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イバラの道の先

*入社式*
女子はこちらへとペーパーでできた薔薇で飾られたアーチの門に案内された。門からみえる範囲の道路は舗装されてある。
男子の方の門は、本物の薔薇が所々さいている。舗装はされていないが、先人たちが踏み固めて綺麗である。

女子の門の案内人は親切にしてくれる。道を進むための服と斧を渡された。サイズが合わない。

私はまずサイズを直し、斧をとって進んだ。最初は悠々だ。どんどん進んでいく。

*数年後*
イバラの道には時々薔薇が咲いている。しかし、イバラが込み合ってきた。斧を振りかざして取り払う。力が足りない。なかなか切れない。すると、男性がやってきて手伝ってくれた。上手な切り方を教えてくれる。それでも太いイバラを切るとヘトヘトだ。さて、どうしたものか。よくみると、斧は男性仕様だ。道具を一式取り揃え進んだ。

*さらに数年後*
私は結婚した。このまま進み続けるのは危険だよ~と言われ、別の道へ案内する人が現れた。お断りして進むと、ますますイバラは込み合ってきた。

*さらに数年後*
赤ん坊が産まれた。
赤ん坊を背負いながら、赤ん坊がイバラで怪我をしないように少しずつ進む。
またこのまま進み続けるのは危険だよ~と言ってくる人が現れた。確かに危険だ。よく手入れされた薔薇園に案内された。しばらく(ずっと)ここにいるといいよと言われる。同じように赤ん坊を抱えた女子が多く、薔薇園がいつも美しく保てるようにルーチンワークを行っている。悪くはないが、先ほどまで進んでた道に時々みられる珍しく素敵な薔薇は見当たらない。

ふと男子の方をみる。男子の中にも赤ん坊を背負っている人がいるが、背負っている時間は短い。


あっという間に赤ん坊は大きくなり、走り回る。ますます危険だ。

このまま進むか、手入れされた薔薇園に行くか、悩んでいたら、別の新しい道を見つけた。トゲが少ないようにみえるのは、これまでの品種とは異なるからだ。入口は明るいが不安だ。先は闇かもしれない。

やはり私にはこれまで切り開いてきた道が良さそうだ。なんだかんだで結構進んだ。薔薇の品質も安定してきた。


気が付くと大きくなった赤ん坊は、小さな斧を持って見様見真似で刈ろうとしている。手を取り一緒に進んだ道の先に、大輪の花は咲かせられるだろうか。

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