【グループ展を主催してみる。】①思い立ったが吉日
2024年5月1日。
そうだ、展示会やろう。
「そうだ、京都行こう」みたいなノリで閃いた。
人生には一帖分のノリの良さ(海苔だけに)と、フットワークの軽さが必要である。……と、私は信じている。こら、そこギャグセンないとか言わないでください。
いつだってこうだ、唐突な思いつき。もう慣れてしまった、思いもよらぬ衝動には素直に突き動かされた方が人生は楽しい。狂わされることもあるけど。
展示会をやる。じゃあ、何を展示する?
そうだ、雑誌作ろう。雑誌制作の過程の写真とかさ、展示できないだろうか。
こうやって、数珠繋ぎのように、ワクワクが新たなワクワクを呼んで胸躍る瞬間が好きだ。
高校2年生のとき、ひとりで雑誌を作ったことがある。2019年の秋から冬にかけて。
名目上は、「半年後に個人研究の発表会をやります」という総合の授業の一環。
私のテーマは、紙媒体と電子書籍の比較について。模造紙1枚にまとめろ、というのが先生からのお達しだったけど、なんだか味気なくて。というより、比較するだけじゃ私も聞き手もつまらない。
そうだ、実物を作ろう。実際に紙と電子で雑誌を作って、直接手で触って比較してもらえばいいんじゃないか。絶対そっちの方が面白い。
……みたいな感じで。思いついた夜のこと、アイデアが膨らみすぎて目が冴えてしまったベッドの上、多分私は一生忘れない。
雑誌を作るなら、みんながワクワクするような読み物にしたい。掲載する記事や中身は、クラスメイトからアンケートを募りたい。みんな何かしらオタクで、ひとが目をキラキラさせながら好きなものについて語っている姿が私は好きだ。だから、みんなの推しへの愛を全文掲載したい。最近クラスで流行っている『鬼滅の刃』の座談会とかやっても楽しいかもしれない。
誰に協力してもらおうか。私の素敵な友人たちの特技や個性を活かしたいし、私の素敵な友人たちを見せびらかしたい。この人とあの人を掛け合わせたら面白そう。グルメのページは、この前お菓子をくれたあの子に。記事の写真は、仲良しの写真部部長に撮ってもらおう。いつもは怖い先生や謎多き先生の私生活が知れたら面白いかな。
あと、どうせなら、みんなの将来の夢を具現化させたい。
「いつか本の装丁を担当するのが夢なんだ」と話してくれたあの子に、表紙を依頼したら迷惑だろうか。経済学部を目指す2人は、県の経済クイズのコンテストにこの前出場していたっけ。スタイリストを目指している彼女に、ファッションモデルになってほしい。等身大の私たちのこと、女子高生ならではの悩み、私たちが大人になったときに変わっていてほしい現実と、社会について。毎日軽口を叩き合ってしょうもないことで笑い合ってるみんなと、真面目に話してみたいことがたくさんある。
ワクワクしながらメモ帳に書き殴って、翌朝先生に直談判しに行った。誰も私を止められるわけないと思っていたし、止まるはずもないし、実際誰も止めなかった。
いつも思う、周りの人に恵まれているということ。見捨てないでいてくれること。私はもうちょっと人に感謝して生きていくべきなのだ、本当に。
ひとり編集部、ひとり編集長の雑誌作りは無事成功した。
忘れない、カフェでみんなで泣きながら思いの丈を打ち明けたこと。店内のお洒落なBGM。高校同期のほぼ全員がアンケートを出してくれたこと。実際に印刷されたとき、友達が私を抱きしめてくれたコンピューター室独特の匂いだったり。不器用な私に代わって用紙を切るのを手伝ってくれた、先生のカッターを持つ白い手。「メイクNGの校則無くせ」みたいな記事を書いた雑誌を、快く受け取ってくれた当時の校長先生。
「いつか絶対、編集者になれるよ」と励ましてくれた友達。「この雑誌は必ず就活の面接で持って行け!」と言ってくれた先生。
そこには、確かに青春があった。
4年後、出版社の最終面接。
「一人ひとりの一等星みたいな個性を繋いで、星座みたいな雑誌を作れた経験は私の誇りです」とこの雑誌を見せながら言えた。私の人生、自信を持てることなんてちっぽけだけど、これだけは胸を張れるし一生忘れない。忘れたくないなあ、未来永劫。心からそう思う。
大学生になって、出版サークルの編集長を務めた。
高校生のときは、知識皆無のままCanvasでちまちま雑誌を作っていたけれど、今の私ならIllustratorもPhotoshopも、InDesignまでも使える。
きっと(あのときよりは)クオリティーの高い雑誌が作れるに違いない。
だから、雑誌を作ってみたいのだ。
思い出話は一旦ここまで。
……とまあ、「そうだ京都ノリ」が一度芽生えてしまえば話は早い。
展示会はひとりでやるんじゃなくて、みんなとやりたい。私の友達は素敵な人たちばかりだから、みんなに見せびらかしたい。
だから、グループ展にすることにした。
時期はいつにするか。スマホのスケジュール帳を開いてみた。夏休み……じゃ流石に早すぎる、展示品制作が間に合わない。じゃあ秋? 11月は予定が多い。年明けはきっと卒業旅行ラッシュでギリギリすぎる。大体、大それたことを企画するならばできるだけ余裕を持たせることが肝心だ。ということで12月に決めた。準備や集客の面を考えても、土日のどちらかにするのは確定事項である。
ふと、12月の第2週土日、という考えが浮かんだ。1ヶ月前の11月第2週土曜日は私にとって大切な居場所での大事な一日である。合わせてみてもいいのかなと思った。
なんとなく、去年と一昨年の12月第2週の土日を遡ってみた。一昨年の第2週日曜日は、私の大好きなエッセイストさんのグループ展に行った日だった。明け方までルールもよくわからないワールドカップを見ていたせいで、清澄白河の喫茶店に行くという予定が頓挫し、夕方に近所の花屋で買ったピンクの花束を持って推しのグループ展に足を運んだ。みんなに「信じられない」って驚かれるけど、その頃の私はミルクティーベージュならぬ金髪で。髪を巻いて、当時勤めていた塾の小5と中1に「ピーターパンみたい」「森みたい」とかなんとか言われていたお気に入りの緑のカーディガンを着て、ロングブーツを履いていた。推しさんは、なぜか駄菓子屋さんにあるようなスーパーボールくじをやっていて、言われるがままくじを引いたら偶然カーディガンとお揃いの緑のスーパーボールが当たった。「髪もカーディガンも素敵ですね」と褒めてくれた推しさんに花束を押し付け、渋谷の会場を出て、近くのコメダに直行。そこは、その年の春に開催したサークルの新歓企画で使った場所だった。軽くサンドイッチを食べた後に、売り切れていたシロノワールが食べたくなって新宿のコメダまでハシゴ。充実した一日に満足して、久しぶりに安眠。結構思い出深い日だ。
思い入れもあるから、日曜日にしようと決めた。なんと言っても、金曜日のおはようならぬ、日曜日の憂鬱である。私もみんなも、明日起きるのをワクワクしながら眠りにつくような、そんな一日にしたい。ブルーマンデー症候群を吹き飛ばせ!
思い立ったら即行動、私のスタンスだ。
善は急げということで、会場を探してみることにした。アクセスが良いに越したことはないので、都内の大きな駅チカに絞った。好きなエッセイストさんのグループ展の会場を参考にしながら、いい感じのレンタルスペースを2つ。
何平米がいいのだろうか。何もわからない。展示をわざわざ見に来てくれる人は、身内だけだと思う。あまりに広すぎて、スカスカが目立ってしまうとちょっと悲しいかもしれない。
そうだ、もっと人を呼ぼう。身内が少ないなら、身内を増やせばいい。
そういうことで、グループ展の始まりから終わりまでをこのnoteに公開することにした。
ぜひ来てください、大学最後の卒業制作。入場料はかかりません。
2024年12月8日、都内にて。
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