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エッセイ

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1週間の中で【最も印象的で記録にしたい日】を書き綴ります。 ※毎週日曜日に更新
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2021年11月の記事一覧

エッセイ#5『電車』

エッセイ#5『電車』

僕以外に誰もいない電車に乗っているとなんだか安心した心持ちになる。

日常から解放された気分になる。今は何もしなくていいんだ、と。

体を揺らしながら、ガタンゴトンと車内にこだまする音に耳を傾ける。

車窓から移りゆく景色を眺めながら、

このままどこか遠くへ行ってしまいたい気持ちになる。 

僕を知らない場所へ。僕が知らない場所へ。

こびりついた得体の知れない不安を胸に抱えながら、

同時に満

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エッセイ#4『本の価値は0か100か』

エッセイ#4『本の価値は0か100か』

「本の価値は0か100でしょ?」と母に言われた。この意見に私は断固として異議を唱える。

まず初めに、ここでは「読書」という娯楽に近い習慣に焦点を当てる、ということに触れておきたい。母と僕の会話における「本の価値」は「読書という習慣において」という文脈上の話だからだ。したがって、研究のための材料探しといった読書というよりかは調べ物に近い行為は対象とはしない。

結論から言えば、本の価値というものは

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エッセイ#3『日曜の朝』

エッセイ#3『日曜の朝』

 日曜の朝っぱらから食卓には大層な馳走が並べてある。鯛の塩焼きに蛤吸、いくら、赤飯などだ。
 常日頃より朝食抜きの生活を送る絶賛プチ断食中の私にとってトーストの一枚ですら一瞥しただけで卒倒しかけるのに、これだけの馳走を展開されるといささか見るに堪えない。



 日曜の朝っぱらからなにゆえこれほどまでの馳走がざっくばらんに並べてあるのかといえば、何を隠そう、本日は甥っ子のお食い初めなのだ。
 お

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エッセイ#2『ワクチン』

エッセイ#2『ワクチン』

 朝、7時18分。寝床に容赦なく照りつける陽光が眩しい。同時に身体の節々に鈍い痛みが走っているのを鮮明に感じる。ゆっくりと身体を持ち上げると、まるで遠征帰りの荷物を背負っているかのごとく、自分の身体がずっしりと重く感じられた。
 ワクチンの副作用───
 意識が次第に覚醒する中でそう思った。



 昨日、新型コロナウィルスのワクチンを打った。2回目の接種だ。ワクチンの副作用は1回目よりも2回目

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