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読書感想文【錦繍】宮本輝

昨日散歩がてらに近所の本屋さんを覗いたら
新潮文庫が谷崎潤一郎の作品の
カバー装丁を加山又造で出した
シリーズを見かけました↓

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「欲しい本リスト」には
谷崎潤一郎は入っていないのだけども
加山又造の装丁のせいで
めちゃくちゃ欲しくなってしまう
版元の出版努力ってこういうところにも出る
新潮社のセンスの良さには本当に感服する
私、映画化された小説とかで
装丁が役者の写真とかになっていると
もう一瞬で買う気がなくなってしまうのです
この間も太宰治の「斜陽」が
残念ながらそのような仕様になっていたので
古本屋さんで前の装丁で買いました
しかし、実はこの役者装丁も
若い読者層を増やす努力なのはわかる!
出版社の努力は応援したい!
ですがやはり小説は装丁まで含めて
作品のような気がするので
役者の写真きっかけで読者になっても
いつかは役者抜きの読者になって欲しいと
願ってやまないのです
だってそもそも小説なんだもの
役者の顔、関係ないよね
脚本売ってるわけじゃないんだから

私は中年層なので
加山又造装丁に飛びついてしまうのです
おしゃれだわ〜
谷崎潤一郎を読む時節が来たね
ここまで書いておいて買ってないんだけども

話が長くなってしまった
今日の読書感想文の宮本輝さんの装丁といえば
この有元利夫画伯である
もうね、現代作家さんで
このような日本画家の装丁使う時点で
美意識高いし素晴らしいのです
文学は芸術である
って言いたかっただけなのです

宮本輝 「錦繍」 新潮文庫

<あらすじ>

会って話したのでは伝えようもない心の傷。14通の手紙が、それを書き尽くした。
『前略、蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛しながら離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で10年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて1通の手紙を書き綴る。往復書簡が、それぞれの孤独を生きて来た男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。

<感想>

昨日の私の感想文で
保坂和志「書きあぐねている人のための小説入門」
を書きました

この中で私は保坂氏の考え方の
6割支持を表明しました
実はこの保坂氏の作品読んだ直後は
ひどく感銘を受けまして
9割支持だったのです
しかし、本の時節とは恐ろしいもので
次に読んだこの「錦繍」が
影響を受けやすい私に「待った」をかけ
明日書きますが
その次に読んだ久坂部羊の「廃用身」が
「作家の未来の希望」を展開したのです
そして私なりに「小説」という
芸術に対する答えが出来上がったのです
また人の意見を鵜呑みにするではなく
実際に自分の感じたことを大切にし
咀嚼し自分のものにするという作業が
この連続する読書で偶然成り立ったのです
もう鳥肌ものの体験でした
神様が「おまえの今読むべき本はこれだ!」
と言っているに違いないと思うほど
確実に見えない力が働いていた出逢い

本当に長くなってしまいましたが
「手紙」だけで成り立つ小説は
今までもいくつか読んだことがありましたが
私きっと単純に手紙手法が好きなんだと思います
そしてこの「錦繍」は
恋愛小説の金字塔とも言われている作品ですが
私は「愛」や「恋」よりも
「生」と「死」を感じるのです
なのであまり恋愛作品としては
心に響いてはいないのですが
「生きるとは何か」という
誰もが書くテーマではありますが
そっくりそのまま実直に書き表している
ああ、真似できない
もちろん答えなんてものは出ないし
オチもないのですがそこがまた
小説らしい小説で本当に素晴らしい!

「小説とは読者にお土産を置いていくものでなければならない」

どっかの小説家の言葉ですが
間違いなく読んだ後には
宮本輝に投げられたお土産があり
それぞれの読者がそれぞれに考えさせられる
はず!
天才やー、天才がたくさんおるー!

そして良い小説とは
一行読んだら次の一行が読みたくなるという
運動の連続なので(保坂氏談)
もちろん止まらずに一気読みでした!

※(保坂氏は一気読みしてしまう作品は文学としてイマイチだ的な事も書かれてちました、それも一理あることはもちろん理解する所です。もしかしたら保坂氏は読者側を皮肉っていたのかもしれません。ちょっと私が読み切れてないかもしれません。しかし、この作品を一気読みしてしまった私は、保坂氏の言うことが全ての作品に当てはまらないなあと思った次第でございます。人それぞれ。)

素晴らしくおすすめの1冊です!

↑何故か文庫が貼れず
(あんなに装丁の話したのに涙)
アマゾン内には文庫もあります!

「手紙」形式の作品の感想文が
過去にいくつかあるので
貼っておきますので
良かったら読んでみてください




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