見出し画像

はじめてのシステム思考 #1 導入編 複雑な問題

VUCA(変動性,不確実性,複雑性,曖昧性が高い)時代と言われる現代、複雑な問題に対処する能力がますます求められています。そのような能力の一つであるシステム思考は、戦略,組織,政策,地域,持続可能性など様々な課題領域で、複雑な問題の解決に役立つ思考法です。
このマガジンでは、私が15年ほどシステム思考を学び実践してきたことをもとに、初学者向けにシステム思考の基本を紹介します。(周南公立大学で受け持つシステム思考の講義の一部をnoteにまとめたものです)

この連載を読んでいただきシステム思考を更に学びたいと思った方は、日本におけるシステム思考の第一人者・小田理一郎氏が経営するチェンジエージェント社のHPをのぞいてみるとよいでしょう。システム思考に関連する様々な情報発信やセミナー、研修などが紹介されています。

今回は第1回「導入編 複雑な問題」です。なぜ今、システム思考が必要なのか?システム思考が扱う複雑な問題の「複雑さ」とはいったい何なのか?ということについて解説していきます。


この連載で、あなたに贈りたいモノ

本題の前に、私はこの連載を通じて、ある道具を渡したいと考えています。それは、「目先のことや、誰かの言葉に振り回されず、物事を大きく、深く見通せちゃうメガネ」です。なんかドラえもんみたいな感じになりましたね。もし本当に、こんなメガネが手に入ったら、あなたはどんなことに使ってみたいでしょうか?家族や友人との人間関係を良くしたい、自分のビジネスやキャリアを成功させたい、周りや世の中で困っている人を助けたい、様々なことに活用できると思いませんか?

画像1


私とシステム思考の出会い

私が初めてシステム思考に出会ったのは15年くらい前です。当時学生だった私は、大学を休学して世界を放浪していました。旅の中で、世界がいかに多様で複雑か、自分がどれほど一面的にしか世界を理解していないかを思い知りました。そんなとき、日本に帰国して本屋でたまたま手に取ったのが、このシステム思考の本でした。システム思考は、複雑な世界に向き合うための強力なツールだと思いましたし、特にシステム思考が重視する価値観である「問題を人のせいにしない」という考え方に共感しました。

画像2


本連載の目的とゴール

この連載の目的は、物事の複雑さを捉えるものの見方を知ることです。言い換えれば、先ほどのメガネがどんなものかを知っていただくことです。
そしてそのための具体的なゴールは、以下2つの図、氷山モデルと因果ループ図について理解し、使えるようになることです。連載の前半で氷山モデル、後半で因果ループ図について学んでいきます。

画像3


私たちをとりまく「複雑な問題」とは

まずは、システム思考が扱う「複雑な問題」について考えてみましょう。私たちを取り巻く様々な問題は、よく「思ってたんと違う!」という状況に陥ります。
例えばこのイラストの人は、窮屈な状況をどうにかしようとして片方の壁を倒しました。果たしてこの問題解決は望ましい状況を作り出せるでしょうか?彼から見ればそうかもしれませんが、私たちの視点からは、これがどんなひどい未来につながるか分かりますね。
例えばこれと似たような状況は、コロナ対策などでも起きています。コロナによって経済的に困っている人を救うために支給した補助金をめぐって、現在多くの不正受給や詐欺などが世の中を騒がせています。
このように、当事者にとってはよかれと思って取った行動が、巡り巡って、思いもしなかった結果を招いてしまう。これが現代の私たちを取り巻く、厄介で複雑な問題です。

画像4


問題の「複雑さ」とは

ではなぜ、多くの問題が「思ってたんと違う!」となってしまうのでしょうか?複雑な問題の「複雑さ」とは、何に起因しているのでしょうか?ここでは複雑な問題の4つの特徴を挙げています。これらの特徴をコロナを例に考えてみましょう。
1つ目は、結果が出るまで時間がかかってしまうこと。コロナで言えば、接触から感染まで1週間も時間がかかるために、濃厚接触者など影響範囲が大きくなってしまいます。この性質によって、問題はしばしば私たちの予想に反する挙動をとります。
2つ目は、多くの物事が絡み合っていること。コロナで言えば、この問題は生命、医療に関わるだけでなく、私たちの経済や社会、文化、生活など様々な事柄に影響を与えています。この性質によって、どの要因がどの結果に結びついているのか?分からなくなります。
3つ目は、堂々巡りや悪循環を引き起こすこと。コロナで言えば、重傷者が増えれば医療がひっ迫し、ひっ迫していると重傷者が増えるといった、いわゆる医療崩壊という悪循環がありますね。この性質によって、問題解決をどこから手をつけて良いのか?分からなくなります。
4つ目は、人によって見え方が異なっていること。コロナでも、人によっては「ただの風邪だ」と言う人もいるし、マスクやワクチンに対してもネガティブな見方をしている人もいますね。この性質によって、解決策を関係者間で合意できない、または認識の相違自体が問題の根源となったりします。

画像5


あなたの周りの「複雑な問題」を見つけよう

ここまで複雑な問題の特徴を見てきましたが、あなたの身の回りにも、このような4つの複雑さは隠れていないでしょうか?例えば学校生活で、部活やサークル活動で、職場やアルバイト先で、ご家庭で。あなたが「何とかしたい」と思う問題には、時間の遅れや多くの要因、循環や立場による見え方の違いなどが関わっていないか?もしこれらの特徴が思い当たるならば、システム思考を使ってより良い変化を起こすことを考えてみても良いかもしれません。

画像6

第1回「導入編 複雑な問題」は以上です。次回は、システム思考の「システム」とは何か?「システム思考」とは何か?他の思考法と比べてどんな特徴があるのか?ということについて解説していきます。

嬉しくて鼻血出ます \(^,,^)/