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ヨーロッパ投資紀行#6.5(番外編)今激アツの"賞味期限伸ばしテック"、知ってますか?

パンデミックにおいて、生鮮食品の輸送が遅れたり、購入量が急激に落ちて賞味期限を越えて腐ってしまう事態が世界中で起きています。会社や休みの人が増えて止まる、国レベルのロックダウンにより輸送がストップする、などにより世界中の廃棄量は相当なことになっています。

この問題を解決するべく世界中で大手企業もスタートアップも日々奮闘しています。例えば日本においては食べチョクが農家から家庭への直接販売をサポートしているのはわかりやすい例かと思います。

一方で、「なんとか腐らせずに保管しよう」、とテクノロジーによるアプローチをしている会社が世界中にあります。今回はヨーロッパ以外の会社も結構入ってるけどとっても大事なことなので調べてみました。


ナノマテリアルで食品の賞味期限を延ばすNanoPack

EUが資金を提供しているイニシアチブによるプロジェクト。本拠地はベルギーのブリュッセル。NanoPackはテストでは、パンのカビの成長を少なくとも3週間防いだり、フレッシュチェリーの密封性とイエローチーズの保存期間をそれぞれ40%と50%延長したそうです。

天然のナノ材料とエッセンシャルオイルを組み合わせており、ナノチューブは、包装された食品のヘッドスペースにフィルムから抗菌性のあるオレガノやタイムなどの植物から抽出された抗菌作用を持つ天然のエッセンシャルオイルをゆっくりと放出します。これにより、酸化、水分の変化、微生物の増殖を積極的に遅らせることができるそうです。パン、生肉や魚、乳製品、果物や野菜などの食品の範囲をカバーしているとのこと。


乾燥剤のような小袋で野菜や果物の鮮度をキープするHazel Technologies

野菜やフルーツが3倍長持ちする、乾燥剤のような小袋を開発するシカゴの会社。

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他にもプロダクトを最近、ブドウにかける透明な袋によって賞味期限を伸ばす実験も行い、成功したようです。

https://www.thepacker.com/article/oppy-tests-hazel-shelf-life-technology-south-american-grapes

みずみずしく、弾力も袋をかけてないブドウと段違いだったとのこと。ブドウ以外にも応用できるはずだ、とのことなので、輸入フルーツが今までよりもっと美味しくなりそうですね!


生鮮食品の表面に植物由来の保護層を設けて腐敗を防ぐApeel Sciences

カリフォルニア州ゴレタに本拠地を置くApeel Sciences社のプロダクトは、生鮮食品の表面に植物由来の保護層を設けることで、腐敗の原因となる水分の損失や酸化を遅らせることができます。

USDAオーガニック認証を取得した農産物や従来型の農産物の数十種類のカテゴリーに向けて製品を開発しており、小規模農家や地元の有機栽培農家から世界最大の食品ブランドまでたくさんのパートナーと協力し、より高品質で持続可能な農産物の生産を可能にしています。

Apeel Sciencesの創設者でありCEOのジェームズ・ロジャース氏は、博士号を取得しながら、クリーンエネルギー向けソーラー塗料を開発するために、数年間「絵の具が乾くのを見る」ことに費やしていたそうです。

そんなある日、ラジオで世界の飢餓についての話を聞き、「こんなにたくさんの人が飢えているのに、どうしてこんなにたくさんの人が飢えているのだろう?」と疑問に思い調べてみたところ、食料を育てることではなく、保存に問題があると考えるようになり、ソーラー塗料ではなく食品向けの塗料を作ろうと思ったようです。自然の保存に触発され、腐敗の速度を遅くするために、食用植物の材料からバリアを構築する作業に取り掛かったそうな。

なおApeel Sciencesは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成金を受けて2012年に設立されています。

https://apeelsciences.com/


ステッカーを貼るだけで腐らなくなる、そんなバナナ。Stix Fresh

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StixFreshステッカーの全天然コーティングは、ワックスとその他の天然成分で構成されており、果物の周りに保護層を作るとのこと。多くの果物の鮮度を最大14日間延ばすことができるそうな。ステッカーを貼った果物は、甘みが増し、水分をより多く保持し、細胞構造が維持されているため、弾力がキープされると。科学ってすごいですね。

FDAに準拠したGRAS(Generally Recognized as Safe)の要件を満たしている、とFAQには書かれています。

果物が青々としているか、熟し始めの段階までにステッカーを貼るのが最適だそうですよ。


インドで廃棄されているマンゴー皮(MP)の抗酸化活性と抗菌活性を活用した鶏肉用フィルム

インドは世界最大のマンゴー生産国であり、廃棄物として発生する大量の皮の処理が問題となっています。そこで、この廃棄物を食品包装用フィルムに利用することで、中に詰められた鶏肉の賞味期限を延ばすことができる食品包装用フィルムの開発の可能性を検討したとのこと。

4種類の抽出溶媒と2種類の抽出方法を用いて、インドの人気マンゴー4品種(Alphonso, Kesar, Langra, Badami)のマンゴー皮(MP)の抗酸化活性と抗菌活性に及ぼす影響を調べた結果、MPを含有するフィルムは、抗酸化活性および抗菌活性(グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方)が認められました。また、MPを含まないフィルムに充填された鶏ひき肉は3日以内に腐敗したが,MPを含むフィルムに充填された鶏ひき肉はチルド保存で12日以上の保存できたということです。

マンゴーの皮は、マンゴー加工産業から大量に発生する廃棄物で、生理活性化合物が豊富に含まれています。これは、生分解性フィルムの有効成分として使用することができ、その中に詰められた食品の賞味期限を延長することができます。このようにして、合成添加物とプラスチックの両方の使用を最小限に抑えることができます。

マンゴーってすごいですね。


エチレン吸収剤によって果実周辺のエチレンを除去し品質劣化を遅らせるIt's Fresh!

イギリス拠点のIt's Fresh!は「エチレン吸収剤」によって果実周辺のエチレンを除去することで、果実の品質劣化を遅らせるアプローチをとっています。

りんごと一緒に保存すると早く熟してくれる、あの理由がエチレンの働きです。熟れてない果物を食べるのにはいいけど、保存にとっては天敵であると。

エチレンの生産量や影響度は、果物や野菜によって異なります。エチレンの生産自体は少ないが非常に敏感に影響を受ける果物もあれば、りんごのようにエチレンを大量に生産する果物もあります。

果物や野菜のエチレン生産は、高温や打撲などの損傷などのストレスによっても影響を受けます。これらは、果物や野菜がより多くのエチレンを生成する原因となり、劣化を加速させます。

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実際のコーティングのやり方はこのようにベルトコンベアで流していくみたいですね。

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日本も負けてないよ!安全でかつ迅速に発酵熟成肉魚を製造することができる発酵熟成肉魚製造技術「エイジングシート」

川崎に本社を置くミートエポック社のエイジングシートは寿司屋が1日で捨てていた魚介類が、1週間ほど使えるようになるという。

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その秘密は、人に無害なカビの胞子を混入した熟成シート。食品の劣化の原因となる菌を遮断しながら、食品の老化スピードを3倍にする。

魚は、通常約7日目から腐敗が始まり、腐敗臭が放たれますが、エージングシートに包まれたマグロ、『発酵熟成熟鮮魚』は、約20~23日間の長期熟
成期間にも拘らず“新鮮さが保たれた魚”、臭みがなくなり熟成香といわれるミルクやナッツに似た芳醇な独特な香りが特徴の付加価値のある商品になるという。


まとめ

賞味期限伸ばしテック、いかがだったでしょうか?コロナの影響で廃棄されている食品は短期的には非常に問題ですが、これらのソリューションは長期的にはサスティナブルな食品生産問題を解決するソリューションでもあります。日本からもソリューションでてますが、賞味期限が伸びることでロジスティクスや在庫、ひいては飲食店の廃棄率ダウン、利益率などにも影響が出る話です。安全に配慮した上で、世界中でどんどん利用されて欲しいですね!




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