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読書感想文〜老人と海〜

ノーベル文学賞受賞はこの作品ありき
ヘミングウェイの永遠の傑作
「老人と海」が
なんと!なんとなんと!!
新潮社から50年ぶりに新訳出ました!
50年ぶりだなんて
次の訳が出るころは
間違いなくこの世にいないので
もはや現世での最終訳版ですね

ヘミングウェイ 「老人と海」 高見浩訳 新潮社

<あらすじ>

84日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣網に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが。自然の脅威を峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作

<感想>

もうほんと泣いてまう
泣いてまうやろーーーー!!!
いわずもがな素晴らしい作品

最近やっと自分の中での解釈で
短編と長編の違いを言語化できてきたのです
短編が得意な作家さんや
長編が得意な作家さんがいるという事
そしてその理由がやっとわかってきました
短編の巨匠ホフマンもそうですが
短編の名手って
場面の切り取り方というか
一瞬のセンスで切り取った場面が
もうすでにセンスが良い!ってのが
条件な気がする
長編が醍醐味な村上春樹や遠藤周作は
テーマの中のパズル加減というか
長編の良さは間違いなく大テーマからの
連なる小テーマの連続性だと
最近、個人的に腑に落ちているのであります

そういった解釈を持って
改めて「老人と海」を読むと
作品は3日間だけの描写で
9割は海の上にいる老人だけです
その切り取りで何故にこんなに読ませるのか
時代も言語も超越して読まれる作品って
もう素晴らしすぎて
何も言えねー

主人公の老人が海をスペイン語の
女性名詞で捉えるシーンが好きです↓

老人の頭のなかで、海は一貫して”ラ・マール”だった。スペイン語で海を女性扱いしてそう呼ぶのが、海を愛する者の慣わしだった。<中略>だが、老人はいつも海を女性と捉えていた。大きな恵を与えてくれたり、出し惜しみしたりする存在と捉えていた。ときに海が荒れたり邪険に振舞ったりしても、それは海の本然というものなのだ。海も月の影響を受けるんだろう、人間の女と同じように。

今回の「老人と海」新訳版は
どうしてもおすすめしたい理由がある
それはもちろん高見浩さんの訳が
素晴らしいのが1位ですが
この新訳版には
高見浩さんの解説と翻訳ノート
さらにヘミングウェイの
年譜<生涯とその時代>というのが
付いています
これが本当に最高なのです!
読書家の方はこの年譜みたら
日本の作家と世界の作家の作品年譜が
一眼でわかるようになっていて
改めてかなり面白いと思います!

翻訳ノートもとても勉強になります
ひとつだけ
翻訳ノートにも注釈がなく
少し気になった場面がありました
老人はキリスト教徒ではないですが
海の上で「主の祈り」や「聖母マリアの祈り」を
願掛けのように使う場面があります
「聖母マリアの祈り」は
全文唱える場面があるのですが
旧訳のお祈り文句なんですよね
これはもちろんわざとなのでしょうけど
私のようなガチのキリスト教徒が読むと
おおっ!!こっちは旧訳か!と
久しぶりに見るお祈りの文句に
ちょっと感動しちゃいました

何度も読んでいる方も
まだ読んだ事がない方も
50年ぶりの改定版を機に
ぜひ、お手に取っていただきたい!!
世界の名作でございます!!!!


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