中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/04/23-2021/04/29_17w
こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、前職は、ソフトバンクの投資部門でベンチャー投資をしていました。
今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。
・各週の資金調達案件まとめ
- 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家
では、早速本題に入りたいと思います。
1. 日別 資金調達件数・金額
2021年の第17週目である4月23日〜4月29日における、日別の資金調達状況を見ていきます。
[資金調達件数]
4月23日〜4月29日の週は、合計106件となりました。
なお、1月1日からの資金調達件数の累計は1,736件となりました。
[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、あくまで参考としてのデータですが、4月23日〜4月29日の週では、公開金額合計で75.4億元(約1,272.9億円)の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は2,611.3億元(約4.41兆円)となりました。なお、今週の106件のうち74件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。
2. 業界別 資金調達件数・金額
では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。
[業界別 資金調達件数]
今週の106件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、医療・健康および先進製造の資金調達件数が最も多く、それぞれ合計21件となりました。次いで、法人向けサービス、Eコマースが上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち64.2%を占める結果になりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、ローカルライフサービスだけで、全体の57.9%を占めています。
[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、今週は医療・健康、先進製造、Eコマース、自動車・交通の順に多く、上位4業界で全体の72.9%を占めています。
また、1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、医療・健康、Eコマース、物流、自動車・交通の順に多く、上位4業界だけで全体の59.9%を占めています。
3. 都市別 資金調達件数・金額
続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。
[都市別 資金調達件数]
今週の106件を都市別に見ると、上海・北京、深圳、杭州の順にランクインし、上位4都市だけで全体の69.8%を占める結果となりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで66.8%を占めています。
また、先週に引き続き、上位10都市のみで累計投資件数の約84%を占めていることから、投資は一部の都市に集中していることがわかります。
[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、今週は北京、深圳、上海、福建の順にランクインしました。
なお、福建が4位にランクインした理由は、以下2社(青瓷数码、宜买车)によるもので、それぞれ簡単にご紹介します。
1社目は、青瓷数码(QingCi Digital)という厦門(アモイ)を拠点にするゲーム会社です。
今回、同社の既存株主である吉比特(G-bits Network Technology)は保有する株式(発行済総数の10.11%)をテンセント、アリババ、ビリビリに譲渡した模様です。久しぶりにテンセント・アリババの共同出資の案件を見た気がします。
なお、2019年に同社が増資した際のポストバリュエーションは6.34億元と報道されていましたが、今回の譲渡価額が3.03億元(ポストバリュエーションは約30億元)と報じられていることから、短期間で評価額が約4.7倍になっています。ちなみに、この成長を支えたのは上記画像の「最强蜗牛(The Marvelous Snail)」というゲームで、このコンテンツのおかげで同社の2020年度の売上は9.58億元、純利益は1.12億元に達したようです。また、同社は以前、香港証券取引所へIPOするための人材を募集していたと報じられており、今回の株主変更はその準備が進んでいるあらわれでは?とネットで話題になっています。
2社目は、厦門(アモイ)を拠点に新車販売プラットフォームを運営する宜买车(YiAuto)という会社です。
同社は3級都市などを中心に、新車の販売を行っています。現在、直営店舗は50店舗以上、提携する4Sショップ(Sales, Spare parts, Service, Surveyを行う代理店)は23,000店舗以上に及ぶようです。
同社の特徴としては、ビッグデータを活用し、自動車の価格予測や調達、パイプライン管理などを行なっていることが挙げられます。また、主な販売モデルは、ブローカーから得た潜在顧客の情報をもとに、最適な営業担当を割り当て、オンラインでアプローチし、確度の高い潜在顧客を店舗に招待し、契約・販売を行うというものです。このことから、店舗は契約締結と納車のみに使用するため、店舗の規模を小さくすることができ、維持コストを低く抑えられるようです。
また、同社は昨年から拼多多(Pinduoduo)と提携し、オンラインでの新車販売チャネルの構築を模索しています。宜买车(YiAuto)は拼多多(Pinduoduo)に旗艦店を出店し、オフラインでの配送サービスまでを請け負うことで、販売チャネルの拡大・中間ディーラーのコスト削減を狙っています。なお、出店後の3ヶ月で5,000台以上の新車を販売したとのことです。
話を戻して、1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、北京、上海、深圳、長沙に集中していることがわかります。次いで、先週に引き続き5位以降は蘇州、広州、杭州が競り合っています。
4. ラウンド別 資金調達件数・金額
ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。
[ラウンド別 資金調達件数]
今週の106件では、シリーズAが37件で1位、戦略投資が27件で2位になりました。これら上位2つのラウンドだけで全体の60.4%を占めています。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、先週に引き続き、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多いです。シード/エンジェルラウンドの比率は日に日に上昇しており、総じてアーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。
[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、シリーズBが最も多い22.0億元となり、全体の29.1%を占めています。
次いで、シリーズAが21.9億元で2位となり、全体の29.1%を占め、上位2つのラウンドで全体の58.2%を占める結果となりました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、戦略投資、シリーズD、シリーズAの順に多く、上位3ラウンドでの合計は全体の59.0%を占めています。
5. 今週、新たにユニコーンになった企業
今週は1社が新たにユニコーン企業となり、中国のユニコーン企業数は2021年4月29日時点で288社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります
[企業紹介]
企業名:Aibee
業界:法人向けサービス
拠点:北京
設立時期:2017年11月
バリュエーション:12.0億米ドル/78.0億元
主要な投資家:华润润湘联和基金, 润诚产业领航基金, 红杉资本中国, 金沙江创投, 锴明投资ClearVue, VMS Legend Investment, 芯动能投资, 真格基金, 华创资本, 联想创投
企業HP:http://aibee.co/
同社は元百度研究院院長、NEC北米研究所メディア分析部門の責任者を歴任した林元庆氏によって設立されたAI企業です。オフライン空間のデジタル化とインテリジェンスに焦点を当てたリーディング企業で、各業界におけるペインポイントを出発点に、マシンビジョン・音声認識・自然言語処理・ビッグデータ解析などを通して、総合的なソリューションを提供することを目指しています。
現在は主に不動産関連に注力しているようで、国内の商業不動産ブランドT0P30のうち、15ブランドがAibeeと提携しており、同社は商業不動産におけるデジタル化/スマート化の市場でNo.1となっています。
6. 今週、資金調達を行った企業リスト
2021年4月23日〜4月29日に資金調達を行った企業は以下の通りです。
7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家
2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています
テンセントは今週4件の投資を行い、先週に引き続き1位にランクインしました。今週は、ゲーミングに2件、Eコマースと金融にそれぞれ1件の投資がありました。
また、セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は2件となっており、法人向けサービスとブロックチェーンにそれぞれ1件の投資をしています。
なお、上記のユニコーン企業であるAibeeの最新ラウンドには出資していないですが、セコイアチャイナは同社のエンジェルラウンドから出資しています。
以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。
今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。
お問い合わせは以下にて受け付けております。
竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01
注:
・本noteは速報の位置付けとしています
・事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、特定企業の分析や各社の投資傾向に関する情報が薄くなることはご了承ください
・本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
・投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください
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