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O型の宿命[ショート小説]

雨上がりのタイミングを見計らって、スーパーに向かう夕方。並木道を歩いていると左手の指に違和感があった。見ると黒い粒があり、右手の指で弾くと血がついた。蚊に刺されていた。

スーパーに着いた頃には左手の甲も右手の甲もかゆい。7分でこんなに刺されるなんて。トイレで手を洗いがてら水で冷やしても、かゆい。虫刺されを掻いているといつも、自分の血液型がO型だと思い出す。蚊に刺されやすいだけじゃなくて、O型のメリットはないんだろうか。そんなことを考えてしまう。

昔同級生に血液型を聞かれてB型だよ、と答えると決まって「やっぱりね、そうだと思った」と言われた(どういう意味だ? )。そして母はA型で父がO型だが、私は母に考え方がそっくりだ。

血液型で性格が決まるという風潮を昔から冷ややかに見ていたので、自分から他の人に聞くことはない。

そんなことを考えていると、瞬間的にあの子の笑顔が浮かんだ。

・・・O型で良かったことがあった。

大学2年のとき、友人に頼まれて学園祭の出し物を少し手伝っていた。後日居酒屋の打ち上げに参加したとき、僕は話し相手が少なくて居心地が悪かった。そんなとき、S先輩が話しかけてきた。

「ねえねえ、XXくんは血液型なに型?」

「O型です..」

「だと思った! 私もO型なんだよね」

クールな容姿で話しかけづらかったS先輩の、笑った顔を初めて見た。もともとサボろうと思っていた打ち上げに参加したのも、実はS先輩がいるからだ。話せたことも嬉しかったけど、少し通じあえたような、勝手にそんな気がした。

その後も特にS先輩と大した交流はなかったけど、学内ですれ違えば挨拶できる関係になった。

いまどうしているんだろう

自分が少し笑顔になっていることに気づきながら、今日も晩ごはんの惣菜を選んでカゴに入れる。



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