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「なんくるないさー」で本土・離島と沖縄本島をつなぐ「ボランチ」 沖縄日通エアカーゴサービス・普天間さんインタビュー

沖縄・那覇空港の北側にある貨物ターミナルには、島の各地からやってくるトラックが何台も往来し、活況を見せています。羽田や伊丹といった本土と結ぶ航空便はもちろんですが、離島へと飛ぶ便も重要なインフラ。2018年の路線別航空輸送統計でも貨物は那覇-宮古が12位、那覇-石垣が13位となっており、どちらも120万キロを超えています。

とりわけ6月~9月にかけては、県産マンゴーの収穫期で、保冷コンテナを利用した航空便がひっきりなしに送られるといいます。全国でマンゴーのスイーツが美味しく食べることができるのは、農家の皆さんはもちろんのこと、航空便に関わる人たちのおかげといえるでしょう。

貨物ターミナル内に支店を構える沖縄日通エアカーゴサービス(OAS航空)は、そんな本土や離島と結ぶ最前線。今回は、飲食品をはじめとする生活になくてはならないものを扱う生鮮営業部中継課の普天間さんにお話を伺いました。

■ 生まれ育った沖縄で働くということ

---まずは、普天間さんがOAS航空に入社するまでをお聞きします。ご自身、沖縄生まれ沖縄育ちとのことですが。

沖縄県南城市生まれで、将来は「お金持ちになりたい」としか思ってなかったですね(笑)。大学4年の10月から就職活動をはじめて、二番目に受けたのがOAS航空でした。

---就活をはじめるには遅めですね。何か理由があったのでしょうか?

僕は教員免許を持っているのですが、教育実習が終わるのが9月なんですよ。先生が大変だということは実感しましたし、採用試験も難儀だと聞かされていたので……。OAS航空は沖縄でTVCMをやっていたので知っていましたが、仕事の内容自体は入るまでまったくわからなかったですね。

---沖縄から離れて会社を探そうとは考えなかった?

なかったですね。僕自身沖縄が好きですし、本土の寒さに耐えられない(笑)。夏も想像よりも過ごしやすいと思いますよ。ぜひもっと多くの人に沖縄に来て働いてもらいたいですね。

■ ドライバーから空港勤務に! 業務で求められる「細かさ」

(農産物などデリケートな商品を運ぶOAS航空のトラック)

--入社されて7年目とのことですが、現在の部署に最初から配属されたのですか?

いえ、最初は営業所にドライバーとして配属されました。お客さんからの荷物の受け取りや配達をする仕事です。はじめはチェック事項が細かくて戸惑いました。例えば、荷物の追跡サービスのために、「通過登録」を通さないといけない規定があって、通っていないとペナルティーになってしまうんです。

---今では通販サイトで自分の頼んだ商品がどこまで送られているのか確認できますが、それは現場のドライバーさんのおかげということですね!

自分は入社するまで荷物を送ったことがなかったので。ドライバーになって仕事としては登録をしながらも、最初は何のために細かくチェックするのかピンと来てなかったんです(笑)。

---現在の勤務されている中継課という部署は、普段どのような業務をしているのでしょう?

簡単に言えば、空港に集まってきた荷物を飛行機に貨物として搭載するまでの仕事です。内勤なので、ドライバーの時のように直接お客様との関わりはないのですが、ANA便に載せるかJAL便に載せるかなど航空各社との交渉や調整をしています。部署には僕を含めて社員が5人いるほかに、協力会社の20人ほどの方々と一緒に仕事をしています。

(那覇空港の貨物地区にある貨物上屋へ島中から集まった荷物。行先ごとに仕分けされていきます)

---サッカーでいえばボランチの役割ですね! 航空便の各社のほかに、社内での調整も重要なのでは?

そうですね。僕たちの中継課は発送を担当していて、到着便は別の課がやっています。例えば、羽田や大阪から那覇を経由して、離島に行く荷物をどの便に載せるか決めるのも中継課の仕事ですが、そういった時は社内での連携が大事になります。なかなか難しいですけれどね(笑)。

---荷物を機体にどうやって積み込んでいるのでしょうか?

羽田や伊丹などに向かう便はコンテナにまとめて積み込むのですが、離島行きの場合は機体が小さいので、手荷物と同じようにカートに入れて直に搬入します。雨が降ると荷物が濡れてしまうこともあるので、大きな飛行機が好きですね(笑)。

---ドライバーから異動になって、慣れるまでに時間がかかりましたか?

一ヶ月はかからなかったかな? 最初は先輩が面倒を見てくれましたが、2~3週間で「一人でやって」となりましたね。

(職場の先輩や同僚と)

---今の部署にしても、ドライバーにしても、たくさんの荷物を正確に扱わなければならないというのは、想像以上に大変なのでは、と感じます。

ドライバーの時も配送先を間違えるといった失敗をしてしまったことがありましたが、中継課になってからも、荷物を取り違えて全然違う空港行きの飛行機に載せてしまったことが……。なんとか追跡して、送り直したのでお客様の手元には無事届けられたんですが、会社に余計な費用負担がかかってしまって、上司に怒られたこともあります。チェックを重ねてもそういうミスが起きてしまったので。ただ、僕自身もそうですが、部署全体も失敗があったからとずるずると引きずることはないですね。

■ マンゴーに台風…… 配送ルートを支える最前線

---部署全体で気持ちの切り替えができているということですね! 沖縄といえばマンゴーの収穫量が日本一ですが、航空便を使うケースが多いと聞いています。

収穫期は、全国から保冷コンテナが沖縄に集まってくるんです。マンゴーは発送から2日で届く航空便で送る場合が多く、最盛期には一日あたりコンテナ20台を使いますから。食べ物は傷んでしまうので気をつかいますね。社には保管用の大きな冷蔵室もできたんですよ。

(白いコンテナが保冷コンテナ。最盛期は日本中からここに集められます)

---特に沖縄は「台風銀座」と呼ばれるくらい悪天候の日があると思います。

天気予報のチェックは常にしていますね。とくに、台風シーズンはよく船便が欠航になるので。悪天候時は、普段は飛行機よりも安価な船で運んでいる野菜や果物、コンビニ向けのパンといった食料品も大量に発送依頼が来るのですが、飛行機には重量制限があるので、航空会社から搬入が難しいと言われることもあります。

---とりわけ離島になると、パンひとつが届かないだけでも生活に関わりますよね。インフラを担っているプレッシャーはありますか?

実際に荷物を飛ばすのは航空会社さんなので、自分たちでどうしようもない部分もあるのですけれど……。それでも、生活物資がないと島の人が困ってしまうので、できる限り積んでもらえるように色々と交渉する仕事もありますね。

---どんな時も送れるだけの最大限の努力をしている、ということですね。食べ物のほかに、特に気をつかう荷物はありますか?

割れ物は難儀ですね。ドレッシングの瓶をダースで送ることもあるのですが、必ず二重梱包にするようにしています。あと、沖縄本島には医薬品の会社があるので扱うことが多いです。とくに宮古や石垣といった離島向けの医薬品輸送の場合、送料が高価な飛行機で運ぶということは、急ぎだったりもするので、優先度は高くなります。そうなると、取り扱いはもちろん、限られたスペースと便のなかで、他の荷物との調整を含めて大変ですね。

■ とにかく沖縄が好き! 青年会の活動で地域に貢献

---普段の勤務のタイムスケジュールを教えてください。

8時からの早番と14時からの遅番があります。早番の場合は6時に起床して、7時に家を出て車で空港まで出社します。夜の間に荷物が集まってきてコンテナやカートに積み込まれているので、搬入する便の確認をしていきます。13時半ごろにお昼休憩を取って、その後も島内から集められた荷物を搬入する便の調整をします。夕方には退社してゆっくりお酒が飲めるので、僕は早番が好きです(笑)。

---普天間さんは、地元の市の青年連合会で会長を務められたことがあるそうですね。

地元の南城市青年連合会(http://nanjoseiren.info/)には今も監事として関わっていて、地域のお祭りやエイサーの取りまとめ、新春マラソンの運営、ビーチクリーンなどの活動をしています。特に大きなイベントになるのが、青年芸能フェスタin南城。毎年1万人以上来場するのですが、この資金集めから会場設営まで各地区の青年会が連携して自分たちでやっています。なかなか忙しいです(笑)。

---1万人が来るというのはかなりの規模ですね! 早番があるので仕事との両立もしやすい?

はい。早番だと会の集まりに参加しやすいですから。それに活動の相談をした後にお酒が飲めますしね(笑)。

---青年会の活動を続けている理由は何ですか?

今、若者の地域離れが進んでいて、エイサーができない地区もあります。でも、やはり地元が発展してほしいですし、いろいろな人に来て楽しんで、活気を感じてもらうためにお祭りをやっています。

---お話を伺っていて、業務では正確性が求められていてビシッとしているけれど、気持ちに余裕を持って日々を送っていらっしゃるような印象を持ちました。ご自身もですが、OAS航空という会社の社風なのかな、と。

そうですね。仕事は細かくて大変だけど、人はみんないいですよね。社内でも歓送迎会やビーチパーティーがあって楽しいです(笑)。ビーチパーティーの日は、集荷配送の大きなトラックを舞台に仕立てて出し物をしたり、全国の交流のある日通支店から届いた特産品を食べたり。スポーツ大会もあって、毎回盛り上がります。役職が上の人にフレンドリーに接しても平気ですし、とにかく人はいいと思います。

■ 垣間見える「なんくるないさー」精神

インタビュー中、飄々と話してくれた普天間さんですが、ボディービルで鍛えられた腕の太さからも、沖縄の貨物を支えている自負を感じることができました。沖縄の方言で「なんくるないさー」という言葉がありますが、日々の天候や業務に向かう上で、「なんとかなるさ」の精神を持つことが一番大切なのかもしれません。

(文・ふじいりょう)

★ 今回のインタビュー記事は、いかがでしたか?
航空貨物には、他にも様々なものがあります。

20t級のフォークリフトを操る4歳児のママ。航空貨物を支えるグラハン女子の「道しるべ」になりたい/ANA成田エアポートサービス株式会社 鈴木さんインタビュー
https://note.mu/koku_aruaru/n/ne1c883d0a2a5

「えいや!と飛び込んだからこそ今がある」 ANA沖縄空港貨物サービス部 玉城さんインタビュー
https://note.mu/koku_aruaru/n/n7d41c3b6ed17

航空貨物のお仕事に関心を持たれた方に、こちらの記事もオススメです!
【航空貨物ってどんな仕事?】:
https://note.mu/koku_aruaru/n/n4edc26095f84

空港を支えるプロ裏方の情報が盛りだくさんのサイト「空港の裏方お仕事図鑑」では、他にもたくさんのインタビューを掲載しています。ぜひご覧ください!
空港の裏方お仕事図鑑 URL: http://hataraku.jfaiu.gr.jp/

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