもとに、初学者向けにシステム思考の基本を紹介します。(周南公立大学で受け持つシステム思考の講義の一部をnoteにまとめたものです)

この連載を読んでいただきシステム思考を更に学びたいと思った方は、日本におけるシステム思考の第一人者・小田理一郎氏が経営するチェンジエージェント社のHPをのぞいてみるとよいでしょう。システム思考に関連する様々な情報発信やセミナー、研修などが紹介されています。

今回は第9回「まとめ」です。第1回から第8回の内容を振り返った上で、更にシステム思考の学びを深めていくとどうなっていけるのかについて、まとめていきます。


第1回~第8回の振返り

この連載の目的は、物事の複雑さを捉えるものの見方を知ることです。そのための具体的なゴールは、以下2つの図、氷山モデルと因果ループ図について理解し、使えるようになることです。連載の前半で氷山モデル、後半で因果ループ図について解説してきました。

システム思考とは、複雑な物事の大局、全体、根本を捉える物の見方です。システム思考が扱う「複雑な問題」には、いくつかの特徴があります。それは、結果が出るまで時間がかかる、多くの物事が絡み合う、堂々巡りや悪循環、人によって見え方が異なる、という特徴でした。皆さんの身の回りにも、このような複雑な問題があることを見てきました。

それを解決するためのシステム思考ですが、そもそもシステムという言葉は、目的を達成するために互いに影響し合う要素の集まりです。また、論理思考は分ける思考であるのに対して、システム思考はつなげる思考だという特徴も説明しました。

そして前半のキーワードである氷山モデルですが、これは問題を捉える視点の深さを示すモデルです。私たちが普段目にしているのは「出来事」の視点です。その下には、システムの主要な要素が時間の経過とともに変化する、パターンの視点がありました。さらにその下には、システムの要素を結ぶ因果関係の全体像を示す構造の視点がありました。さらに一番下には、私たちが持つ無意識の前提が認識や行動に影響する、メンタルモデルの視点がありました。私たちの周りにある複雑な問題を氷山モデルで捉えると、メンタルモデルが構造を生み、構造がパターンを生み、パターンが出来事を生んでいる、と見ることができます。

因果ループ図は、システムの重要な要素を因果関係で結び、構造を可視化するツールです。因果ループ図は、シンプルなパーツの組合せでできています。まずは変数。これはシステムの重要な要素で、増えたり減ったりするものです。次に矢印。変数の間を因果関係で結びます。原因の変数と結果の変数が、同じ方向で増減するなら「同」の矢印。逆方向に増減するなら「逆」の矢印になります。ちなみに、原因から結果に影響するまでに時間がかかる因果関係については、矢印に遅れを表す二重線のマークを付けます。最後にループです。因果の矢印が1周して循環する構造を表します。ループには2種類あって、どんどん増えたり減ったりする「自己強化型」と、ある一定レベルに落ち着こう・留まろうとする「バランス型」があります。

因果ループ図の作り方ですが、まずは問いを設定し、次に主な関係者を挙げ、関係者が気にする重要な変数を挙げ、それらを因果関係の矢印で結びます。矢印をループにして名前を付け、全体をなぞりながら修正していきます。注意点は、変数の抽象度が適切か否か?因果関係が適切か否か?です。最後に、問題の構造全体に影響を与えられる解決策であるレバレッジポイントを探ります。

第1回の冒頭に書きましたが、私はこの連載を通じて皆さんに、「目先のことや、誰かの言葉に振り回されず、物事を大きく、深く見通せちゃうメガネ」を渡したいと思っていました。あなたは今、このメガネがどんなものかイメージを持っていただけたでしょうか?


更に学びたい方へ、参考文献

システム思考を更に学びたい、使いこなしたいという人へ参考文献をご紹介します。
まずこちらがシステム思考の入門書です。この講義の振返りにも良いと思います。

さらに詳しく学びたい人はコチラ、ドネラ・メドウズというシステム思考の本家本元が書いた本にチャレンジしてみてください。

また、こちら側は応用編です。システム思考はあらゆる問題に使えますが、ビジネスや組織運営に活用したいときには「学習する組織」の入門書がおすすめです。

また、社会課題の解決にシステム思考を活用したいときにはこちらの本がおすすめです。


システム思考を実践し続けると

システム思考を継続的に学びながら実践していくと、最終的にはシステム思考が自分の思考と行動の習慣として身についてきます。例えば、全体像を理解しようと努める、前提を明らかにして検証する、蓄積と変化の速度に注意を払うなど。今後もシステム思考を学び続けるとどんな人になれるのか?イメージを持ってもらえると幸いです。


システム思考の7か条

この連載の締めくくりとして、システム思考の7か条を紹介します。私が15年前にシステム思考に初めて触れた本に書いてあったもので、中でも第1条「人や状況を責めない、自分を責めない」に私は共感しました。

■システム思考の7か条
①人や状況を責めない、自分を責めない
②できごとではなく、パターンを見る
③「このままのパターン」と「望むパターン」のギャップを見る
④パターンを引き起こしている構造(ループ)を見る
⑤目の前だけではなく、全体像とつながりを見る
⑥働きかけるポイントをいくつも考える
⑦システムの力を利用する

最後にお伝えしたいことは、何か問題が起きたら、自分や人を責めないでほしいです。少し立ち止まって、大局・全体・根本を見てみましょう。問題を解決する前向きな変化は、あなた自身の物の見方から生みだすことができます。あなたがこの複雑な社会で、望ましい変化を起こしていくために、少しでもご参考になれば幸いです。長文読んでいただき、ありがとうございました。


嬉しくて鼻血出ます \(^,,^)/