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記憶の図書館

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読んだ本の記録。
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2018年12月の記事一覧

湯気までがご馳走だった

湯気までがご馳走だった

ここ最近は少しずつ読書欲を取り戻し始めました。

一冊読むとすいすい次の本に手が伸びていくんだけど、読まない時間が続くと本を手に取る習慣自体がなくなる、というのを何度も何度も繰り返しています。
この現象に名前はあるのでしょうか。

図書館に行ってたくさんの本に囲まれて「あ、これ読みたいと思ってた」「好きな作家さんの見たことない新刊があるぞ」「変なタイトル〜!」なんて思いながら借りる本を選ぶのは至福

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わたしは世界の歯車になれているだろうか

わたしは世界の歯車になれているだろうか

共感と拒絶が同居している小説だと思った。

第155回芥川賞受賞作
村田沙耶香『コンビニ人間』

「どれどれ」なんて軽い気持ちで読み進めていたら、お腹の底の方にじわりじわりと黒いものが溜まり始めて、なんだか嫌だなあと気付いていても目が離せなくて、黒いものが半分くらいまで膨らんだときには最後のページ。
わたしにとってそんな小説だった。

古倉恵子はコンビニバイト歴18年の36歳。
大学1年生の頃にオ

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さあ、音楽を始めよう。

さあ、音楽を始めよう。

数年前の書店。
平積みの本の中で目を惹く装丁と題名だった。

恩田陸『蜜蜂と遠雷』

読みたい!けど文庫化してからにしよう。文庫が出たら必ず買おう。
と、思い続けて早数年。
いつまで経っても文庫化はされず、けれどわたしの記憶からこの本が消えることも無かった。

まさか、同じくジリジリと待っていた母が待ちきれず先にハードカバーを買っていたなんて。
実家に帰ってこの本を見つけたときには思わず「うわあ、

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