2021年9月の記事一覧
祖母のカメラのファインダー[ショート小説]
"親戚にカメラ好きを公言すると、次々とクラシックカメラを貰える"
カメラ雑誌を眺めているとそんな裏技らしき文言が目に入った。私はちょうどフィルム写真が気になっていたので、さっそく母経由で親戚に言いふらしてもらうと、一週間後におばあちゃんから宅配便が届いた。
ダンボールの中からまず野菜が出てきたが、その脇に入っていたカメラを取り出すと、いつか田舎で見た覚えがあるコニカだった。ネットで調べてみると
赤帽タッチ![ショート小説]
異質なものが出現すると、人はそれを「穢れ(けがれ)」とみなす。異質なもの自体を排除しようとすることもあれば、見たり触れたりして穢れを受けてしまった(と感じる)自分を清めようとすることもある。
風邪は誰かにうつせば治る、みたいな昔からの考えも同じものなんだろう。
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小学生の頃、県道の大通り沿いで時折小さなトラックを見かけることがあった。それは白地に
8月が終わったと感じるとき[ショート小説]
リモートワーク中の昼休み、隣町まで買い物に行く途中に橋を渡る。土手を眺めると、草むらのなかに赤色があった。彼岸花だった。
そうか、もう9月か。
もちろんカレンダー上9月になっていたことは知っているけど、家にこもっていると季節に疎くなってしまう。秋の花を見て、夏が終わったことを改めて思い知らされた。
今年の夏は遠出をしていないけど、ささやかな小旅行をしたり、有名店のかき氷を食べたり、メロンを一
M君の夢[ショート小説]
朝、目が覚めて、夢にM君が出てきたことに焦った。何年も名前を思い出したこともなかったのに。
小学校の同級生で、いつも隣にいるライバルだと思っていたM君。勉強も、クラスで笑いを取るのも、、、恋愛も。
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大人になって働きだしてから、なぜか高校に通い始めた。僕らはお互い同じ学校にいて。帰りの電車のなか、再会を喜んで普通に話せた。
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現実では中学が別々で疎遠にな
O型の宿命[ショート小説]
雨上がりのタイミングを見計らって、スーパーに向かう夕方。並木道を歩いていると左手の指に違和感があった。見ると黒い粒があり、右手の指で弾くと血がついた。蚊に刺されていた。
スーパーに着いた頃には左手の甲も右手の甲もかゆい。7分でこんなに刺されるなんて。トイレで手を洗いがてら水で冷やしても、かゆい。虫刺されを掻いているといつも、自分の血液型がO型だと思い出す。蚊に刺されやすいだけじゃなくて、O型のメ